ここが塩の街、ザルツか
なんとか一話で、移動を完結させられた。
長すぎても、読むほうが大変だもんね。
テンポ大事に進めて行きたい。
今日はザルツに塩を買いに行く日だ。ザルツというのは、巨大な塩湖だそうだ。その辺一帯が塩で出来ており、岩塩などが取れるらしい。俺とエバさんは、ネーロの準備が終わるまでに積み荷の確認と、玄関まで馬車を移動させた。
エバさんとネーロは御者台で馬を操縦して、おれはお馴染みのステップに座っている。最初にネーロのお店に寄って、女の子と男性を数人乗せた。中には獣人の少女もいた。他種族は高値で売れるから、一番安全な前方に入れるよう命令された。全員奴隷であり、ザルツに売りに行くそうだ。胸糞悪い。奴隷に対して免疫の無い日本人にとっては、人を売りに行くのは慣れなかった。
その後、街の城門近くで、ザルツ行きのお客を定員いっぱいに乗せて、俺たちは一路東の街ザルツへと向かったのだった。
「ケツ痛てー!」
俺は午後休憩のために止まった、街道横の広場で悶絶していた。ネーロと御客さん達、馬に昼食と水を配り終えた俺は、馬車の横で倒れこんでいた。それを見たエバさんは、
「いやー。すっかり言うの忘れてた。自分用の座布団用意しないと大変だって。」
「そういう大事な事は、忘れないで下さいよぉ」
「すまんすまん。けど俺も腰痛があるから、貸してやれないしなぁ。まぁ我慢しろや。」
「そんなぁぁ。」
俺は切実に訴えたが、どうにもできないらしい。苦肉の策として、俺はトレーニングがてら走る事になった。ネーロに馬車の操縦をお願いして、俺の代わりにステップにはエバさんが座っていた。もちろん分厚いクッション持参である。
馬車に並走して俺は走り続けた。転移した時よりかなり体力も増えたのか、一時間くらいなら余裕になっていた。もちろん装備はエバさんに預けてあるので、身軽だ。俺は走りながら、護衛任務の注意点を学んでいた。
まず御者は【遠目】や【鷹の目】スキルを持った索敵担当に任せるらしい。スキルの連続使用はキツイらしいから、2,3人で交代制にするのが理想だそうだ。後方は体力のある者か、防御力の高い者が良いらしい。万が一襲われた時、火を放たれない限り、馬車の中の方が安全だから、人を守るそうだ。高級馬車は壁の中にうすい鉄板が入っているから、剣でも貫けないらしい。俺は色々とアドバイスされながらも走り続け、疲れたらステップに飛び乗って休憩する事を繰り返した。
「「「美味い!」」」
俺が初めてネーロに出合った因縁の広場で、一夜を過ごす事になった俺は、早速夕食作りに取り掛かった。実は俺の趣味は料理なのです。これまでの料理から、この世界の料理レベルは決して高くないと感じていた。
そこで俺はこれを機会に、趣味を復活させたのだ。今夜のメニューは、キャベツたっぷりスープと、なんちゃってロールキャベツである。キャベツいづくしだ。メイドさんに言って、多めの野菜を買ってもらっていた。馬車での運航を任された時点から計画していたのだ。
キャベツっぽい野菜であるコールをほぼ丸ごと、スープで煮込み、干した鳥肉や他の野菜とパンは、小さく刻んでコールで包んである。コールの甘みと、鳥のダシが良く出ていた。パンも入っているので、お腹も膨れるだろう。
「売れる!これは売れるよテル君!いやー。君を奴隷に出来て、僕は幸せ者だよ。」
ネーロに褒められると、なんだか殺意が湧いてくる。攻撃出来ないから我慢するしかないのだが、愛想笑いをするのがやっとだった。
「俺も今まで食べた中で、上位に入る美味さだと思うぞ!いつも食べてる食材でこうも違うとは、テルは料理の才能もあるんだな!」
エバさんが満面の笑みで話しかけてきた。俺はやっと普通の顔に戻って、料理のコツなどを話した。ネーロが後ろでメモを取っていたが無視である。重要な下ごしらえや塩の量、入れるタイミングなどは話していない。せいぜい苦労するがいい。
こうして初日は何事もなく過ぎた。二日目はエバさんが御者をした以外、延々と走っただけで何事もなかった。何台かの馬車とすれ違ったくらいだ。ちなみに二日目の夕食は牛乳と小麦粉でとろみを付けた、なんちゃってクリームスープだ。こちらも大好評だった。もちろん、とろみの付け方等は秘密だ。命令されない限り喋ってやるもんか。
三日目は日暮れごろにザルツの街に着くはずである。これまで同様に昼休憩を終えた後、俺たちの馬車は街道を走っていた。
「全員、戦闘準備!」
いきなり馬車が止められると、エバさんが大声で注意喚起した。俺は急い先頭へ行くと、エバさんは遠くを眺めながら「ゴブリン。数3。」と俺に伝えてきた。ゴブリンとは、魔獣の中でも、最低レベルのモンスターだ。スライムも弱いらしいが、剣が効きにくいのが難点らしいので、やっぱりゴブリンは最弱なのだそうだ。
「俺が足止めする。おまえは一匹ずつ確実にしとめればいい。弱点は人と同じだ。頭でも胸でもブッ刺せば殺せる。」
「わかりました。援護おねがいします。」
エバさんが弓で相手を散らせた後、俺はスキルの実験をすることにした。【スラッシュ1】は敵の正面から斜めに切りかかる初歩の技だが、力を乗せやすく一撃でゴブリンを殺せた。二匹目は【二段突き1】で仕留める。フェンシングのような構えから、一瞬で首と胸に突きを食らわせた。三匹目はもう一度【スラッシュ1】で切り伏せた。
俺は討伐証明の、右耳を切り取り袋に仕舞った。エバさんは後方や横へと視線を向け、警戒していたが、敵の姿は無く、戦闘終了が告げられた。ちなみにエバさんは【遠目】をもっているらしい。
「こんな街に近い場所で出るなんて、珍しいこともあるもんだなぁ。」
「珍しいんですか?」
「そりゃそうさ。基本魔物は森から出ない。森の中の方が食い物があるからな。たまに人を見かけて襲ってくる事もあるが、こんな街の近くで出るなんて、滅多に聞かない。魔物も馬鹿じゃないからな。」
(神様が言っていた世界を救えってことと、魔物の活性化は無関係じゃなさそうだな。もっと調べる必要がありそうだ。)
馬車は再び走り始めて、日没ギリギリに街の城門までたどり着いた。ネーロが門番さんと何か話した後、全員の身分証を提示すると、すんなりと街へと入る事ができた。
「ここが塩の街、ザルツか。」
俺は街の背後に広がる、真っ白な光景に見とれていた。
■ステータス
テル キサラギ 人族 男 18歳 レベル3→4
体力:23→50 魔力:16→20 筋力:28→32
速度:17→25 耐性:16→18 魔耐:10→12
スキル:【オール・フォー・ソード】【採取1】【伐採1】【スラッシュ1】【二段突き1】
やっと趣味である料理の話ができました。
ご飯って大事ですよね。美味しいは正義かもね。
次回は塩の街観光。と小金稼ぎのお話!の予定。
光の反射で眩しい(⊃ωー`)




