ご都合主義?規定路線ですw
豊とミケネコの話は、結局日付が変わるまで続いた。
だからと言って、その長い時間の中で、親が帰ってきて「誰なのその子?!彼女?」なんて言われる事は無かった。
豊は実は、都合よく独り暮らしだった。
こういう話は、実にご都合主義だ。
大概、一人暮らしだったり、両親が共働きで外国に行っていたりする。
この話も、その規定路線から外れる事はなかった。
豊の家は、別に裕福ってわけではないが、それほどお金に困る家庭でもない。
そこで豊は、高校生活を田舎でおくりたいと、両親にお願いした。
理由は、遊び場がそこいらじゅうにある東京都心部より、田舎の学校で学ぶ方が、勉強に集中できると考えたからだ。
両親も、勉強の為なら仕方がないと、豊の望みをかなえてくれた。
まっ、そんなわけで、長々と話しこむ事ができたのだ。
話の内容をまとめると以下のようになる。
ミケネコは、時間軸の一番外側の世界線の中心人物だった。
人ではなかったのでこの表現はおかしいが、全て人として話をさせていただく事にする。
その世界は、他の世界線からの干渉がほとんどなく、中心人物が願えば、そして信じれば、現実となりやすい世界。
ミケネコは元々は猫だが、いつか人間になれると信じていた。
そんなある日、道路に飛びだしたところに、自動車が走ってきた。
ミケネコは願った。
「助けて」と。
そこに現れたのが、一人の男性だった。
その男性はミケネコを抱え、そのまま自動車にはねられた。
内臓は破裂し、血が沢山でた。
「ミケネコ・・・大丈夫か?」
そういう男性の、ミケネコを見る目は穏やかだった。
そして間もなく、死んだ。
ミケネコは悲しんだ。
私を助けて死んでいくなんて。
この人を助けられないだろうか?
どうしたらいいだろう?
早く人間になれば、助けられるかも知れない。
きっとそうだ。
人間は賢い。
きっと助けられる。
そう思った時、ミケネコは人間になった。
とっても賢い、この男性を助けられる人間になった。
ただし、賢いってのは、ミケネコ基準だ。
本当は、男性を助ける事のできる能力を得たにすぎず、ただのバカな人間なのだが、ミケネコは理解していない。
ミケネコは、人間になった時に得た、本能とも言えるその能力で、過去へ、そして時間軸の中心へ向けて、世界線を飛んだ。
最初の飛躍で、時は少し、世界線の移動は、中心方向へ半分ほども移動していた。
その世界の中心人物であろう人に、ミケネコは出会った。
どうやらミケネコの能力は、人間になれる事、時間と世界線の移動ができる事、そしてその移動の際、最初にその世界線の中心人物に会える能力であった。
最初に移動した世界線の住人は、どういうわけか、人間になったミケネコにそっくり、いや、完全に同一と言っていい容姿をしていた。
ただ、その存在はとても希薄で、今にも消えそうだった。
その人は、ミケネコが此処にくる事を、予知していたと言う。
「あなたが此処に来る事は分かっていましたぁ。そして、私はあなたに伝えなければならない事がありますぅ。」
そう言って、ミケネコはその人に、色々と教えてもらう事になった。
ミケネコが今後、やらなければならない事を。
時間軸の中心の世界線へ行って、その世界の中心人物に会って何かしてもらう事は、本能によって既に認知されていた。
ここまでは、ミケネコが男性を救える能力を得る思いの、範囲内という事のようだ。
でも、何をしてもらえばいいのかは、分かっていなかった。
それを、この人が教えてくれた。
その中心人物と共に、助けてくれた男性を探しだし、会う事。
後は、信じる気持が強ければ、それは叶えられると。
ただし、もし信じる気持が足りなければ、世界線の移動で迷子になる可能性もあるし、何処かで死ぬ事もあるし、豊が協力してくれない事もある。
会うだけで救える理由、それは単純だ。
全ての世界で死ぬ人というのは、どこの世界でも中心人物に必要とされなくなった人、中心人物に影響を与える事がなくなった人である場合が多い。
この男性もまた、そういう人だったそうだ。
だから、その世界の中心人物が会うだけでも、中心人物に影響を与えた事になる。
それで、男性が死ぬ事を良しとしない力が働く。
その会う人が、時間軸の中心世界の豊であれば、全ての世界線に大きな力をもって影響を及ぼす事ができる。
人が一人会うだけで、そんな些細な事だけで「人の命が助けられるのか?」とも思うだろうが、些細な事で人の命ってのは左右されるって事だ。
他にも、時間軸や世界線の事も詳しく教えてもらった。
そして一通り話を聞いた後、ミケネコはその世界の、自分にそっくりな人と別れ、再び時間を過去へと、世界線の移動を開始した。
時間軸の中心世界への移動は、いくつもの世界線を梯子していく。
最初は楽に移動できたが、徐々に移動は難しくなり、人間の姿を維持する力も薄れていった。
中心に向かうにつれ、そこの中心人物が、猫が人間になる事を信じない、すなわち猫が人間になる事を良しとしない力が強くなるからだ。
だけどなんとか、1年の期間を費やし、時をさかのぼり、時間軸の中心世界への到達に成功した。
だが、この世界に到着した時、空の真ん中だった。
真ん中の世界に行けば行くほど、別の世界線からの異分子に対して、拒絶する力が強まる。
それも中心人物が、異世界からの訪問者を信じなくなってくるからだ。
だから空の真ん中と言う、到底生きてはいられない空間に放り出された。
しかし、それを偶々豊が見た。
豊にとって、空に猫がいるはずがない。
豊は鳥だと思った。
そう思いこんだ。
ある意味そう願ったとも言える。
不思議は豊の望むものではなかったから。
それが逆に、羽を生やす力となった。
豊がミケネコを助ける事になったが、実はこれも、もしかしたらミケネコの願いの強さが起こしたものかもしれない。
ミケネコは、この世界へ出発する前、自分は必ず中心世界で中心人物にあって、必ずなんとかなると信じて疑わなかったから。
その力が、豊に豊とは思えない行動をさせ、豊に協力してもらえるよう全てを導いたと言える。
豊好みの凄く可愛い女の子の姿になったのも、きっとその力のおかげだろう。
ただし、此処までは願いどおりであったわけだが、此処から先は、会ってみるまで想像もできなかったわけで、どうなるかわからないって事だ。
目的は、ミケネコを助けた男性をこの世界線で探し出し、1年後ミケネコを助けるまでに、豊が会う事。
これでおそらく、この男性の命は救われる。
そう豊は理解した。
こうして、豊とミケネコの人探しが始まった。




