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ダンジョンで他パティーと出くわすなんて、なんだかドキドキするな。

第14,15室の話。

かなり短いです。


豪華な飾りや、細工がほどこされた大量の備品。それを磨きあげるのが、ここ14室のクリア条件だ。


俺達はすでに【生活魔法】によって、備品のくすみは取り除いている。残すは油を付けるだけなのだ。だがどうしたものか。壊れやすい備品が多い。迂闊に磨けば、あっという間に最初からやり直しだ。


「キューキュ。」

「うん?俺となら楽勝だって?」


俺達に油の存在を教えてくれたユキが、さらに俺と協力すれば楽勝だと教えてくれる。


ユキが言うには、【水魔法】で操れるのは水だけだが、【土魔法】と合わせれば、油も操れるらしい。油というのは、植物由来であり、植物は土と水から出来るから。だそうだ。


分かるような、分からないような。複合魔法と言うやつだろう。【氷魔法】が【水魔法】と【火魔法】の複合魔法であるように、植物に作用する魔法があるようだ。


さらにユキが言うには、ユキの持つ【水神の加護】と俺の持つ【土神の加護】の恩恵だそうだ。本来なら、もっと魔法レベルも高くないとダメなのだが、恩恵のおかげで大丈夫らしい。


いつから生きているのか知らないが、ユキの知識量は凄いと思う。「魔法は任せてー。」とか言っていた魔族のクルスも「へー。」とか言っている。


「えっと、土魔法をユキにかければいいのか?」

「キュ♪キューーッキュ!」

「あとは、任せても良いんだな。それじゃ行くぞ。」


俺はそう言って、ユキへと触れた。普段、魔力を分け与えるために何気なく触れているのを、【土魔法】を意識して使う。


俺の身体から薄茶色の魔法光が発せられ、ユキの白い身体を覆っていく。


そしてユキは準備完了と言わんばかりに、「キュ。」と一鳴きした後、全身から水色の魔法光を放った。


薄茶色と水色の魔法光は、融合するように溶けあい、濃い緑色を呈している。色の法則から言って、緑色になるはず無いので意味不明だ。


それよりも、緑色の光が、油の入った小瓶に触れると、油が浮かび上がる。まるで意思を持ったかのように、スルスルと空中を移動していく。


ユキの意識によって操作されている油は、部屋中にある備品を撫でるように通り過ぎて行く。一つ一つに、まるで極薄の膜でも張るかのように、油のコーティングがされていく。


油で拭かれた備品は、光を反射してキラキラと本来の輝きを取り戻し、より一層その装飾の美しさを表現していた。


そして最後の豪奢な剣に油を付け終えると、ガチャリと奥の扉の鍵が開く音が聞こえた。


「ようやくか。ありがとうなユキ。」

「キューキュ」


魔法を解いて、俺の所へと飛んできたユキを、これでもかとなでなでしてやった。白い綿の様なユキが、フヨフヨと揺れて嬉しさを表現している。めっちゃかわいい。


少し時間はかかったが、まだ時間は3時過ぎだ。俺達はお茶休憩をとってから、次の15室へと挑む。


掃除シリーズの最後の部屋は・・・


「水回りかよ。」


そこにあったのは、悪臭を放つかわやであった。つまりトイレである。他には、生ゴミが入っていたであろう大きなかめ。雨などを処理する雨どいや、排水溝。


臭いし、ヌルヌルする。ダンジョンでなければ、はえがたかっていただろう。そんな物が部屋中に置いてある。


「くっさーー。」

「私、もうダメです。」

「早く終わらせよー。」


ウラガもグラスも、クルスも、その強烈な臭いで戦意喪失だ。鼻の良いグラスは、第10室でのゴミ部屋以来、再びのギブアップである。


俺達は鼻にタオルを当てて、なんとか呼吸をしながら、【生活魔法】のウォッシュを一気にかけて行く。俺が先行して擬態している魔獣を倒し、その後を、ウラガやクルスが洗浄していくのだ。


家の掃除でも、お風呂やキッチンの排水溝は、触りたくない場所の代表格だろう。ヌルヌルしているし、髪の毛や食べカスが詰まっている。


だがここは魔法のある世界。【生活魔法】の邪魔になるゴミ類は、俺の【遠隔操作】と【水魔法】で造った水ナイフで掬いあげて行く。


そしてあまり言いたくはないのだが、トイレにある誰のものかも分からない汚物も、ゴミスペースへと捨てに行く。


そうした触りたくない、見たくも無いものを、せっせと魔法で掃除して俺達は早々に第15室をクリアする。本当は魔獣との戦いや、色々とあったのだが、割愛しよう。思い出したくも無い。


15室をクリアして、俺達は大階段へと戻ってきた。昨日同様、ウラガによって【生活魔法】のリフレッシュを服ごと全身にかけてもらう。だがそれでも嫌な臭いが染み付いている気がして、二日連続で、お風呂に入った。この世界では、お風呂は贅沢品なのだが、魔力が有り余っている俺達にとっては、関係の無い話だ。


時間にも余裕があったので、飯に時間をかけた。厚めに切ったミノタウロスを煮込んだり、スープもじっくり煮込んで、野菜やお肉のうまみを出す。ちなみに、煮込んでいる間に風呂に入っていた。誰にも盗まれないので、それでもいいだろう。


連日のハイペース攻略に疲れが溜まっていたのか、その日は早々に眠る事にした。


そして翌朝、俺達が大階段前でいつものように朝食の準備をしていると、これまでで初めての体験をする。


「お?やっぱり先客がいたのかよ。」


突然、館の玄関が開かれて、背の高いいかにも冒険者という井出達の男たちが、わらわらと入ってきたのだ。


「ダンジョンで他パティーと出くわすなんて、なんだかドキドキするな。」


それまでどんなに強く攻撃してもビクともしなかった扉が開いて、合計6人の冒険者が入ってきた。


戦士風が二人。大きな盾を背負った者が一人。魔法使いが二人。斥候せっこうだろうか?軽装備が一人のパーティーだ。


そして全員が、角や尻尾、羽や牙の何かしらを生やしている。その風貌から、おそらく魔族だろうと推測する。


俺は冒険者を見ながら、近くにいたウラガへとそう話しかけた。これまでのダンジョンでは、他のパーティーと出会う事が無かったので、なんだかテンションが上がってくる。


だがテンションが上がっているのは俺だけで、ウラガやグラス、クルスまでもが警戒心を露わにして、食べかけの朝食も残して、俺の元へと集まる。


俺は、自体がいまいち掴めずに、?マークを頭に浮かべて回りを見る。そんな俺を見かねたのか、ウラガが俺達の前に一歩出て、“土の一帖”の盾を取り出しながら、臨戦態勢へと移行するのだった。

もうダンジョンのアイデアは尽きてきたので、お客様を召喚しました。

これまでのダンジョンは、出来て日が浅かったのでお客はいなかったのですが、今回は出来てそこそこ時間が経っているし、不思議な地形のせいもあって、お客が来やすい場所なので、こうなりました。

テル君は平和ボケしているのでしょうね。きっと次話で説明が入る事でしょう。しっかりしなさい。

次回は、お客人と16室以降の話。

*もしかしたら、今後ざっくりとダンジョンを切るかも知れません。アイデアも無く、面白くも書けないので。

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