厄日
三月第一月曜日、如月町の空は快晴なのだが俺の気分は少しも晴れやかではなかった。
月曜日だから………ではない。
会社へ到着すると駐輪場に頭部だけ潰れたネズミの死体が散乱していたからだ。
先々週から毎週月曜日には何かしら嫌がらせをされている。
正直、気が滅入る。
「面倒臭い」
自然とため息が漏れる。
俺は渋々掃除用具を取りに行った。
朝から、中々にグロッキーな体験をした。小動物とはいえ、死体の処理は精神にくるものがある。
死体を適当に花壇に埋葬し黙祷していたら背後より馬鹿が話しかけて来た。
「ふっふっふっふ。今日も会ったな華道よ!ここであったが運の尽きだ!覚悟ぉぉぉぉぉ!」
(ちっ、うるせえなぁ。ちったぁ気を使えよな)
振り返ると、女性物のビジネススーツを着た女が片足立ちで両手を翼のように広げながら突撃して来た。
俺の幼馴染、元 岬がそこに居た。
器用にも片足のみで、跳ねながら迫ってくる。
「うぜえ」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?泥の塊が飛んで来たぁ!?」
片足なのに、全力で背面反りを行い回避した。
無駄に器用だ。
「ほれ、追加だ」
「みぎゅぅぅぅぅぅ!?」
顔面に当ててやった。
ざまぁねぇな。
岬は泥が口に入ったのか咳き込んでいる。
「先行ってるから」
一言告げてこの場を去る。
背中に恨みがましい視線を感じるが、無視無視。
駐車場を出て会社の中に入ると、人が溢れていた。
広くは無いフロントに上長から若手社員までいて、皆一様に焦っている。
「何かが貼ってあるな」
(人が邪魔で見えねえな、押し通るか)
ある程度進むと見えるようになってきた。そこに書かれていた事とは―
『株式会社スコッチゲームは社長の横領により倒産しました。よって、社員の皆様は今からニートです。ドンマイ。気を強く持って生きましょう』
間違いなく今日は厄日だ。
(見なかったことにしてぇ)