表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
127/214

今度は燃やせない仕様なんだなぁ。

ダンジョンの中へと入って行きます。

今回のダンジョンは、少し趣向が違います。

「馬子は、納屋なやで待っててくれな。」

「ブフフン♪」


この屋敷風のダンジョンの横には、きちんと馬車を置いておけるスペースがある。そこに、俺は馬子用の食料を全部出しておいた。ちなみに、水はどこからか流れてきており、水飲み場まで用意されている。なんというか、親切設計なダンジョンだ。


馬子も良く分かっているようだ。目の前の大量の食材を、大切に食べてくれるだろう。馬子の為にも、早めにダンジョンを攻略しないとな。


そして俺達は屋敷の扉を開けるのだった。


屋敷の中は、正面に大階段。左右には長い廊下が続いている。俺達全員が屋敷に入った途端、俺達が入ってきた扉が、ギイイと音を立てて勝手に閉まってしまった。


「開かないです。」

「だろうな。」


いつものダンジョン通りで、ダンジョンに入ってしまったら出られない設計だ。


「で?どうすんだ?」

「とりあえず大階段からかな。」


俺は目の前にある大階段へと歩みを進めるが、階段を上がろうと脚を降ろそうとしたら、見えない壁にぶち当たった。俺は身体のバランスを崩して、よろけてしまった。


「無理だな。」

「と言う事は、横の部屋からクリアするしかないようだな。」


俺達はまず左側の道へと歩いて行く。道には真っ赤な絨毯が敷かれており、貴族のお屋敷の様に見事な調度品が備え付けられている。ちなみに、調度品は取り外せなかった。


「うー?番号ふられてるー。」


クルスがそう指摘するように、部屋にはそれぞれ番号が振られている。1番から始まって、隣が2番だ。


「ウラガ。2番の扉って開くか?」


俺の問いに応えるために、ウラガは2番目の扉のドアノブをガチャガチャするが、ビクともしないようで、開く気配が無い。


「2番は開かねぇ。」

「やっぱりな。つまりこの1番が、ダンジョンの1階と同じ意味なんだろう。順番に進まば次が開くはずだ。」

「なるほど。」


俺は確信を持って1番の扉のドアノブを捻ると、ガチャっとすんなり扉が開いた。そして目の前には、あり得ない光景が広がっていた。


「なぁ。この屋敷って、こんなに広く無いよな?」


ウラガがそう言うのはもっともだ。なにせ、せいぜい6畳の部屋かと思っていたそこには、500m四方の室内とは思えない空間が広がっていたのだ。


「このダンジョンのテーマは【生活】だな。」


そう見て分かる通り、部屋の中には数々の本が所狭しと並べられていた。部屋を多い隠さんばかりに本棚が備え付けられた部屋の奥には、階段では無く扉が存在した。


俺達は周りを警戒しながらも、とりあえず奥の扉までやってきた。ちなみに、入ってきた扉は勝手に閉まることも無く、開け閉めができる。これもダンジョン仕様だ。


「鍵がかかってるな。」

「と言う事は、この中に鍵があるのでしょうか?」

「この中から探すのかよぉ。」


俺は念のために、【空間把握】を使って、詳細に部屋の中を歩いて回るが、鍵らしき物はどこにもなかった。鍵も無ければ魔獣もいない。俺は鍵が見当たらないので、困惑してしまう。


「部屋の中には鍵は見当たらないいんだけど・・・俺の予想が間違ってたのかなぁ。」

「いや。そうじゃないみたいだぜ。」


とウラガは一冊の本を開いて、中から鍵を取り出して見せた。よくB級推理小説などで見る、本の中をくり抜いて隠し場所にするアレだ。


「え!?俺の【空間把握】じゃ、何も分からなかったのに。」

「何かの阻害がかかってるのかもな。ま、一発で鍵が見つかったから良いじゃねぇか。」


と、ウラガは鍵をカギ穴に入れようとするが、どう見てもサイズが合っていないようだ。俺はまさかと思い、近くにある別の本を開けてみると、中からウラガとは全く違うデザインの鍵が出てきた。


「マジかよ。」


それは、この部屋にある無数の本の中から、一本の鍵を見つけるという、なんとも苦行かと思えるような内容だったのだ。


俺はとりあえず見つけた鍵をカギ穴へ差し込もうとするが、今度はスカスカだった。


「とりあえず、片っぱしから入れてみるぞ!」

「「「おー!」」」


それから俺達は2時間近く、本を開けては鍵穴に刺してみるという行為を延々と繰り返した。だが、どれもはずれである。そして2時間頑張っても、やっと部屋の1/4くらいしか進んでいない。これでは、馬子が餓死してしまう。


「もう面倒だ!とりあえず炎で本を燃やそう!グラス!」

「ちょっとマッター。」

「・・・どうしたクルス。何か問題でも?」

「ふふふー。私も使えるってこと、見せてあげる―。」


と言う事で、俺達は一度入ってきたドアまで後退する。魔法が得意な魔族であるクルスは、自信満々の様で、どこから取り出したのか、魔法使いが使いそうな杖を構えている。先端に水晶?のような小さな宝石が挟まった、長さ1m程の木製の杖だ。なかなかに様になている。


「燃え尽きろ。【ファイアーフロア】」

「「「おおお!」」」


俺達は、初めて魔言?の様なものを聞いた。普段俺達が使っているのは、【スキル】としての魔法をイメージで発生させている。クルスの様に、魔言を使うのは俺達にとって返って新鮮だったのだ。


