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次は漁師の仕事を経験しろってか。

第17,18,19室の話です。



俺達が大階段に戻ってきた時、森の剣のメンバーも部屋をクリアしたみたいで、大階段前で一息していた。


「このダンジョンは、本当に変だなw」


そう話しかけられて、俺達は軽くお喋りをした。俺達が16室をクリアする間に、第1、2室をクリアしたそうだ。俺達の情報が役立っているらしい。


大階段の謎バリアには、確かに2/20という数字が浮かび上がっていた。俺達は16/20だ。


そしてまた俺達はそれぞれの部屋に挑戦する。扉の前に立ち、気を引き締め直して木造の扉を開く。


第17室では、畑仕事が待っていた。つまり今回のシリーズは仕事だ。


500m四方の部屋の正面には、たくさんの葉っぱを付けた野菜が植わっている。そして右奥の方には、たくさんの果樹が植えられている。土の臭いと、果樹の甘い臭いがなんとも心地よい。


17室にはジャガイモから人参、豆類から果樹まで。それを全部収穫して、畑には用意されていた枯れ草を入れて耕した後、種を植える。そして全体に水を撒いて終わりだ。


ちなみにこの野菜や果物も、部屋から持ち出した瞬間に消えてなくなる。そしてなぜか天井から降ってくるのだ。不思議すぎる。


持ち出すのがダメなら、ここで調理しようという事になったのだが、これもダメだった。包丁を入れた瞬間に、部屋全体にブザーが鳴り、俺達は大階段へと戻される。包丁がダメなら丸ごと食べようとしたが、口に入れた瞬間にブザーが鳴った。


「ケチ。」


食に対して意識の高いグラスが一番悔しそうにしていた。目の前に大量の食材があるのに、一切食べられない。


そのあまりの悔しそうな顔に、俺は少しグラスが可哀そうに、特別に“魔法の袋”に入れてあった林檎を剥いてあげた。もの凄く嬉しそうな顔で、シャリシャリと食べていた。


魔獣は、先程と同様に小型のサイクロプスだった。数は増えたが、弱いのでどうってことはない。ただ、早く倒さないと、果樹や野菜を傷つけるので、時間との勝負だった。


一通りの実験と、クリアするための作業で、結局3時間かかってようやく終了だ。500m四方と言う比較的狭い部屋なので、こんな短時間で済んだのだ。畑仕事は意外と時間がかかるし、かなり疲れる。レベルアップによって身体能力が上がっているおかげだ。


第17室をクリアした俺達は、少し遅れたが昼食をとる。サンドイッチとスープの簡単なものだ。


昼食中に、森の剣のメンバーには遭遇しなかった。大階段のバリアには3/20と書かれていたので、第4室を攻略中なのだろう。


昼食を終えた俺達は、午後のダンジョン攻略へと挑む。次は第18室だ。


第18室の扉を開けると、部屋の中央に巨大なキッチンが4つ置かれていた。そして右の壁際には大量の野菜と肉。左の壁には、大きな文字でレシピ集が張られていた。


俺達が部屋に入り込むと同時に、どこからともなく小型のサイクロプスが溢れ出てくる。


「とりあえず、食材を守るぞ!」

「「「おー!」」」


この施設を見る限り、今回の課題は料理だろう。仕事シリーズの事からも、コックさんをイメージしているのかも知れない。


ウラガは食材を守り、他の三人はサイクロプスを倒していく。小型で弱いので、別段魔法を使うまでも無いの。俺は久しぶりに【ステップ】を使い、走りながら大量の敵を切り飛ばしていった。グラスもまた【ステップ】を使いながら、体術を利用して敵の頭を吹き飛ばしている。クルスは、【風魔法】を使って、食材に近付く敵をメインに倒していく。


あっという間にサイクロプスの群れは退治されて、俺達はその死体から魔法結晶を取り出す。魔獣は時間が経てば、ダンジョンに吸収されるので、このまま放置だ。


「なになに?鳥のソテーと?ジャガイモサラダと?シチューと?お!炊き込みご飯がある!!」


部屋の左側に掲げられたレシピは30種類。およそ一カ月分の夕食のメインを作らせる気らしい。獣人国の食事街道で色々な料理を見てきたので、この世界の大体の料理は理解している。前世で作った事のある料理に似ている料理がほとんどだ。そうそう世界が変わっても、味付けが変わるだけで手順は変わらない。


「ところで、これは俺が全部やるのか?」

(((コクコク)))


ウラガ達三人は、料理が出来ない。クルスも出来ないらしい。なので四人いるのに、料理をするのは俺だけになる。


だが、出来なくてもやってもらう。あわよくば、これを機会に料理担当を増やしたい。三人とも、もの凄く嫌そうな顔をしていて、どうにか逃げられないかと考えているようだ。


そこで俺は、ダンジョンで見つけた宝の中に、調理技術が上昇するナイフがあったのを思い出し、“魔法の袋”から取り出す。


それを三人に見せびらかすように示すと、観念した様だ。そして壮絶なジャンケンの結果、クルスが料理の補助役に抜擢された。


「大丈夫だって。レシピはあるし、俺も教えるから。」

「うー。ご飯は食べる専門なのにー。」

「はいはい。」


難を逃れたと安堵していたウラガとグラスだが、彼らにも仕事はある。野菜を取って来てもらって、洗う係だ。幸い、食には詳しいグラスがいるので、間違った野菜を選んでくる事は無いだろう。


たしか前世では、キャベツとレタスの違いが分からないとか、キノコの種類が分からない人がいると、バラエティー番組でやってたなぁ。大丈夫だよね?


