ホンマにどこやねん。ここ。
プロローグ的なものです。
「今日も頑張ってお仕事探しだ!」
自分で言っていて悲しくなってくるが、喝を入れるのだ。朝はゆっくり起きて、朝食のパンをしっかり食べて、小奇麗な他所行きの服を選んで、鏡の前で身支度の確認をしている。
朝ゆっくりできるって、幸せだよね。
俺こと如月 輝は現在、就職活動中である。奈良県から飛び出し、地方の大学院(一応国立)を卒業した後、関西にある化粧品会社に入社した。
新設の部署で、先輩と二人っきりで一年間研究を続けて、やっと仕事にも自信がついてきた矢先だった。先輩が急遽実家に帰る事になり、部署には俺一人。当然仕事が回るはずもなく、部署は凍結。会社からは、いらない奴宣言をされてカチンときたため、とっとと辞めた。それから早くも半年を過ぎようとしていた。
会社を一年で辞めた事が悪いのか、なかなか内定がもらえず、アルバイトと貯金で食いつなぐ日々だ。もういっその事、公務員を目指そうかとも思いながら、ハローワークへと出かけるのだ。
「あぁ。これ死ぬやつや。」
ハローワークへ行くために、駅の方へと歩いていると、飛んで行った帽子を追いかける子供を見かけた。子供は防止に夢中で、トラックの前に飛び出していったのだ。俺はというと、無意識に身体が動ていて、気付いたらトラックへと飛び出した子供を突き飛ばしていた。
目の前に迫るトラックが、スローモーションで見える中、死を覚悟して目を閉じた。
直後にすさまじい衝撃が身体を襲った。
「どこやねん。ここ。」
あたりを見渡すと、広い平原と小高い丘。そして遠くには森。左右には幅3m程の道が延々と続いていた。そこを心地よい風が吹き抜ける。
うん。気持ちいい。空気がおいしい。
トラックのせいで、関西から北海道にでも飛ばされたかな?と思わせるような、雄大な自然が広がっていた。
うん。そんなこと、ないない。
バカな考えを自分で否定しながらも、同じような事をもう一度呟いていた。
「ホンマにどこやねん。ここ。」
もちろん誰も答えてくれない。俺は必死になって頭を動かすが、答えは見つからなかった。