終日
拝見 華道家の皆々様
桜がその役目を終えて淡々散っていくこの頃、皆々様は息災だと思われます。
愚息の俺は現在絶賛無職です。
事の始まりは前の会社が倒産したことから始まります。まぁ、こんな事もあろうかと俺は密かに貯金していたのですが、何故かその貯金が微塵もないのです。そこで一つお聞きしたいのですが、姉さん『借金返済』はどうやってしたんですか?
姉さん?事と次第によってはお前人生を終わらせるからな。
「むぅ、俊哉の遺言が………これか。あいつらしい最後だ」
亡骸を前に発言したのは、『今、火葬されている少年』の父、華道 敷だ。
片手には赤茶色に変色した一通の手紙が握られている。
俊哉が亡くなる直前に握り締めていた手紙だ。
「俊哉、貴様はどこまでも狡猾よまさか死を直前にしてなお仇を返す事に執着するとは」
遺言の余りの下らなさと執着心に、呆れと感心が混ざり合う。
「美香ぁ!」
美香は名前を呼ばれた途端に葬儀場の出口に走り始めた。
あと一歩で出口というところで敷に襟首を掴まれ持ち上げられる。
「御免なさい、お父様私急な用事を思い出したので離して頂けませんか?」
美香は猫撫で声で許しを乞う。
この少女普段はちゃらんぽらんな発言と行動で華道家の恥晒しとまで言われているが、見た目は悪く無いので口八丁で何とかなってしまう事が多い。
だが残念な事に少女の父には余り効果は無い。
「駄目だ、此方のケジメつけてからその用事に行け」
敷の顳顬に血管が浮き出る。
華道家の家族間のいざこざのケジメの取り方は決まっている。
「真紀!『奥の間』を使う、後の事は頼んだ」
ケジメ―――素手での殴り合いの事を指す。
美香は絶望した表情で母である真紀に助けが無いのかと視線で問う。
母は首を静かに横に振った。
「いやぁ!あそこには行きたく無いぃぃ!!」
美香は我武者羅に動くも拘束は解けない。
敷は美香を『奥の間』へ連行した。
美香の声が虚しくも葬儀場に響き渡る。
それが華道家の日常であり、葬式独特な雰囲気はもはや無い。
自分が火葬されている間のやり取りを、俊哉は上空より眺めていた。
感覚としてはゲームで使われる三人称視点の位置だが、俊哉自身現状を上手く把握出来ないでいた。
「記憶が曖昧だ、俺は何故・何時・何処で死んだんだ」
空間に浮遊したまま俊哉は頭を抱える。
くるくるとその場で旋回していたが、思考は同道巡りするだけで有益な情報は思い出せない。
俊哉は記憶を辿る事にした、思い出せないなら覚えている所から巡っていけば自身の死の要因が分かると考えたからだ。
先程の手紙で思い出す事と言えばやはりあの厄日の事だろう。
会社の倒産から始るあの一日の事を思い出そう。
編集前の作品は誰も覚えられていないのをいい事に大部分を変更してます。
更新から7年放置して偶々見つけてしまったこの小説を何とか終わらるように精進します。