それじゃぁ、屋台屋さんに案内してくれるかな?
屋台を始める前の、下調べの話。
短めです。ごめんなさい。
「ゴフゥ!」
「え!?国王様、もう出発したのかよ!早すぎじゃね?w」
俺達は今、主のいない王城で優雅に朝食をとっている。朝の散歩で出会った王様の事を、ウラガとグラスに伝えたら、グラスは飲んでいた水を噴き出して、ウラガは笑いながら俺へと確認をとってくる。ちょっとグラスさん。汚いですよ。
「朝の散歩のときに、ちょうど出発する王様に会ったんだよ。また会おうだってさ。」
「お、王様が居ないのに、私たちはここに居て良いんでしょうか??」
グラスが辺りをキョリョキョリョしながら、焦った感じで俺達へと不安を漏らしてくる。そしてそれに応えたのは、メイド長事、魚人のお姉さんだった。ちなみに何の魚かは分からない。
「王からは、皆様は王自らの客人であると、仰せつかっております。なので、立ち入り禁止区域意外でしたら、どこでも好きに王城を見て回って頂いて構いません。もちろん食事や風呂、部屋の用意もしてありますので、必要とならばいつでも、どのメイドにでもお伝えください。対応させて頂きます。」
「・・・は、はぁ。」
グラスはもの凄く恐縮したような感じで、申し訳なさそうにしている。そしてグラスをそっと口に当てて、水をチビチビ飲みながら、視線は俺達へと注いできた。俺とウラガは、人族の王城で既に国賓扱いされていた経験があるので、それほど緊張する事も無いと平気な顔をしている。
「ところで、食後にはウラガ様とグラス様には、我が王宮騎士団の副隊長および、守備隊長にお会いして頂きたいのですが、宜しいですか?」
「お!昨日お願いしてた、修行の先生だな。宜しくお願いします。」
「私もそれでお願いします。」
「畏まりました。テル様はいかがなさいますか?」
「俺はグラスとの約束もあるし、ちょっとこの国の料理について学びたいと思ってるんです。ですから、美食街道?でしたっけ。そこを散策した後、屋台で出す料理を試作したいと考えてます。」
「でしたら、馬車で食事街道まで送迎させて頂きます。料理の試作は王城のキッチンを利用して下さい。」
「そうですねぇ。馬車は有り難く使わせて頂きます。でも料理の試作は実際の屋台の設備を使って作ってみたいんですよね。ですので、以前お世話になった宿の主人に手配して貰おうと思います。」
「畏まりました。では、何かお困りになられましたら、街に居る憲兵にお知らせ下さい。こちらを見せて頂ければ、スムーズに対応出来ますので。」
俺の要望をすんなりと聞き入れてくれたメイド長のお姉さんは、紙にスラスラと何かを書くと、そこにハンコをポンと押した。そして王の家紋の入った、この世界ではかなり上等な白い封筒に入れた。そしてタイミングよく現れた、他のメイドから渡された真っ赤な蜜蝋で封筒を封緘して、蜜蝋の上に、またハンコをポンと押してくれた。
よく映画で見た、昔の公式文書の封の仕方だ。そしてそれを俺に渡してくれた。蜜蝋のハンコは亀の甲羅をあしらった、王家の紋章であった。とても美しい。
朝食後、俺はメイド長さんが用意してくれた馬車に乗って、川の対岸にある食事街道へとやってきた。冬だというのに、もの凄い数の屋台が延々と続いている。
「おぉお!見た事も無い料理がいっぱいだ!」
馬車から下りて、たった数m移動しただけなのに、売られている料理は前世でも見た事の無いものばかりだった。
きんちゃく袋の様な肉で、ポテトサラダのようなにした野菜を包んだもの。見たことも無い小魚を丸々焼いて、それをスープと共に食べるもの。クレープ生地?の上に、玉ねぎ?のスライス、薄切り肉そして林檎?のスライスを重ね、オーブンで焼いたもの。大鍋で牛乳?を温め、そこに細かく刻んだ色とりどりのフルーツと蜂蜜をかけるもの。
冬と言う事もあり、暖かい料理が多く出されていた。そのおかげで、周りからは大量の湯気が発生しており、それによって運ばれる臭いは、とても食用をそそられる。
俺は美味しそうと思った物や、人が列を並んでいた物は片っ端から買いあさった。食べては歩き、気になる食べ物は“魔法の鞄”に入れておく。そして食べ終わったら、また鞄から取り出して食べる。南北に長い食事街道をゆったり見学する。
実はこの為に、朝食は少なめにしておいたのだ。だから朝からたくさん食べられた。
そしてたっぷり2時間ほどかけて、とりあえず南から北までやってきた。さすがに食べ過ぎたと思った俺は、買い込んだ料理が詰め込まれた“魔法の鞄”に、さらに食材を詰め込んで、船着き場を横切り、以前お世話になった宿屋へと向かった。
「いらっしゃいませー。あ!前に止まってくれた人族のお兄さん!」
