表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
飛猫~イフ~  作者: 秋華(秋山 華道)
7/39

同棲?ミッション失敗w

豊は、別に全ての話を信じたわけでは無かった。

ただ、そこにある現実を含め、とにかくミケネコが可愛かったから、とりあえず協力しようと思っただけ。

可愛い女の子は正義、萌えは正義、それは生きとし生ける物全てに共通する絶対的真理だ。

動物の赤ちゃんの多くが可愛いく感じられるのは、正にそういう事。

豊は柄にもなく、守ってあげなければならないと思ったのかもしれない。

とにかく、共に人探しをする為に、二人の同棲、いや同居、いや、ミケネコの居候する共同生活が始まった。


豊はいつものように、7時に起きた。

どうも目覚めが悪い。

それはそうだ。

硬いフローリングで寝ていたわけだから。

まさかミケネコと一緒に寝るわけにもいかない。

ベッドを見ると、ミケネコが気持ち良さそうに眠っている。

豊は沸き立つエナジーを抑えつつ、ミケネコを眺めた。

それはもうとても可愛い顔だ。

いや、豊はそんな事を考えているわけではない。

この子が本当に猫なのか、一夜明けるとやはり信じられなくなっていた。

昨日の事が夢のように感じた。

だいたいタイムトラベルだとか、世界線の移動だとか、あるはずもないと思った。

豊は、目の前にミケネコがいるにも関わらず、昨日の事は夢だと否定した。

「夢だったんだよ。この子はきっと家出少女かなんかだよ。」

豊がそう言葉にした途端、ミケネコは猫の姿へと戻った。

と言うか、小さくなって布団の中におさまって見えなくなった。

「え!やっぱり猫が人間になったんだーー!!」

豊は絶叫した。

すると再び、ミケネコは人間の姿へと変化した。

当然、着ていた体操服は、再び脱げた状態になっていた。

豊にはもちろん、やましい気持ちがわき上がってきていたが、特に布団をめくったりする事はなく、夢ではなかった現実を受け入れる事で精いっぱいだった。

さて、豊は朝からドタバタしていた。

再び服を着てもらったり、朝から探しに行こうとせがまれたり、学校につれて行けと言われたり、学校の支度をしたりで大忙しだ。

助かったのは、ミケネコに一応、服を着るという概念やトイレなど、人間として生きる知識が少なからずあった事だ。

話によれば、世界線を移動していた1年間、人間としての生活を教えられたり、人間世界での生活を見てきていたようだ。

世界線の移動を始めた頃は、いったいどんな感じだったのか、想像すると恐ろしい、と豊は思った。

「じゃあ、僕は学校に行くから、僕が帰ってくるまで、大人しくしてるんだよ。ミケ・・・」

部屋を出ようとした時、豊はなんとなく、ミケネコと呼ぶのをためらった。

いつまでも、こんな名前じゃないような名前で呼ぶのも変だと思ったからだ。

「君はさ、僕になんて呼んで欲しい?」

豊は少し照れながら尋ねた。

どうやら改まって顔を見ると、やはりまだまだ恥ずかしい気持ちがあった。

いや、顔を見ると、何度か見た裸を思い出してしまっていたのかもしれない。

とにかくポリポリと頬の辺りをかく、ベタな照れ方をしていた。

するとミケネコは元気よく言った。

「ネコ!なのさ!!」

ミケネコの顔は、満面の笑みだった。

それを見て、豊はもうどうでもいいやと思った。

でもネコだと人間の名前とは言いづらいので、適当に「音子」という漢字を与えてやった。


豊は、学校に来ていた。

そこで豊には、やらなければならない重要なミッションがあった。

まあ、こういう話の展開になれば困る事。

それは、音子の着る物をなんとかしなければならないって事だ。

一緒に人探しをするとなると、当然一緒に出歩く事になる。

それがずっと体操服ってわけにもいかないし、最悪服は男性用で良いとしても、下着はそうはいかない。

だからそれを買いに行かなければならないわけだが、男としては買いに行くのが恥ずかしい。

そこで、誰かに買ってきてもらえるよう頼もうってわけだ。

そう思っていたのだけれど、それもまた恥ずかしい行為である事に気がついた。