そんな俺の不安をよそに、グラスは正解の野菜を選んでくれた。それをウラガが壁から出てくる湧水で汚れを落として、俺達へと配達する。


俺とクルスはレシピを参考に、調理をしていく。クルスは食材を切る係だ。俺は食材を切るのを含め、加熱から味付けまでを担当する。


「このイチョウ切りって何ー?」

「輪切りって、厚さはー?」

「肉の繊維ってどれー?」

「玉ねぎって、どこまで剥くのー?」


等々、クルスからの質問に丁寧に答えながら、俺は料理を仕上げて行く。クルスは覚えが良いのか。一度教えると二度目は聞いてこない。さらに、調理技術上昇の付与されたナイフの効果かもしれないが、なかなか様になっている。


皆の手助けもあって、30種類あった料理も5時間あれば完了だ。全ての料理を皿に盛って、各レシピの前に提出し終えると、奥の扉の鍵が、ガチャリと解かれた。


「どうやって判定してるんだ??」


誰かが味を見るわけでもないのに、どうやって正解だと分かるのだろうか?本当にこのダンジョンは不思議だらけだ。


18室をクリアして大階段へと戻ってくると、ちょうど森の剣さん達は食事中だった。


ずっと料理に囲まれていて、ウラガ達は食べれる料理に飢えているようだ。森の剣さん達の料理に、視線が固定されている。


俺もさすがに5時間も料理しっぱなしだったので、もう料理を作る気にはなれなかった。


「でも、こんなことで折角の“貸し”を使いたくない。」


という訳のわからない理由で、俺は最後の力を振り絞って、料理を開始する。今日の夕食はイタリアンだ。


スパゲッティーと野菜をトマトケチャップで炒めた料理。それにオニオンスープと、硬めのパンをサイコロ状にカットして、サラダに入れてチーズを振りかけてある。


クルスが手伝ってくれたので、あっという間に料理の完成だ。ぶっちゃけパスタ料理は、お手軽なのだ。


冒険の合間に、せっせと乾燥パスタを作った甲斐がある。


森の剣のメンバーは、俺の料理が珍しいのか、チラチラこちらを見てきたが、食事を分ける事はしない。ダンジョンの食事問題は、悪化すれば死者が出るからだ。するならば、交換だろう。


俺達は食事を取ったあと、俺達は第2室へと入った。そこにある大量の土を使って、扉を閉ざして、森の剣さんが入って来れない安全地帯を作る。用心に越した事は無いし、ぐっすり眠るために、両者にとって良い手段だと思う。


翌日は、モノリスの大地に土をどかしてもらって、部屋から出る。扉さえ閉めれば元通りなのが、このダンジョンの良い点でもあり悪い点でもあるだろう。後始末が必要ない。


森の剣さん達へ、朝の挨拶をすませて、俺達は朝食を取る。昨日の残りのイタリアンをパンに挟んだ簡単なものだ。だが結構おいしい。炭水化物ばっかりだ。


そして俺達は19室へと向かった。昨日は3室しかクリアしていない。一つ一つの部屋をクリアする時間が増えている気がする。ふざけた内容だが、さすがはダンジョンといったところか。今日も出来る限り進もう。


俺達は顔を見合わせ、頷きあってから扉を開けた。


「海??」


扉を開いた直ぐ先には、広大な海が広がっていた。


いや、広大に見えるだけで、実際は500m四方だろう。だがどこまでも続いているような錯覚を起こす。原因は、壁の先にまで擬似的に海になっているからだ。


そして扉の目の前には、小さな乗り場があり、左右に漁師が使いそうな中型の船が二艘にそう停泊していた。


「次は漁師の仕事を経験しろってか。」


船の中には、つり竿に、餌となるミミズ。虫とりで使うようなの付いたあみに、広げて投げ入れる大きなあみ。そして魚を突き刺すもりと、魚を入れる箱が置かれていた。


俺は他に情報が無いかを調べる。【鷹の目】を使って、奥の扉の方へ視線を向けると、巨大な木箱が置かれてある、内側の上の方には赤い線が描かれている。


つまりこの赤い線を越える量の魚を、収穫して来いという事だろう。


さらに俺は【周辺把握】を使って、周りを観察する。魔獣を探しているのだ。そして反応は海の中から返ってきた。どんどん俺達のいる方向の水面へと上昇してくる。


狭い桟橋で警戒している俺達の数m先の水面から、バッシャーという音と共に新たな魔獣が姿を現すのだった。


お仕事シリーズです。生活するには、仕事が必要。書いてて、世知辛くなってきます。

料理の判定は、ご都合主義と言う事で勘弁して下さい。ダンジョンに飲みこませても良かったのですが、それだとダンジョンに味覚がある事になっちゃいます。それはなんか気持ち悪い。

テル君は、ようやく料理仲間を増やす事ができました。少しは負担が減るでしょう。

次回は19室以降の話の予定。


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