そして、クルスの魔法は凄かった。クルスが魔言を唱えた瞬間、クルスから溢れた赤い魔法の光が、一端杖にある水晶を経由してから、地面へと触れると一気に炎の絨毯が敷かれた様に、部屋一面を燃やしていく。


しかもなかなかの火力があるようで、直ぐに高温の熱気が俺達へと襲いかかり、溜まらず俺達は部屋から逃げ出した。念のために扉は開けっぱなしだ。部屋の中が酸欠で燃え残るのも嫌だし、部屋を閉じたら全てがリセットされて、最初からやり直しになりそうだったからだ。


それから10分もしないくらいで、部屋を埋め尽くされた本棚や本は完全に燃えて、灰しか残っていない状態になった。そこへグラスが意気揚々と入ろうとするが、あまりの熱気に逃げ帰ってきた。そりゃそうだろう。


「クルスは、冷やせるのか?」

「うーんとー。【風魔法】なら使えるから、時間かかるけど冷やせるよー。」

「いや、ここは俺達に任せてもらおう。ユキ。」

「キュ♪」


俺はユキへと魔力を提供すると、その魔力を使ってユキが冷気を生み出した。それを部屋の中へと送りこむと、高温だった部屋はすぐさま適温へと低下していく。冷やしすぎない絶妙な力加減だ。さすが俺の親友である。精霊だけどね。


「召喚かー。いいなー。」


クルスがぽつりとそんな事を呟いた。俺達三人ともが、召喚獣を持っている。俺のユキに、ウラガのシズク、グラスのダイチだ。そんな俺達を見まわして、自分にはいない事を意識して、少し寂しくなったようだ。


「それにしても、クルスの【火魔法】凄かったな。」

「えっへーん。」


なんとも微妙なドヤ顔とセリフに、俺達は苦笑するしかなかった。グラスも【火魔法】が使えるが、何というかクルスの方がスマートなのだ。必要以上のタメも要らないし、魔言もかっこいい。真似しようかなぁ。


俺がそんな事を考えている間に、グラスは部屋に散らばった大量の灰の中から、次々に鍵を集めてくれている。働き者だ。


「皆さん、これちょと見て下さい。」


数本の鍵を集めたグラスが、俺達の元へと戻ってきて、拾った鍵を手のひらに乗せて見せてくれる。


「歪んでる??」

「そうなんです!先ほどの高温で、鍵が歪んじゃったみたいです。」

「鍵ってそんなに直ぐに歪むか?」

「え?経験ありません?変に力加えて、根元から鍵が曲がった事。」

「あるある!」

「俺は無いぞ。テルもグラスも力みすぎだろw」

「はははwって、話が逸れた。それじゃあ、目当ての鍵も曲がってるかも知れないと?」

「それはないと思うー。ダンジョンは特別ー。そのダンジョンを攻略するための物が、そうそう壊れるはずが無いー。」

「と言う事は、曲がって無いのが本物か!」


俺達は攻略のヒントを思いがけないところで手に入れた。そこですぐさま、灰の中から鍵を拾い上げて、曲がっていない鍵のみを探していく。そして集まったのが、約100本にまで絞り込めた。残りの数千本は、どこかしこが歪んだり、装飾の表面が溶けている。


ガチャリ。


そうして100本の内から27本目で、やっと奥の扉の鍵を開ける事に成功した。


開けた扉の先は、真っ暗な空間だったが、進むしかない俺達はその暗闇へと足を進めて行く。


「あれ?屋敷の正面エントランス?」


そう。扉の先は屋敷のエントランス。つまり大階段の目のへと続いていたのだ。おそらくだが、あの鍵の扉と、玄関の扉が繋がっているのだろう。


「見ろよテル。空中に1/20って出てるぜ!」


ウラガが俺の肩をバシバシと叩きながら、興奮した様子で大階段をの上の方を指差している。そこには、数字で1/20が表示されている。先程まであんな物あったか?というかどうやって空中に表示しているんだろう?あ。バリアにでも書いてるのかも。


「20って事は・・・やっぱり。右の廊下の数字の最後が20だ。」

「つまり、20部屋クリアすると、大階段のバリアが消えるんだな。」

「そう言う事だろうな。」


仕掛けが分かった俺達は、次の扉、2番へと進んでいく。


「あ。その前に1の扉を見てから・・・元に戻ってる。」


俺は最初の1の扉を開けると、そこには何事も無かったかのように、また大量の本で埋め尽くされた部屋へと戻っているのだ。もしクルスの【火魔法】で扉を閉じていたら、同様に元通りだったかもしれない。恐ろしいシステムである。途中まで攻略しても、扉が閉まってしまえば、やり直しなのだから。


「じゃ、今度こそ2番へ。」


俺達は2番の扉のノブを捻ると、先ほどまで開かなかった扉がすんなりと開いた。そして2番の部屋の中には、本とは違い、石に閉じ込められた鍵が、これまた大量に設置されていた。


「あぁ。今度は燃やせない仕様なんだなぁ。」


今度は石なので、火で燃やす事は出来ない。だが俺達にはこんな時役に立つ人物がいるのだ。今回は彼に頑張ってもらおうか。


こんなダンジョンにしてみました。

なぜ部屋が広くなったのかは、【生活魔法】で空間が拡張されたと思われます。【空間魔法】の劣化番ですね。威力が小さいので、MAX500m四方です。

テル君は、馬子が待っているので少し急いでますね。まぁ、作者的にも、トントン進んでくれて嬉しいです。

次回は、扉2番以降の話の予定。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