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最後は、冒険者のお仕事ってか。

第19、20室のお話。

ちょっと短め。


「おぉ!!!マーメイドだよ!マーメイド!」


海のような第19室には、マーメイドがいたのだ。グラマラスな女性の上半身に、魚の下半身。残念ながら、胸の所は、ブラの形で魚のうろこで覆われていた。だが、金色の濡れた長髪が、とても艶めかしい。


俺達の目の前を跳ねたマーメイドは、そのまま少し先の岩場まで泳いで行く。そして岩場によじ登ると、こちらを振り向いた。


距離にして100mくらいしか無いので、よく見える。


マーメイドはニコッと笑った後、ラーラー♪と美しい歌声で歌い始めた。とても心地よい。


「!何か来ます!」


グラスの【危険予知】が反応して、皆に警戒を促した。グラスのその声にウラガが動く。


ウラガは俺達の前を守る様に移動し、【大盾】を発動させる。ウラガの【大盾】が展開された数秒後、周りの水が不自然にうなり、小さな津波となって俺達を襲ってきた。


だが桟橋も含めて【大盾】で守られているので、足元を波にさらわれずに済んだ。


俺はマーメイドの様子をよく見ようと、【鷹の目】を使う。すると、マーメイドが水に付けた尻尾の先から、魔法光が海に溶けているのが分かった。決して安全だからとエロに走った訳ではない。


「【水魔法】か。厄介だな。」


ここは水が大量にある。環境にも左右される魔法において、この海は【水魔法】と相性が良すぎる。


「だが、【水魔法】は俺も得意だ!」


俺は海の水を使って、大きな水の剣を生成する。刃の部分だけでも80cmはある。その数4本。俺はそのまま4本の剣をマーメイドへと突き刺すために投げ飛ばす。もちろん【遠隔操作】によって、剣の形を維持している。


だがマーメイドは俺の攻撃を寸前で回避して、海へと逃げた。しかし腕にかすったようで、赤い血が海に漂っている。


さすがはマーメイドと言ったところか。その後、俺が何度か【水魔法】の剣を飛ばしても、海中をもの凄い速さで泳いで逃げてしまう。


「ちょこまかと!」


本当なら、水全体を浮かして逃げられない様にしたいところだが、残念ながら俺には出来ない。【オール・フォー・ソード】のせいで、魔法に制限があるからだ。


「ユキ!頼め「ちょっと待った―。」」


俺がユキに、海を凍らせるよう頼もうとした時、それまで後ろで見ていたクルスがさえぎる。


「ふっふっふー。私の出番―。」


クルスは何か秘策があるように、怪しい笑顔を浮かべている。魔族の風貌のクルスが、怪しく微笑む姿は、かなり、さまになっていた。正直怖い。


「ちょっとー水からー離れてて―。」


というクルスの言葉を受けて、それまでウラガの背中に張り付いていた、スライムのシズクが、俺達の足元に合った水を、魔法を使って排除してくれる。


「うん。痺れろ!サンダー」


クルスから黄色い魔法光が発せられたかと思った瞬間、クルスの手の先から雷がほとばしる。


バチバチという音と、空気がオゾンに変化する特有の臭い、そして眩しい光が辺りを包んだ。そしてそのまま雷は、マーメイドが泳いでいる辺りへと落ちた。


「キャアアアア!」


という女性の叫び声と共に、海の中にいたマーメイドは感電した。海へと落ちた雷は、そのまま周りへと伝搬していき、俺達の周りもかなりの電気が走った。だがシズクが水を排除していたので、俺達が感電する事は無かった。


マーメイドはピクピクと痙攣しながら、海面へと浮かんでくる。マーメイドだけでなく、近くを泳いでいた魚も一緒に浮かんできた。


「とどめー。切り刻め。風刀」


とクルスが気の抜けるような声を上げると、身体から薄緑色の魔法光と共に、見えない風の刃が発生する。ビュンという風を切る音と共に、マーメイドの身体は真っ二つに切り裂かれた。


俺達は一連の流れを、ただ茫然と見つめるしか出来なかった。いきなり雷が発生するとは思っていなかったのだ。いち早く、事態を把握した俺は、クルスへと振り返り、話を聞く。


「凄いなクルス!雷魔法なんて初めて見たよ!」

「えっへんー。」


クルスはもの凄いドヤ顔をしている。いや、普通に自慢できる事なのでドヤ顔をするのは当然なのだが。なんだか気が抜けてしまう。


「俺にも教えてくれよ!複合魔法なんだろ。」

「そうー。上級魔法―。でも難しいよー?」


クルスの話だと、【水魔法】と【風魔法】を共にレベル3にしなければダメらしい。もしくは【水魔法】の代わりに【氷魔法】のレベル1でも良いそうだ。


【雷魔法】。自然現象を強引に作り出しているのだと一人で納得する。


雷とは、雲の中にある小さな氷同士の衝突により、極少量の電気が発生する。それが溜まりに溜まって放出されるのが雷なのだ。だから夏場の入道雲のように、大きな雲の塊の下では雷が発生する。