俺が宿の扉を開けて入ると、正面にある受付カウンターには、以前も世話になったドラえ・・・青いアシカ?だったかトド?・・・あ!アザラシだ。の少女が出迎えてくれた。
「こんにちは。今日は止まりじゃなくて、屋台を出そうと思って来たんだ。」
「覚えていて下さったんですね!ではウチで馴染みのある業者さんを紹介しますね!ちょっと怖いですけど、仕事はピカイチなんです!」
アザラシの少女は元気よく俺へと話してくれた。以前は接客用というか他人行儀な感じだったが、ただ単に人見知りして頂けかもしれないな。
「その前に少し話を聞きたいんだけど?」
「?いいですよ。ちょうど仕事も一段落しましたし。」
そういう女の子の手には、掃除道具セットがあった。居なくなった客の部屋を掃除してきたのだろう。
「じゃぁお茶にしようか?食べ物色々あるんだ。」
「ほんとですか!実は今から、あたしの朝食の時間だったんです!ラッキーですw」
「それはタイミングが良いね。」
満面の笑みでそういう女の子は、とてもかわいらしくて、まるで太陽の様だ。言ってみたかったんだよなぁ、このセリフ。
そして俺はアザラシの少女に連れられて、カウンター奥の従業員用の部屋へと連れて行かれた。この宿はこの子がお手伝いしていると聞いていたのだが、宿の主人は今日も居ないみたいだ。
「食事街道で買って来たんだけど、食べてくれるかな?」
「わぁ!!どれも今人気のお店の奴だ!いっただっきまーーす!」
知らなかったが、俺が色々買ったのは人気店のモノだったらしい。そりゃ人が並んでいたところは、だいたい買ったからね。そんな事もあるだろう。
「うん。どれもおいしぃ。テルお兄ちゃん有難う!」
「お。名前覚えていてくれたんだ。」
「うん!だって羊のお兄ちゃんの紹介だったもん!そんな人のこと忘れないよw」
羊のお兄ちゃんとは、この宿の御子息で、蜂に襲われた村で村守として働いていた青年の事だ。彼から紹介状を貰えるのは、本当に珍しいらしいし、それに人族だからという事も合わさって覚えていたようだ。
「ところで、これらの料理なんだけど、全体的に味が濃いかなぁ。って思うんだ。冬だからかな?」
「そうだよ!食事街道で買って、お家の夜ごはんとかに出す人もいるから、冷めても美味しいように、濃い目なんだよ!あとやっぱり冬は濃いめのものじゃないと、しっかり蓄えられないって言われてるんだ!」
おそらく、高カロリーのものをとって、冬を乗り切ろうとした名残だろう。その習慣が今も続いているようだ。
「なるほどねぇ。ところで、今はどんな味付けがはやってるの?塩味?ソース?」
「うーーん。今年はソースかも。去年はキノコ味と塩が流行ったんだよ!」
「流行りの食材もあるんだぁ。今年の流行りの食材は分かる?」
「今年はね!お肉!魔獣が多くて、それに合わせてお肉が一杯取れたんだって!」
ちなみにこの世界では、魔獣も食べるし、魔獣の素材を利用して生活している。なので魔法結晶以外でも、魔獣の部位は金になるのだが、俺達にはそれを収集する技術も時間もないので、今までやって来なかったのだ。しかも俺達が入るダンジョンは、気を抜くと死ぬし、そこまで気を回す余裕が無かったのだ。
「ふーん。お肉とソースか。色々出来そうだね。」
「そうなの!だから今年は新商品が一杯で、楽しいの!」
「そっかぁ。じゃあお兄さんも、新しい料理を披露しようかなぁ。
「え!本当に!?やったー。人族の料理が食べれるなんて、私初めて!」
うっ。まぁ、俺は人族っちゃそうだけど、転生したから純粋なこの世界の人族じゃないんだけどなぁ。でも説明する訳にもいかないし。・・・ま、いっか。どっかの田舎出身という事にしよう。
「それじゃぁ、屋台屋さんに案内してくれるかな?」
俺がそう言うと、アザラシの女の子は待ちきれないとばかりに、勢いよく椅子から降りた。そして俺の手をとり、引っ張る様にして、嬉しそうにして宿の外へと連れ出した。グイグイ引っ張られながら案内されたのは、宿から北へ10数件行ったところにある、倉庫の様な作りの背の高い木造家屋だった。
女の子の話では、ここで屋台の制作や整備、倉庫としても使っているそうだ。俺は女の子に連れられて、その巨大な建物の扉をノックするのだった。
書いてるだけで、お腹が空いて来る。
あまりに奇抜すぎてもおかしいし、かと言って普通も面白くない。
けど伝えないとダメ。ということで、無難なラインナップに。
もっと描写したかったけど、著者様の想像力にお任せします。
テル君は、何を作るか既に決めているようです。関西人にとってソースを使った料理と言えば!のやつです。
次回は、料理の話の予定。