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今はお金が欲しいんですよ

 ザルツはゼーの街より、小さくはあるが立派な城壁で囲われた街だった。白を基調とした西洋風の街並みが広がっている。エーゲ海の街並を連想させた。そして街の背後には、見渡す限りの塩湖が広がっていた。日没直前に到着したので、徐々に闇に染まる塩湖が幻想的であった。


 城門を超えたところでお客さんを降ろしてから、ネーロが贔屓にしている奴隷商店に直行する。取引は明日にして、奴隷を預けているようだ。俺はネーロとエバさんと一緒に、これまたネーロが贔屓にしている宿屋に向かった。


 エバさんは警護のためにネーロと一緒に宿に泊まった。俺は相変わらず馬車の中で寝かされた。俺はこっそり宿屋を抜け出して、冒険者ギルドへと走った。ちなみに、冒険者ギルドは24時間営業だ。


「ゼーの冒険者ギルドから緊急の届けモノです。サインをお願いします。」

「緊急の荷物ですね。確かに預かりました。明日の午後にはこちらからの荷物も用意できます。帰りも宜しくお願いしますね。」

 

 俺は、ゴブリンの耳を提出しなかった。明日の午後にギルドに来る口実を作るためである。ふふふ。俺に抜かりは無いのだ。俺はこっそりと宿屋に戻り、鳥肉の干物を齧りながら眠った。


 翌日は、朝からネーロの護衛と輸送で大忙しだった。奴隷商に行くとタチの悪そうな男や、裏の顔を出している商人たちばかりだ。居心地悪い。俺はとにかく感情を押し殺して、睨みを利かせている振りをしている。ついでにネーロへの殺意も向けて置く。


 午後は塩屋さんへと向かった。ゼルツの塩は領主が主体になって、一手に管理されていた。街の中央にある、塩の販売だけのお店に出向いた。そこでネーロは大量の塩を買っていた。塩一つにしても色んな種類があった。粒の小さい塩湖から出来た物。少し掘ったところから出た、大きな岩塩。さらに不思議な事に、広大な塩湖には地域ごとに多少味が違うらしい。おもしろい。


 馬車いっぱいの塩を買ったネーロに、エバさんは質問していた。


「今日は馬車いっぱいに塩を買われましたが、何かあるんでしょうか?」

「あぁ。いい質問ですね。今年は冬が長くて厳しかったじゃないですか。情報によると“神の腕”には大量の雪が降ったそうです。それがこの春一気に溶けだすと、川の水位が上がるでしょう?すると、北の“ロウディー大河”があふれる可能性があるんですよ。もし溢れたら、ザルツに来れなくなりますよね?すると塩の供給が止まります。お塩が高く売れるようになるんですよ。もし溢れなくても、塩は腐りませんから、損にもならない。」


 ネーロはさすがであった。ただの極悪商人では無く、きちんと未来を予想しながら損にならない方法で備えている。チッ。


「そういえば、ゴブリンの討伐しましたよね。テル、お金貰ってきてください。ついでに休憩にしましょう。各自買い物があったら済ますように。日没までには宿に帰る様こと。食事も済ませなさい。食費に銅貨10枚(1000円)渡します。お釣りは返して下さいね。明日は朝一で街を出ます。他の方は乗せません。分かりましたか?では解散。」


 そういうとネーロは繁華街へと消えて行った。エバさんも気付いたら消えていた。


 俺は予定通りギルドへと向かうと、受付のお姉さんから、返信用の荷物を受け取った。そしてゴブリンの耳を三つ提出した。


「街の近くで出たんですか?最近増えてきている気がするんですよね。冬が厳しかったからかしら?それでは報酬の銀貨1枚と銅貨50枚です。」

「確かに受け取りました。俺も買い物がしたいので、銀貨1枚出してくれませんか?」

「それは可能ですが、大きなお店でしたらギルドのプレートで支払えますよ?」

「ほんとうですか!?ギルド証って便利なんですね!ちなみに厚手の座布団なんですが、ギルドで売ってますか?」

「ございますよ。冒険に使う品なら大抵揃ってます。厚手のもので、銅貨30枚になります。」

「ではこのギルド証で。」


 俺は念願の座布団を手に入れた。これで俺のお尻は守られたも同然だ。そしてやっぱりモンスターが活発なようだ。


 ギルドの食事処で夕食を食べる事にしたが、塩味だけの野菜炒めと塩辛いスープだった。素材の味なんて消え去っていた。やっぱりこの世界は料理が不味い。この味で銅貨10枚もするなんて・・・。


 宿屋に帰ると、塩の番人としてまた馬車で寝かされ。しかもステップに座ってである。寝たのに、逆に疲れてしまった。


 翌日は日の出とともに、ゼーに向けて旅立った。同中、ゴブリンに二回遭遇して、合計8体を倒した。スキルがあると楽勝である。そして、座布団のおかげで俺の旅路は快適だったのだ。座布団は偉大だね。他は特に何もなく、安全にゼーの街に着いた。


 ゼーの街に入ると、帰ってきた感じがした。ほんの数日泊まっただけなのになぁ。俺はネーロの屋敷で、馬車の塩を蔵の中に運び込んだ。時間はとっくに深夜である。


 前世では深夜でも起きれたのに、この世界に来てから太陽を基準に動くようになっていた。健全だね。


 俺は眠いのをこらえて、冒険者ギルドに出向いた。クレーさんは俺が来るのが分かっていたのか、夜勤を代わってもらったそうだ。


「確かに返信の荷物を頂きました。これで依頼達成です。報酬の銀貨50枚はギルド証に入れておきますね。」

「それとゴブリン8匹を倒したので、討伐金下さい。」

「8匹ですか。多いですね。しかも直球でお金を要求するなんて。本当に面白い方ですね。」

「そうですかね。今はお金が欲しいんですよ。」


(と言っても、ゴブリンのお金はネーロが全部持って行くんですけどね。チッ。)


 俺はお金を受け取ってから、屋敷へと戻った。久々のベットは夢心地だった。


■ステータス

テル キサラギ 人族 男 18歳 レベル4→5

体力:50→60  魔力:20→25  筋力:32→35

速度:25→30  耐性:18→20  魔耐:12→15

スキル:【オール・フォー・ソード】【採取1】【伐採1】【スラッシュ1】【二段突き1】


ゼーの街に戻りましたね。

もう少ししたら、テル君の反逆が始まります。

何話後になることやら。(´ω`)

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