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え!?着いた早々に宴会ですか!

王都への帰還の話。

「ほれ。どこに行く来たいんだい?早くしないと、ダンジョンが崩れちまうよ。」


ボスを倒して天使を解放した事で、ダンジョンから神殿への再構築が始まっていた。土で出来ている部屋だが、ゴゴゴと不穏な音を伴いながら、急激に縮小し始めており、また天井からは土や岩がゴロゴロ落ちてきている。


「それでは、獣人族の王都へお願いします。」

「王都ね。うーんと。お!ここから近いさね。そんじゃぁ、気を付けて行くんだよ。」


土の天使は、自分が今いる場所を確認すると、俺達の乗っているトロッコにそっと触れた。天使が触れた瞬間に、トロッコはガコンという音と共にゆっくり動き始めた。そこで俺は一つ確認する事を思い出して、すでに後方へと離れた土の天使に向かって、叫んだ。


「あ!神殿ってどの辺に再構築されますか!?」

「たぶん、“神の手”の中央だろうね。また会いたくなったらおいでよ。話くらいしてあげるさ。」

「色々有難うございましたー!」


最後の挨拶と共に、俺達は暗いトンネルの中へと突入していく。俺はきちんとトロッコに座りなおして、これからの衝撃に備えた。


トロッコがギリギリ通れる程の穴は、トロッコの線路とトロッコの底だけが、魔法の光で淡く輝いているだけで、かなり暗かった。俺は久しぶりの【鷹の目】を使って視線を飛ばして、先の方を確認している。


トロッコは、最初ゆっくりと進んでいたのだが、トンネルを入った直後から段々速度をあげ始めている。そしておそらくだが、今では時速200kmは軽く超えているのではと思えるほどの轟音を立てながら、坂道を上っている。


地下深くに居たようで、かなりの距離を登っているようだ。だが如何せん速度が速すぎるために、出口に辿り着くのは一瞬だった。


そして地上にでて、久しぶりの太陽の光を浴びた俺達は、あまりの眩しさに目を閉じた。太陽の眩しさに慣れていない俺達を他所に、トロッコを待ち構えていたのは、ジェットコースターで最初に上るような大きな坂だった。もちろん頂上から先は途切れている。


「飛ぶぞ!」


俺は【鷹の目】を使って、事前に目を慣らしていたので、二人にトロッコが飛び出すタイミングを伝えられた。二人は俺の言葉を聞いて、トロッコの壁に両手両足を伸ばして、身体を固定する。


そして俺達は、猛スピードのまま空中へと投げ出されるのだった。そのまま綺麗な放物線を描くように、重力と慣性に従って移動する。目が慣れてきた二人は、速度が遅くなってきたトロッコから顔を出して、超高高度からの眺めを堪能していた。


「綺麗だなぁ。」

「あ!あそこに王都がうっすら見えます!」

「え、どこだよ??」


竜人族だからなのか、グラスには既に王都が見えているようだ。天使が言っていた通り、そんなに離れていないようだ。だが、一回のジャンプでは到底、到達することは出来ない。なので、当然途中で再加速する必要が出てくるのだ。


トロッコが自然落下していき、あわや地面と衝突!という段階になると、地面から新たな線路がギュイーーンと浮かび上がってくるのだ。その新しい線路に、滑る様に乗ったトロッコは、これまたジェットコースターで見るような大回転が何本も続く線路で加速する。