この事を考えれば、【水魔法】の水と【風魔法】による粒の衝突から、【雷魔法】ができるのは当然かもしれない。【魔法】なのに、なんだか現実的だ。俺としては理屈があるのは理解し易いので助かるんだけどね。


「と言う事は、クルスはかなりの【魔法】を使えるんだな。」

「ふふふーーん。」


またドヤ顔だ。だがスキルとして【魔法】を覚えるのは、結構難しい。これまでの事から、クルスは【火魔法】【水魔法】【風魔法】【雷魔法】を使いこなしている。並の人間には不可能だ。


何か固有能力があるな。


俺はそう断言するが、何も言わない。俺だって【オール・フォー・ソード】を隠しているし、転生者だとかいろんな秘密を持っている。


クルスが秘密にしているかは知らないが、話を振ると俺も話さなければならなくなる。それはもう少し仲良くなってからでも良いだろう。


一通り話が終わった俺達は、小舟にそれぞれ分かれて乗り込み、漁を開始した。チーム訳は、俺とクルス。ウラガとグラスだ。じゃんけんで分かれたのだが、なんだか作為的な気もする。


とりあえず、マーメイドの周りに浮いている魚を船に積み込む。マーメイドはそのうちダンジョンに吸収されるので、クリア条件の魚には含まれないから、そのまま放置だ。魔法結晶も取り出しにくいので諦めた。


その後も何度かマーメイドに襲われる。どのマーメイドも【水魔法】を使っての遠距離攻撃を仕掛けてきた。水の弾丸を飛ばしたり、うずを発生させたり、水の柱で押しつぶそうとしたり。だがどれもウラガに防がれ、俺達の方もユキやクルスの【水魔法】で対応出来た。


最初は驚いたが、マーメイドの使う【水魔法】は威力が弱い。おそらく【生活魔法】の一部として、【水魔法】の真似ごとをしているのだろう。本家本元の【水魔法】にかなうはずが無い。


さらに、クルスの【雷魔法】での反撃は効果抜群だった。海なので逃げ切れるはずも無く、確実にマーメイドは感電する。そして感電したマーメイド、は俺の【水魔法】の剣や、クルスがジャンプして近づき、切り裂いて止めを刺すのだ。


ついでに魚も感電するので、わざわざ竿を海に垂らす必要がない。網でじゃんじゃんすくいあげる。かなり楽だ。あっっと言う間に船の中の魚入れは一杯になった。


だがそれだと風情が無いので、一応俺は竿を海に垂らす。奥の扉に辿り着くまで頑張ったが、結局小さな魚を一匹釣りあげただけだった。


そりゃあれだけ、バチバチと雷が落ちるのだ。普通の魚は逃げる。俺が下手な訳じゃない。きっとそうに違いない。俺は一人ブツブツ言いながら、自分を正当化するのに必死になる。


あれこれあったが、クルスの活躍もあって、あっさりと19室をクリアした俺達は、大階段へと戻ってきた。


森の剣のメンバーさん達は、攻略中のようで、階段前には誰もいなかった。俺達は【生活魔法】のリフレッシュをウラガにかけて貰った後、お茶にした。


結構水しぶきを浴びていたので、髪や服がベトベトだったのだ。しかも慣れない船だったので、結構疲れた。


昼にはまだ時間があったので、俺達は第20室へと挑む事にした。ダンジョン一階の最後の部屋だ。少し緊張しながらも、俺は20室の木の扉を開け放つ。


そこには中央に、半径100mはありそうな巨大な泉があり、その泉を囲うように草原が広がっていた。草原には、所々に巨大な岩が転がっている。


そして特徴的な事がもう一つ。そこには、大量の魔獣が存在していたのだ。


今見えるだけでも、メデューサっぽい奴や、一つ目のサイクロプス。ミノタウロスにマーメイド。他には、顔が三つのケルベロス、巨大イカのクラーケン、鳥の身体の女性であるハーピーまで居る。


「最後は、冒険者のお仕事ってか。」


お仕事シリーズの最後を飾るのは、冒険者の仕事。採集や護衛など、色々ある冒険者の仕事でも、選ばれた課題は魔獣狩りだ。


俺達は武器を手にして、一階最後の部屋、第20室へと突入するのだった。


雷!魔法の定番ですね。

ですがこの世界では難しいランクの魔法に入れました。あまりに便利で攻撃力が高い魔法なので、あまり序盤から使って欲しく無かったからです。

クルスはそんな中でも例外的に使えています。いずれ他の人も使うんだろうなぁ。

テル君は、いまいち仕事がありませんでしたね。クルスに魔法職の仕事を取られかねませんね。

次回は、第20室以降の話の予定。

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