表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
139/214

まさか、部屋が広がっただけじゃないよな?

第20、21室の話。

ちょと短いです。


「なんか、こういう敵を倒すだけってのが、分かり易くて良いね。」


俺達は第20室で戦闘を繰り広げている。


部屋の中を駆け回る俺の視界の左橋では、グラスが【火魔法】や【土魔法】を使って強化したり付与した体術で敵を蹴り飛ばしている。


ウラガは【大盾】を使って敵の攻撃を防ぎながら、そのまま体当たりして【バッシュ】で弾き飛ばしている。


クルスは魔獣が集まっている場所目掛けて、【風魔法】や【火魔法】といった攻撃力の高い魔法を連発している。


俺はと言うと、“水の一振り”に魔力を込めて攻撃力を上げた状態で、【ステップ3】を使って敵を切り裂いて行く。久しぶりに【隠形おんぎょう】を使って、敵から姿を隠し、背後から【スラッシュ3】を使って、確実に仕留めて行く。


あまり【隠形】をやり過ぎるとクルスの魔法の巻き添えになるから、その辺は注意している。


そして魔獣の方も、これまでとは一味違った。各種魔法を使用してきたのだ。


巨大イカのクラーケンは【水魔法】の水弾丸を。頭が三つあるケルベロスは【火魔法】の火炎を。人と鳥の中間の様なハーピーは【風魔法】でカマイタチを。メデューサは【生活魔法】の腐敗の煙を。牛の巨人であるケンタウロスは、【生活魔法】の身体強化を使ってくる。


「ははw魔法のオンパレードだな!」


ウラガはそう言いながら笑っている。色とりどりの魔法光が一瞬輝いて、炎や水、紫の煙が部屋のあちこちで発生している。まるでお祭の花火のようだ。


これまでの鬱憤を吐き出すように、俺達は戦い続けた。途中からは、妙なテンションになってしまって、あまり覚えていない。


そんな楽しい時間は、一時間もしない内に終わってしまう。500m四方の部屋にいた大量の魔獣を全て倒しきったのだ。奥の扉の鍵がガチャリと解除される。


「ふー。疲れた。」

「俺もちょっと疲れたぜ。」

「疲れましたけど、なんだかスッキリしましたね!」

「私はー魔力切れー。」


クルス以外は、清々しい顔をしている。クルスは派手に魔法を使い続けたせいで、魔力がかなり減ったようで、地面に座り込んでいる。魔力不足で、気分が悪くなっているようだ。


グロッキーなクルスを、グラスが支えながら俺達はとりあえず、部屋をクリアする事にした。安全地帯の大階段で休もうという訳だ。


俺達全員が大階段へと出てくると、大階段の方から、パリン!というガラスが割れるような、甲高い音が聞こえてくる。


俺達は大階段の上の方を見上げると、それまでクリアした部屋の数をカウントしていた文字が20/20となり、青色に輝いていた。その隣には、森の剣のパーティーがクリアした数、11/20が薄い黄色で書かれていた。


「どうする?とりあえず休むか?」

「そうだな。階段を上がった瞬間に戦闘ってのは無いと思うが、ダンジョンだからな。万が一も有り得る。」


俺達は話合いの結果、昼食を取りながら休む事にした。一階をクリアしたお祝いとして、ちょっと奮発してステーキだ。久しぶりに動いたのでお腹も空いたから、良い機会だろう。ちなみにお肉は、外で狩ったミノタウロスだ。まだまだある。


ステーキとスープ、そしてサラダという豪勢な昼食を食べていると、森の剣さんが第12部屋をクリアしたようで、大階段前へとやってきた。


「おぉ!もう20部屋クリアしたのか!見かけによらず、やるなぁ。」

「ありがとうございます。」


クリスタルのギルドランクである森の剣から見れば、俺達はひよっこに見えたのだろう。リーダーの良い方や声色から、俺達のダンジョン攻略は必死だった、と考えていたのかも知れない。


ちょっとめられている気がするが、ここで波風を立てるべきではない。俺は無難に感謝の言葉を返した。


その後も、俺達の食事が豪勢な事とか、第20室までの新たな情報だとか、色々聞かれた。俺は特に嫌な顔もせず、それに答える。


本当はタダで情報を渡すなんて、勿体なくてするべきではない。ダンジョンとは生死を分けるのだ。情報は金よりも価値がある。


だがそれでも何もお返しを期待しない。既に貸し一つなのだ。この世界でそんな約束を律儀に守るかは分からないが、それでも恩を売るのは後々役に立つだろう。特に今欲しい物は無いしね。


