クルス、これから宜しくな。
サブタイトルで、ネタバレ。
新しい出会いのお話。
ゴゴゴゴゴ。
ダンジョン前の花畑で眠っていた俺達だが、その轟音と共に皆が飛び起きた。馬車から顔を出すが、安全地帯だった花畑が無くなっていた。
「あーー。もう無理だな。」
花畑から、今は狭く深い谷底へと変わっていた。馬車の横は、ギリギリ壁に接触しない程度しかない。そして、まだまだ谷の深さは増している。俺達が下がったというより、横の壁が成長しているのかもしれない。どっちでも同じか。
そして谷底の道は、まっすぐにダンジョンがあるであろう方向に伸びている。ちなみに後ろにも壁があり、逃げる事は出来そうもない。
「そうだな。もう逃げられないな。」
「これは覚悟を決めないとですね。」
「うーん。ダンジョンは早いと思ったんだけどなぁ。」
まだ獣人国でダンジョンをクリアしてから、1月位しかたっていない。しかも食料や情報すら準備も出来ていないのだ。だから、俺的にはダンジョンを避けて、一路王都へと思っていたのだ。
なのに、一晩で逃げられない様に地形が変わってしまった。既にダンジョンのテリトリーだったのかもしれない。トレーネ湖の大渦や、ラ・マンで砂が迫るみたいなものだ。恐らく、花畑で休んだ冒険者を取り込むのだろう。さすがダンジョン。
「手口的に、俺達が目指す天使関連のダンジョンだな。」
「どうする?」
「どうするって・・・寝ようか。」
「そうだな。まだ夜中だしな。」
「私も眠いです。おやすみなさい。」
俺達は、とりあえず眼むる事にした。もうダンジョンへ行く事は確定したので、少しでも体力を回復させようとする。断じて、考えるのが面倒とか、現実逃避ではない。
そして翌日。明るくなって馬車から出た俺達が見たのは、それは高い壁だった。50mはあるだろう。そして遠くの道の先には、ダンジョンがありますと言わんばかりの深い森が広がっている。
「とりあえず、飯にしよう。」
俺はパンと卵とサラダとスープといった、前世では洋風の朝食の代表例みたいな朝食を用意した。
「テルさん。先程、谷を見て回ったのですが、こんな植物が生えてました。」
「これは、毒消しだね。こっちは麻痺消し。」
グラスは、谷の側面に生えていたと言って、二種類の植物を大量に採ってきていた。俺は、奴隷時代に薬草を大量に採取していたので、薬草にはちょっと詳しいのだ。元気にしてるかなぁ、ギルドのクレーさん。
そして俺達は朝食をとった後、意を決して馬車を進ませた。壁ギリギリなので、ゆっくり進んでいるのだが、それがこれからダンジョンなのだと、俺達を意識させる。ちなみに、グラスはまた薬草を見つけたようで、壁を登っては、せっせと採集していた。【生活魔法】や【光魔法】で毒は治せるが、万が一があるので、それに備えるようだ。
谷を抜けて森へと入った俺達は、直ぐに大きな屋敷を発見する。
「あれ?ダンジョンは?」
「あの屋敷から、ダンジョンの気配がします。」
「へ??屋敷がダンジョンなの?」
これまでとは趣向が違う気がするが、グラスがそう言うのだから、きっとダンジョンなのだろう。俺達はさらに馬車を進めて行く。屋敷の全体像が見えるようになると、俺はあるものに気付いて、馬車から駈け出した。
「ウラガ!女の子が倒れてる!俺は先に行くから、一応馬車を守りながら来てくれ!」
「分かった!」
俺の頼みを聞いたウラガは、さっそ馬車を守る位置取りで、【大盾】を展開しながらゆっくりと進んでいく。一方俺は【ステップ3】を使って、少女の元へと駆けつけた。
「おい!大丈夫か!?」
「・・・うぅ・・・ムニャムニャ。」
「・・・起きろ!起きてくれ!」
俺は駆け寄って少女に声をかける。少女は眼深なフードをかぶっているが、その胸も膨らみから、女性だと分かる。最初見た時は倒れていると思ったが、よく観察していると眠っているだけの様だ。だが俺は目に見えない怪我、例えば脳挫傷や内臓損傷があるかもしれないからと、念のため少女に【土魔法】で造ったナイフを持たせて、慣れない【光魔法】をかけてやる。
「良い気持ち。スヤア。」
「寝るな!起きてくれー!!」
