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俺にも出会いをくれよー。

王都出発の話。

「これかぁ。なんか、見た目はガラリと変わっちゃったなぁ。」


俺は部屋に入るな、リビングに置かれていた防具に飛びついた。


防具は身体の全面を覆うものと、脚、腕等の要所々々を保護する部位に分かれている。素材は金属で、色は銀色だった。だがそこに、焦げ茶色の獣の皮の様なものが、表面に追加されている。それはレザーコートのように、表面は磨きあげられてツルツルと光を反射していて、なんだか高級そうだ。


「おう、テル戻ったのか。」


そこには、ウラガが立っていた。


「立ったわ!ウラガが立った!!」

「何言ってんだ??まぁ、確かに建てる程には回復したが。」

「・・・むなしい。」

「さっぱりわかんねぇ。」


こういうボケに突っ込んだり乗ってくる人がいないのが、異世界的には辛いよなぁ。


「身体はもういいのか?筋肉痛とかも含めて。」

「もちろんだぜ。と言いたいところだが、まだ全快じゃねえな。今日一日は、歩くのでやっとかもな。」

「回復に向かってるならいいか。ところでグラスは?」

「まだベッドから起き上がれないみたいだな。座った状態が限界だ。」

「そっか。まぁ特にする事も無いし、俺達でゆっくり準備しようか。」

「それもそうだな。ところで、それが修理してもらった防具か?かなり様変わりしたな。」

「そうだね。ちょっと【解析】してみないか?」

「何が出るか楽しみだぜ。」


と言う事で、俺とウラガで新しくなった防具の【解析】を始めた。両手に新しくなった防具を持って、集中してじっくりと防具を見て行く。


■魔鉄と魔革の防具:最大防御力400 通常120 耐久100/100 付与:自動修復


「「!!自動修復!?」」


俺とウラガは【解析】結果から得られた情報に驚いて、声をあげてしまった。防御力は250から150程も上昇しているし、魔力を提供しない状態でも70もアップしている。そして何より驚いたのが、付与された内容だ。


「・・・自動修復って何だ?」

「うーん。勝手に元の状態に戻るって事?」

「それにつきましては、私からご説明を致します。」

「「わぁ!!」」


いつの間にか俺とウラガの背後には、メイド長さんが立っていた。神出鬼没にも程がある。だがそれにも、この一週間で慣れたしまった。慣れって怖いな。


「この素材は、実は何層もの革によって形成されています。そして魔力を栄養として、一週間に一回、脱皮します。」

「脱皮!?気持ち悪い。」

「ご安心ください。脱皮と言っても、一番表面にある革が一枚剥がれるだけです。そしてその際に、表面に着いたダメージも一緒に抜け落ちる事になります。ですので、余程のダメージを食らったとしても、数か月後には耐久度も元通りになります。」

「へー。便利な素材もあるんだなぁ。」

「はい。ですが全部の層を貫通したり、その奥にある金属の部位の傷は、回復できません。といっても、この革自体、魔力を込めると相当硬くなるので、そうそう貫通などはしないと思いますが。」

「それは凄い!いったいどんな種族の革なのですか!?」

「ドラゴンです。」

「「・・・へ?」」

「ドラゴンです。」

「「・・・何だってー!!」」


と驚いた振りを俺はするのだが、これだけ凄い機能なのだ。ドラゴンだろうと予想はしていた。だがウラガは、何も予想していなかったようで、本当にびっくりしている。


この世界においては、ドラゴンは魔獣の中でも最強種の一角にいるそうだ。硬いうろこに、強力なブレス。空を飛んだら敵なしだとも言われている。そんな超貴重な素材をふんだんに使用してあるのだ。そりゃ自動修復くらいの付与は付くだろう。


「あれ?それでも防御力の最高が400なんですね。低くありません?」

「はい。本当はその上に鱗がくるそうなのですが、今の獣人の技術では扱えないそうです。そして、この皮膚に当たる部位も、本来の力の数分の1しか引き出せていないようです。職人の腕なのか、他に何か原因があるのかは、わかっておりません。」

「なるほどねぇ。本来のドラゴンはもっと硬いのか。」

「はい。獣人の作った普通の金属の武器では、傷一つ付けられないそうです。」

「そんなにですか。ふふ。なんだか会ってみたくなりました。」

「「・・・」」


俺のそんな発言に、ウラガとメイド長さんは、口をあんぐりと開けて俺を見返してきた。そしてフイッと視線を逸らされてしまった。まるで、可哀そうな人だから、そっとしておこうとでも言うかのようだ。いいじゃん!会ってみたくなったんだから!


