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罠、舐(な)めてたよ。

地下30階の話です。

「どっと疲れたな。精神的にもな。」

「俺も盾張りながら、冷や冷やしたぜ。他の3本の道から敵が来た時なんてよw」

「私も一本の道を死守するので精一杯でしたよ。2本の道から来た敵を倒してたテルさんは、さすがです!」

「ウラガもあんな数のモノリスと蝙蝠から守ってたし、グラスもずいぶん強くなったよ。だから俺は二本の道に専念できたんだよ。」


なぜか俺はグラスから尊敬の眼差しを受けていた。俺だって2本で精一杯なのだ。二人の活躍は本当なのだが。


「とりあえず、もう十字路とかT字路はやめよう。一本道を選んで移動するか。」

「その前に休憩しましょう。魔力がちょっと減っちゃいましたし、お腹も空きました。」


確かに魔力の少ないグラスが、付与だけだとしても【火魔法】を使い続けたのだ。そこそこ魔力が無くなっても、おかしくない。


「そういえばグラスは朝食、食ってなったたよな。はい。サンドイッチ。ウラガも。」


念のために作っておいたサンドイッチが、さっそく役に立った。俺も腹に入れておく。それから簡単なスープを作って、二人に渡した。なんだかんだで、1時間も長居してしまったので、魔力も少しは回復したようだ。


それから、ウラガに埋めてもらった壁を取り払ってもらって、30階を進んでいく。光ナイフで辺りを照らしながら、敵をバッサバッサと倒していく。


そして、30階も半ばになったころ、「あ。」という声と共に、ウラガが立ち止まった。虚空を眺めているので、ステータスを確認しているのだろう。


「うおぉぉぉ!!3っつも!3つも一気に!!」


ウラガが突然大声を上げて、喜びを爆発させた。俺とグラスはその迫力に、一瞬ビクッとなる。それくらい大声だったのだ。俺は好奇心を抑えられずに、ウラガへと質問してみる。


「3っつってどういう事だ?」

「それがな!!【土魔法】と【魔力回復】と【魔力上昇】がレベル2になったんだよ!」

「おぉ!!それは凄いじゃないか!!今まで使いまくってたもんな!おめでとうウラガ!」

「凄いです!三つも同時なんて聞いた事ありませんよ!おめでとうございます。ウラガさん。」

「おぅ。ありがとうな!」

「今日はウラガを祝うために、夕食は奮発するぞ!」

「「やったー!」」


一通り喜んだ後、俺達はさっさと30階を攻略しようと進んでいった。ウラガが【土魔法2】になったおかげで、さらに盾の強度が増していた。今までは、蝙蝠の【土魔法】で作られた三角錐型の岩弾が【大盾】に突き刺さっていたが、今では完全に塞いでいる。魔力の量も格段に増えたので、より楽に【大盾】を展開できるし、【光魔法】で周囲を照らす役目も変わってもらった。俺の魔力を温存させてくれるらしい。


30階も終盤にかかってくると魔獣の量も、罠の威力も半端なくなっていた。


今まではグラスの【危険予知】のおかげで、罠があったとしても余裕で避けられたし、魔獣が起動させても、難なく回避できた。だがそれも限界に近付いていた。そして、またピンチが訪れる。


俺達がモノリス達と戦っていると、いつものように、グラスが危険を予知したようだ。


「しゃがんで!」


と叫ぶ声に、俺とウラガは焦ることなく普通のスピードで、しゃがもうとしたら、グラスに引きずり倒された。


俺達は驚いてグラスの方へ振り向こうとした瞬間に、頭の上を巨大な岩のギロチンが横切った。しかもかなりの速度が出ていたようで、ビュン!と風を切って、通り過ぎた後には風が巻き起こっていた。


「な!!」


俺は驚いて、今度こそグラスの顔を見るが、グラスの顔はまだ緊張で強張こわばっていた。すると、グラスは何かを感じたように、俺とウラガを両脇に抱えたまま、一歩前進した。