筋金入りで朝が弱いようだ。俺が横で叫びまくって、ようやく目を覚ました。少女は上半身を起こして、ボケーっとした目で俺達の事を見てくる。
「・・・おはようございます?」
「お、おはようございます。」
フードを取り去って、律儀に挨拶してくる少女に、俺はしどろもどろになりながらも挨拶を返した。少女が可愛かったのもあるが、それより俺は少女の姿に驚きを隠せなかったのだ。
フードから現れた少女の瞳は、サファイアの様に青く、髪は長髪で銀色。耳は尖っていてて、一瞬エルフか!?と思ったが、頭には小さな角が二本生えている。そして、起き上がって初めて分かったが、少女の背中には、蝙蝠の様な真っ黒な翼が、ちょこんと着いているのだ。間違いなく、魔族だ。しかも身体を起こした事で、胸も強調されいる。装備があるから、正確には分からないが、Dは確実だろう。Dがいかほどか、良く知らないが、大きいのは確かだ。
「こ、こんなところで、何してんだ?おそらくだけど、ここダンジョンだぞ!」
俺は、無理やり意識を戻して、少女へと質問する。ウラガ達ももう目の前まで迫ってきていたので、おっぱいに見とれている場合では無かったのだ。ちょっと残念。
「そうなんですよー。ここダンジョンですねぇー。zzz」
「おーきーろ!!」
別段外傷も無いし、【光魔法】での回復もさせたので、俺は少女の肩を掴んで、思いっきり揺さぶった。少女の頭はガクガクと揺れている。
「うぅ。気持ち悪い。」
「よし。起きたか。」
俺の揺さぶりが激しかったようで、少女は口を押さえて気持ち悪そうにしている。ま、結果的に起きたのなら、多少のダメージも許容範囲だろう。
「で?ここで何を?」
「3日程前に、商団と護衛の冒険者さんと一緒に、“神の舌”を移動してたんですが、ここに辿り着きましてぇ。私はもしもの時の連絡係にと、ここで留守番ですぅ。」
それから色々と少女の話を聞き、俺達も自己紹介した。
少女の名前は、クルスタロ・オルトロス。正真正銘の魔族であり、ある理由で旅をしようと、数週間前に王都を出たそうだ。その時に、商人さんとその護衛をしている冒険者さんに、同行する形で、“神の舌”に入ったそうだ。そして、商人さん達はダンジョンと思われるこの屋敷へ、調査名目で入ったそうだ。すぐ戻ると言っていたそうだが、3日経っても出てこないらしい。
「残念だけど、ここは既にダンジョンのテリトリーに入ってる。抜け出す事は出来そうもないんだ。」
「へーー。」
俺達との会話で、完全に起きているはずなのだが、未だに寝むそうでボーっとしている。見ていると大丈夫かと心配になる。
「俺達はこのダンジョンを攻略に来たんだ。オルトロスはどうする?」
「クルス!」
少女はいきなり、力強い視線と声で、自分の名前を訂正するよう求めてきた。俺はその力強さに押される形で、名前を訂正する。
「クルスはどうする?食料は分けれるけど、ここにいるか?いつになるか分かんないけど、ダンジョンをクリアすれば、出られるはずだ。」
「うーん。私も行く。」
「え!?行くって、ダンジョンへか?失礼だけど、クルスは戦えるのか?」
「だーいじょーぶ。魔法は自信ある。」
クルスは任せて!と言わんばかりに、自分の胸をポンと叩いた。その衝撃で、大きな胸が揺れている。ドキドキ。
俺はその光景から直ぐに視線を外して、周りで俺とクルスの話を聞いていた、ウラガとグラスに、お伺いをたてる。
「しょうがねぇ。ここに居ても、のたれ死ぬだけだ。」
「魔法が得意なら、遠距離からの支援もできます。前衛よりは安全でしょう。」
二人も、クルスが付いて来ることを承諾してくれた。ここにいるより、ダンジョン内であろうと、俺達と一緒にいる方が安全だと思ったのだろう。
「分かった。クルス、これから宜しくな。」
俺とクルスは握手を交わして、俺達へのパーティーへと参加する。こうして俺達四人は、ダンジョンへと向かうのだった。
やっと出てきました!ヒロインです!おっとり系にしてみました。後々のキャラが元気系なので。
そして、まだダンジョンに入らない。話が!進まない!
テル君は、おっぱい星人なのでしょうか?久しぶりの巨乳さんに、ドキドキが止まらない!ようです。
次回は、ダンジョンの話の予定。