第一章 一日千秋(7)その1
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わ、私、ついに聞いちゃいました!こんな私でも、気になることの核心へ話を進めることができちゃいましたよ!我ながらすごいですね!
「…いいですよ。そしたら、これからしっかり腰を据えて話したいので、とりあえず服を着ないと風邪を引くと思います」
私はグミちゃんにそんな返答を貰ってほっとしたのと同時に、今自分がタオル一枚という風邪をひきそうな格好だということに気がつきました。私ったら、こんな時期に自殺行為ですね!てへっ☆
…少しふざけすぎました。パジャマ着てきました。
なんだか、少し気分が高揚しているようです。グミちゃんが、何者かなのか、とてもすごく気になって仕方がなかったんです。昨夜はグミちゃんが疲れていただろうし、今朝も聞きそびれましたし。
「あ、グミちゃん、ついでにお茶淹れてきたよ。はい」
こういうときこそ、熱い緑茶でも飲んで落ち着くべきなんです。私は、ちゃぶ台の前に座っているグミちゃんの目の前にコトっと湯呑を置きました。
「…ありがとう、ございます」
グミちゃんは、さっきからずっと黙っています。私はちゃぶ台を挟み、彼女の向かい側に腰をおろしました。
「…えっと、まず、グミちゃんが来た世界…?異世界だっけ?タイムスリップ…?…そんなのから、話してほしいな?」
こう見えて、一応私は年上です。今は、話を上手く誘導してあげるべきだと思ったのです。
というか、異世界とかタイムスリップってなんでしょうか?まさか、グミちゃんはファンタジーな世界から来たのでしょうか?変身とかして、かわいいコスチュームで魔法でも使うのでしょうか?月に変わってお仕置き的なアレもするのでしょうか?空も、もしかしたら飛ぶのでしょうか?大きな杖から破壊光線的なアレを出したりできるのでしょうか?悪者と戦って、ふ、服が破けたりするのでしょうか?!はたまた、希望を抱いて契約して絶望してしまうのでしょうか?え、もしかして私を契約的なのに巻き込もうとしている??
…と、私が3秒ぐらいでそんな妄想…もとい、空想を繰り広げていたときです。グミちゃんは、なにかを決意したように、そっと口を開きました。
「私は、…私は。西暦2036年からきました」
……………………………????
訳がわからないよです。ファンタジーを予測していた私は、今思考を停止させていました。そんな口をぽかんと半開きにしている私をよそに、グミちゃんは語り続けます。
「この世界でも、一般的に西暦を使うみたいですよね。この情報に関しては、さきほど頂いた、青い牛乳の瓶の看板を掲げている物品店のようなところに置いてあった、世界共通言語…もとい、この世界で言う、“English”で書かれた書物で得ました。この国の言葉…もとい、“Japanese“で書かれていた書物は、私の世界で使われていた文字とは違って、読むことができませんでした。ちなみに、今は西暦2013年で間違いないですよね」
世界共通言語?はあ?英語のことですか???さっきの言葉から意味を推測すると、もしかしてコンビニで英字新聞がっつり立ち読みしたんですか?????なんですか、そのハイパー読解力は!!!!!あと発音めっちゃいいですね!!!私、英語は得意なほうですけど、英字新聞なんてすらすら読めませんし英語の発音もめちゃくちゃですよ???!!あ、この世界(?)日本語は読めないんですね、はい。
「とりあえず、私はこの世界では、この国の言葉は話せても、読むことはできません。えっと、話を戻しますね。この世界で言う、“English”とは、私たちの世界…もとい、私のいた世界線では、いわゆる公用語のようなものです。ラジオ放送は、この言葉で行われます。あ、世界線について説明しなければいけないですね。少し、図を書いて説明します」
すでに混乱していた私は、ちゃぶ台の上になぜか用意してあったチラシの裏紙にボールペンで筆を走らせているグミちゃんを口を半開きにして見守るしかありませんでした。