俺達は状況に着いて行けずに、グラスのなすがままだが、それが返って良かったようだ。


さっきまで居た場所に、タケノコのように一瞬で岩のとげが生えてきたのだ。棘といっても、両腕で抱えてやっと手が繋げる程の太さだ。


「ウラガさん!全面に盾!」

「ぉ、おう!」


言われるがまま、ウラガは【大盾】と【土魔法】で全力の盾を展開した。ちょうど俺達が地面に倒れていたので、【大盾】でふたをするように展開する。


すると今度は天井や横の壁から、大量の岩の弾丸が高速で発射された。形はちょっと大きめのネジの様だが、先端がとがっており、さらに回転が加わっている。まるでマシンガンが全方向から乱射された様な威力と光景だった。


幸い強化されたウラガの盾は、その攻撃に耐えている。一方のモノリスは、その罠の弾丸で大半の分身が砕け散ってしまっている。そして本体を、残りの分身で守っている。


そしてやっとの事、岩のマシンガンは終わりを告げた。実際は1分程の短い時間だったが、5分以上に感じられるほど怖かった。


これで終わりかと思った俺は立ち上がって、モノリスへと止めを刺そうと“水の一振り”を構えた。今なら塊になったモノリスの心臓がどこにあるのか、だいたいわかる。


そして俺が【ステップ】で近づこうとした瞬間に、グラスに服を掴まれた。


「どうした?まだ何かあるのか?」


俺はモノリスに視線を固定したまま、グラスに聞いてみた。すると、いきなり地面が波打ったかと思うと、前世であったような動く床へと変化した。


「走れ!」


俺がそう言う前に、二人とも立ち上がって走り出した。


「まだ来ます!後ろの道が潰れてきてます!」

「「はぁ??」」


ウラガと俺は、グラスの言葉の意味が分からず、後ろの道を振り返ってみると、先程まで道だったところが、床や天井、壁が中心に集まる様にして収束していたのだ。それがどんどん俺達へと迫ってくる。イメージとしては、チューブのワサビを最後に絞るために、ギューっとする感じだろう。


「あんなの圧死するぞ!」


ウラガがそんな事を叫ぶが、見ればわかる。敵であるモノリスですら、逃げようと、もう一方の道の端っこへと飛んで行っている。俺達は地面が収束する方へと流れているので、なかなか進めない。


「くそ!面倒だが【空間魔法】で連続転移する!」


まだ出口まで50m以上あるのだが、俺は土ナイフを先行させて10mおきに配置する。


「行くぞ!」


俺がそう言う前に、ウラガとグラスは俺の身体に触れており、準備万端だった。


俺は【空間魔法】を連続で使用していく。先に行ったモノリスは、既に他の道が接触した瞬間に、移動を完了している。なので、もこの道には俺達しかいなかった。そして、ようやく俺達も、次の道への距離が10mを切った。


「とりあえず、次に接触する道へと移動する。十字路だったら、また直ぐに移動するから!」

「任せる!」


そして待つ事5秒で、次の道と繋がった。俺は土ナイフを投げつけて、道を渡ったところで直ぐに【空間魔法】で転移した。


最後に俺は振り返って現状を確認してみるが、既に収束点は20m前まで迫っていたのだ。普通の人間ならまず逃げられなかっただろう。


そして【空間魔法】で転移した先は、普通の一本道だった。今度は蝙蝠なので、罠を作動させる確率は低い。だが、一刻も早く休みたかった俺達は、グラスに【火魔法】の許可を出した。


「行きます!」


グラスも休みたかったようで、それまでより、より力を込めた火炎を吹き出して、蝙蝠たちを一瞬で倒してしまった。


「グラス!罠は?」

「・・・ありません!」


一瞬【危険予知】に集中したグラスから、罠が無い事を確認した。その言葉を聞いた俺達は、やっとの事一息つくように、そのまま地面へとへたり込んだ。


「罠、めてたよ。」


グラスもウラガも、緊張の糸が切れたようで、少し放心状態になっている。だが、一応、ウラガには【土魔法】で壁を作ってもらって、敵が来ないようにしてもらった。


それから10分程だが、俺達は水を飲んだり、グラスをたたえたりして、危機を乗り越えた喜びを分かち合った。


罠を中心に書いてみました。以前にも罠が出てきたので、今まで書かなかったのですが、30階も終盤なのでせっかくだと思い、罠が連続で発生してくる感じになりました。

テル君は、その時その時を精一杯やっていますね。それができる人間ってのは、凄いと思います。そしてウラガ君が成長しました。これからもガンバレー。

次回は、地下30階以下の話の予定。


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