「ところで、グラスの分もあるようですが・・・」

「はい。さすがに魔鉄までは準備出来なかったので、普通の鎧に同様の素材をコーティングしております。グラス様の分は、動きやすいように胸の分のみですが用意しました。他は武器を装備するそうですので、武器にはこの素材は向かないのです。」

「そうですか。いえ。胸だけでも助かります。色々有難うございました。」


それから俺達は二つになった“魔法の袋”にそれぞれの装備や、食料品、薬や生活用品を詰め込んだ。なので、馬車には愛用の座布団と、暖房用の火鉢、それと冷蔵庫が置かれているだけだ。相変わらず殺風景だなぁ。まぁ広く使えるから良いっちゃ良いんだけど。


そして翌日。早朝から俺達は馬車に乗り込んで、王城を出発した。見送りにはウラガとグラスの修行をしてくれた副隊長と守備隊長、俺が世話になった料理長とメイドさん、そしてメイド長が来てくれた。


「テル様、ウラガ様、グラス様、お気を付けて。」

「はい。メイド長さん達にはお世話になりました。王にも宜しくお伝えください。」

「別れ際に何なのですが、なにか記念になる物を頂けないでしょうか?」

「良いですよ。では【土魔法】で作った長剣を」


と言う事で、急遽【土魔法】で長剣を作り出した。本気でこれでもかと圧縮して、表面にはローマ字表記で俺の名前を彫っておく。見た目は1mちょいくらいの、漆黒の剣ができた。


「有難うございます。記念に王宮で保管させて頂きます。」

「そんな大した者でも、物でもないんですがね。」


そして俺達は再会を約束して、次の目的地である魔族のある国境へ向けて、馬車を走らせるのだった。


「そういえば、馬車での移動も久しぶりだなぁ。また宜しくな馬子」

「ブヒヒーン♪」

「うんうん。馬子も元気でなによりだ。あ、そうだ。グラスちょっと来てくれ。」


俺は馬車の中にいるグラスへと向けて声をかけた。御者台の後ろにある、厚手の布をからひょっこりと顔をだしてくる。


「何でしょう?」

「折角だから、グラスも御者の練習をしようか。今なら魔獣も少ないだろうし、道も悪くない。」

「いいんですか!やりたかったんです!」


そう言って、俺の横に並ぶように馬車から移動してきたグラスに、馬子の手綱たづなを手渡した。


「馬子ちゃん宜しくね。」

「ヒヒーーン♪」


うん。二人の相性も良さそうだ。女の子同士で、通じる物があるのかもしれない。知らないけども。


「おーい。ウラガ。御者代わってくれ。」

「なんでだよ。テルが教えるって言ったんじゃないか。」

「いや。俺もウラガに教わっただろ?それなら教えた経験のあるウラガの方が、適任かなっと思ったんだよ。」

「まぁ、一理あるな。しょうがない。代わってやるよ。」

「頼むよ。」


ということで、先に俺が馬車の中へと入った後、ウラガが御者台へと移動していった。


そしてユキしかいない馬車の中で、ユキに話しかけるように独り言をつぶやく。


「俺は空気の読める男なのだよ。ウラガ君。グラスと親睦を深めたまえ。」

「キュー。」

「俺にも出会いをくれよー。」


なぜだか知らないが、目から水が一滴流れ落ちた。それを見たユキが俺を気遣うように、冷蔵庫の上から飛んできて、俺の肩へと乗ってくる。


俺だって!俺だって、彼女が欲しいんだーーーーー!!!!!

いちゃいちゃラブラブしたいんだーーーー!!!!!


と心の中で叫んでおく。そいて俺と繋がっているユキは俺の思いが伝わったようで、俺のほほにその白いフワフワで冷たい身体を押しつけてくる。「私で我慢しなさい。」とでも言っているようだ。さすが異世界で最初に出来た、一番付き合いの長い友達である。出来た精霊だ。


序盤にそんな悲しい事もあったが、俺達の馬車は順調に、冬の獣人族の国を西へと走っていくのだった。王都が中央より西に位置しているので、早くて二週間程度で、国と国との境界まで着けると、メイド長さんが言っていた。


俺はこれからの出会いに期待を込めながら、ユキと共に広い馬車の中、火鉢で赤々と発光する【火の魔法結晶】を眺めるのだった。



防具について、初めてドラゴンの素材が出てきましたね。

私自身、なんの素材にするか、どんな付与にするか考えていなかったのですが、書いてるうちにこうなりました。

どこかで整合性がとれなくなるかも。ま、その時はその時ですね。

テル君は、とうとう飢え始めたようです。ウラガだって、グラスが14歳なので手は出してないのですが、それでも羨ましいようですね。いつかちゃんと二人のラブラブを書きたいなぁ。

次回は、境界の話の予定。

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