ほんの数秒で最高速度まで加速したトロッコは、また巨大ジャンプでもって、小さな山や川、森等を飛び越えて行く。


案の定、俺達はその連続する大回転によって眩暈めまいを起こしてしまった。レベルアップによって、感覚が鋭くなっている俺達にとって、短時間だろうとかなりきつかった。


そして俺達は今、3度目の大ジャンプによって、俺達は王都近郊の空の上へとやってきていた。だが、俺達は恐ろしい事に気付く。


「なぁ。このままいくと、街の中に落ちないか?」

「街の中というより、王城に突入するコースだろ!」

「ふぇぇ。不審者として捕まっちゃいますー。」

「あ。激突するとかは心配してないんだ。」

「!!ヤバいじゃないですか!私達、ペシャンコです!」

「「あははw」」


グラスの慌てっぷりに、俺とウラガは可笑しくなってきた。俺とウラガは、すでに水のダンジョンから抜け出た経験があるから、このトロッコが安全に止まるだろうと分かっているので、そこはあまり心配していない。グラスをビビらすために、言ってみただけだ。


だがグラスが言うように、いきなり王城に飛び込むと、不審者として問答無用で殺されかねない。なので、俺はあの書類を取り出しておいた。


「キャーー!」


というグラスの盛大な悲鳴と共に、俺達の乗っていたトロッコは、王城の庭へと突っ込んでいった。そして地面と衝突する瞬間に、地面が淡く光り、まるで水の様に波打った。


そしてトロッコは、液体化した地面へと飛び込むようにしてダイブした。ドボーーン!!という音と共に、液体化した地面が盛大に周囲へと飛び散った。おかげでトロッコの衝撃波完全に吸収されて、俺達への被害は軽い衝撃だけで済んだ。


そしてトロッコは、そのまま地面に溶けるようにして消えて、俺達は地面へと座った状態で降ろされた。


王城を警備していた獣人の兵や、メイドさん達がその光景を見ていて、あまりの事で口をあんぐりと開けて、目が点になっている。


そしてたっぷり20秒ほど時間をかけてから、やっと兵隊たちは再起動して、ゾロゾロと俺達を囲んだ。


「き、貴様ら!何者だ!今のはなんだ!」

「名を名乗れ!!」

「いや、先に手を上げろ!」


慌てふためいている兵隊たちは、剣や槍を俺達へ向けながら、口々に命令してくる。


俺はこうなるだろうと思っていたので、手を上げながら、準備していた書類を目の前の兵隊へと差し出して、弁明した。


「俺達は王から直々に、ダンジョン攻略の許可を頂いた者です。攻略が完了したので、急いで移動してきました。これは王に頂いた許可証です。」


目の前に居た兵士は、おずおずと俺のそばまでやってきた、俺の手から手紙をパシッともぎ取った。そしてその手紙を読んだ後、近くに居た上官らしき、犬の獣人へと手紙を渡した。


手紙を読んだ上官は、さらに近くに居た鳥族の兵士に一言二言伝えて手紙を渡している。そして手紙を受け取った鳥族の兵士は、大きな翼を羽ばたかせて、どこかへと飛んで行った。


「確かに手紙を読んだ。だがまだ貴様たちが、その手紙の本人だと証明出来ていない。確認が取れるまで、このままで居てもらう。」

「分かりました。」


俺は言葉少なく了解の意を伝えた後、手を上げたまま地面に座っている。ウラガもグラスも俺に倣うように、手を上げて大人しく待っていた。


そして数分が経過した時、王城の方からヤギの執事さんが駆けてきた。その手には先ほどの手紙を持っている。俺達の身分を保障できる人の登場に、俺達はやっとの事、ホッと気を緩める事ができた。


「テルさん!それにウラガさんと、グラスさん!皆の者、この人たちは安全だ。武器を下げなさい!」


ヤギの執事さんの言葉を聞いて、兵隊たちはスッと武器を下げて、俺達へ向けていた敵意も取り下げてくれた。だが今度は、好奇心の眼差しで俺達を見ている。四方八方から見られているので、なんだか恥ずかしくなってきた。