そんな昼食を過ごした俺達は、いよいよ大階段を上って行く。木製の手すりが両側についていて、幅は5mはある。そこに赤い絨毯が敷かれている。なんだか、映画俳優になって、レッドカーペットを歩いている様な気分になる。


大階段に張られていた謎バリアを、俺達はすんなりと通り過ぎる事ができた。通り過ぎる時、トプン♪という音が出るかのような、膜の様なものを感じたが、あれがバリアなのだろう。不思議な感覚だった。


ちなみに、どうやってパーティーを見分けているのかは、未だに分からない。「ダンジョンだから」と言われれば、納得してしまう世界なのだ。俺も深く考えるのは止めようかなぁ。


「で、二階に来たんだけれども。変わんなくない?」

「一階と同じだな。」


大階段を登って二階にやってくる途中、目の前が壁になり、階段が左右に分かれていたので、俺達も左右に分かれて2階にやってきた。まぁ、直ぐに合流することになるったのだが。


そして二階は一階とほぼ同じ作りになっていた。唯一違うのは、三階へと上がる大階段の裏に一階への階段がある事。玄関に当たる扉の代わりに、バルコニーへの扉があった事くらいだ。


「ふー。久々の外だな!」

「あ!馬子―!」


俺達は二階を探索するためにバルコニーに出てきた。右下の方には馬屋に繋がれた馬子の姿があった。ちゃんと食事を控えているようで、まだまだ残っている。グラスの声に気付いたようで、顔を上げて、ブフフン♪と応えている。カワイイ。


隣の馬屋には真っ黒な馬?サイ?のような、ズングリとした体形の生き物が繋がれていた。魔族の国での馬の様な生き物だろう。サイの目の前にも大量の食糧が置かれていた。サイも旅に慣れているのか、食べる量を控えている。さすがはクリスタル冒険者の相棒だ。


まぁ可愛さなら馬子の方が断然勝ってるけどな!


俺達はそのままダンジョンの外に出られるかもと思って、バルコニーの手すりから手を出そうとして見るが、また謎バリアに阻まれる。そう優しくは無いようだ。


バルコニーを後にした俺達は二階を一回り見てみる。部屋番号は21から40までとなっていた。そして三階へと上がる階段のバリアには、20/40という数字が薄い黄色で描かれている。


「とっとと進むぞ!」


俺達は21室の扉を勢いよく開け放つ。グズグズしている暇は無いのだ。


「??第1室と一緒??」


そこには第1室と同様で、大量の本が本棚に納められていた。


俺はおもむろにその一冊を手にとって、パラパラとめくっていくと、中から鍵が出てきた。


本当に第1室と同じ内容だ。そこで俺はもしやと思い、【地形把握】を発動させる。


いままでは500m四方の空間だった部屋が、今では横500m、縦1kmへとなっていた。単純に面積が二倍になったようだ。


「まさか、部屋が広がっただけじゃないよな?」


俺達はとりあえず、部屋の中を探索し始める。すると、第1室にはいなかった本に擬態した魔獣がいた。


そいつは俺達に噛みついてきたり、【風魔法】で自分の紙を切り飛ばして、俺達へと攻撃してくる。【生活魔法】による強化をしているようで、普通の紙とは異なり、鉄の様な強度で切れ味も抜群だ。


だがそれだけだ。ウラガの【大盾】で簡単に防げるし、俺の“水の一振り”で簡単に切れる。


とりあえず俺達は部屋から出て、部屋の外からクルスに【火魔法】を使って貰った。すると、中の本の魔獣共々、勢いよく燃え上がった。しばらくして鎮火した第21室には、大量の鍵が残るだけとなっていた。


本当に部屋が広くなって、ちょっと敵が強くなっただけかもしれない。拍子抜け感が俺達のやる気をごっそりと削っていくのを感じる。それでも、熱で変形していない、この部屋をクリアするための鍵探しに精を出すのだった。


やっと2階へ!

期待を裏切り、ただ部屋が広くなっただけ。

もうアイデアが無いのです。今までのダンジョンは、一つのテーマで連続して難しくなりましたが、このダンジョンでは階を上がる事で難しくなると思って下さい。そのために、一階では同じ部屋が一つも無いようにしました。

テル君も拍子抜けの様ですね。無くしたやる気を取り戻すのは、結構難しいものです。

次回は22室以降の話の予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