頼む相手は決まっている。

1年の時のクラスメイトで委員長だった、風谷菜乃だ。

「委員長キャラキター!」と、とりあえず言っておこう。

風谷菜乃とは、実はそれほど付き合いがあるわけではない。

他にまともに喋った事のある、女子の友達がいないから、消去法で仕方なくそうなった。

こんな時、毎日毎日勉強ばかりしていた自分が恨めしい、なんて豊が思ったかどうかは謎だが、とりあえず友達の大切さってのを感じていた。

豊の仲の良い友達なんて、1年の時のクラスメイト、佐藤三杯だけだ。

三杯に頼んでとか、一瞬思わなくも無かったが、逆に喜んで買いに行きそうだったので、頼むのはやめていた。

一応気になっていると思うので説明しておくと、この佐藤三杯って名前はギャグだ。

親がこの世に送り出した、一世一代のギャグだ。

佐藤家に三男として生まれた三杯には、親ももう、正直名前をつけるのが面倒になっていた。

そんな時、母親がコーヒーに、砂糖を三杯入れているのを見て、父親がひらめいたとの事だ。

おかげで誰とでも仲良くなれるバカに育ちましたとさ。

良かった良かった。

おっと話がそれてしまったが、豊は意を決して、風谷菜乃に話しかけた。

「あ、委員長!じゃなくて、風谷さん、ちょっとお願いが・・・」

豊を見る風谷さんは、ちょっと気が強そうだけど美形で「ツンデレキャラきたー!」と言っても過言ではない感じの女の子だった。

「あ、山下じゃん。どうしたの?」

菜乃の表情は、豊と話す前と後で、全く変化がなかった。

どうやら特に感情を表に出すタイプではなく、豊に特に興味もないといった感じだ。

要するに、友達だとも思われていないくらいの間柄に見えた。

まっ、そんな人に頼みごとをするわけで、しかもその頼みごとが頼みごとだけに、豊の緊張は増しに増していた。

「え、え、えと、パンティーと、ぶ、ぶ、ブラジャーを・・・」

「山下って、そんな奴だったんだ・・・」

豊の言葉に、菜乃はそれはそれはもう、冷たく凍るような眼で豊を見た。

(ヤバイ・・・)

豊がそう思って冷や汗を流していると、菜乃は自分のスカートを、ゆっくりとまくりあげ始めた。

呆れられたか、それとも軽蔑されたと思っていた豊にとって、その行動はあまりに意外だった。

心の中で葛藤が始まる。

相手が見せようとしているのだから、このまま見ていようと言う悪魔の言葉と、勘違いなのだから訂正してやめさせるべきだと言う天使の言葉が、脳内で争っていた。

勝負はあっさりついた。

豊には、それを見ているだけの欲望も度胸もなかった。

「いや、そうじゃなくて、違うんだよ!」

豊は凄く顔を真っ赤にしていた。

その中に、否定した事への後悔というものは一切なかった。

「いや、冗談だから。」

菜乃はどうやら、豊をからかっていただけのようだった。

「で、パンティーとブラジャーがどうしたの?」

菜乃は特に、恥ずかしいとか動揺は微塵もなく、あっさりと言ってのけた。

それでようやく落ち着いてきたのか、豊はギリギリ話す事ができた。

「えっと、親戚の子が家に来てるんだけど、着る物がなくて困ってて、ちょっと出かけられないから、買ってきてほしいんだけど。」

豊は何とか伝えきる事ができてホッとした。

しかし、菜乃の言葉に再び動揺せざるを得なくなった。

「着る物無いのに、どうやって山下んとこに来たんだ?」

豊は必死に言い訳を考えた。

何か、これは納得と思える設定はないものだろうかと。

だが、答えを出す前に、菜乃が謝ってきた。

「悪い悪い。そんな事を私が聞くものでも無かったな。で、買ってきてやるが、サイズは?」

とりあえず助かったと思った豊だったが、よく考えればサイズなんて知らない。

豊は、菜乃の胸をマジマジと見つめた。

そして今度は後ろに回り、お尻のあたりをじっくり見て・・・

「風谷さんより、胸は大きめ、お尻は小さめかな?」

そう言うと、菜乃は「じゃあな!」と一言残して、その場を去って行った。

豊のミッションは、失敗に終わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