「ダンジョンを攻略したとか。王がお会いになるそうです。直ぐにこちらへ。」

「魔法で清潔にするので、ちょっと待って下さい。ウラガ、頼む。」

「おう。」


俺達はウラガの【生活魔法】のリフレッシュによって、全身の埃や土、汗や服の汚れ等を綺麗に取りさらった。


そして見ため小奇麗になった俺達は、執事さんに案内されて、駆け足で王の元へと馳せ参じた。


「王!お連れしました。」

「入れ。」


そう言われた謁見の間に入った俺達を待ち受けていたのは、王ただ一人であった。人族の王の場合、ダンジョンの報告へ行くと大勢の文官や武官が、そばで控えていたので、亀族の王一人だけとの光景に、違和感を感じてしまった。


「急に押しかけてしまい、誠に申し訳ありません。」

「世事も世間話もよい。結果と証拠を端的に申せ。」


相変わらず、せっかちの様だ。そこで俺は、なぜ王が一人なのかという理由に納得がいった。


俺達は事前に天使を救出する旨を伝えてある。ならば、ダンジョン攻略の証拠が、人に見せられないモノになる可能性があるはずだ。なので、最初から文官を排除しているのだろう。もし呼ばれたら直ぐに出てこれるように、スタンバっているはずだ。さすがせっかちな王様だ。


「こちらです。ウラガ。グラス。貰った物を出して、お見せして。」


俺はとりあえず、土の天使から貰った半分に割れた魔法結晶を執事さんに、手渡した。


「剣を抜かせて、「見せよ」」

「・・・御意。」


俺の言葉を食い気味に許可を出した王の前で、俺は“土の一振り”を取り出した。そしてウラガは“土の一帖いちじょう”を召喚する。


そして、グラスは意を決したように、自分の胸へと顔を向けて語りかけた。


「出て来て、ダイチ。」


グラスは、土の天使から貰った召喚獣の名前を“ダイチ”に決めたようだ。そして、グラスの呼び声に応えるように、胸元が茶色に光った後、ポンっいうが鳴りそうな勢いで、魔法の茶色い光に包まれたモノリスのダイチが現れた。


「ガッガ♪」


相変わらずかなりの重低音を響かせて、大地が嬉しそうにグラスへとり寄っている。かなりの甘えたさんの様だ。


「ほう。なかなか面白い。っで、結果は?」

「はい。この魔法結晶はサイズこそ小さいですが、神級です。それに、テルさん、ウラガさんの武器も、性能的に神級と言っても良いでしょう。グラスさんのダイチは、【土神の加護】が付いてます。おそらく神獣の類でしょう。間違いなく土の天使を救出したと思われます。」


ヤギの執事さんは鑑定系のスキルを、かなりの高レベルで所持しているようだ。そうでなければ、俺達の武器やダイチのスキルを読み取ることなど出来はしない。


「わかった。もう仕舞って良いぞ。だが、後でじっくり見せてくれ。」

「はい。」


亀の王は、俺達の武器に対してかなり興味を引かれているようだが、話を進めるために我慢しているようだ。なんだか可愛く思えてきた。後で時間ができたら、色々話してあげよう。


そして俺達が武器やダイチを仕舞うのを見計らったかのように、王が声を張り上げた。


「食事の準備だ!盛大に頼むぞ!うたげだ!」

「え!?着いた早々に宴会ですか!」


せっかちにも程があるだろうと思うのだが、実は俺達が着いですぐに準備は進められていたようだ。俺達は謁見の間の近くにある食堂へと案内される。そしてそこには、文官や武官の偉い人であろう獣人の人々が、テーブルについていた。彼らもこうなる事を見越して、こちらで待機していたようだ。


いやはや、せっかちな王につかえる人たちは、先読みしなければ着いて行けないようだ。彼らの苦労が垣間見えた瞬間だった。


そして俺達と王が席に着いた瞬間から、飲み物が注がれ、前菜が運ばれてきた。息つく暇もなく、宴会は開始されるのだった。


やっと王都に帰ってきました。本当は、さらっと帰国して王との会話をメインにするはずが、なぜか帰国だけでこんなに。

不思議です。

テル君は、王のせっかちさに、素の言葉遣いになってますね。振り回されている感じです。

次回は、王との会話と王都の話の予定。

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