第4話 例外が付与された日
朝の委員会室は静かだった。
出席者は、私を含めて三人。
端末を起動すると、通知が一件。
自動判定ではない。
例の未申告者のデータだった。
自己申告欄は、四日目に入っても空白のまま。
それ以外は、相変わらず整っている。
「今日、付ける?」
委員長が画面を共有しながら言った。
例外記録の欄は、まだ未選択。
規定上は、今日から「付与可能」。
必須ではない。
私は、データを一通り確認する。
数値は安定している。
変化もない。
それでも、四日目という数字が、少しだけ重い。
「付けた方が、後で楽ですよね」
誰かが言った。
否定も、賛成も含まない言葉。
例外記録は、警告ではない。
ただのラベルだ。
私は、頷いた。
それ以上の理由はなかった。
委員長が操作する。
例外記録:付与。
画面の表示が一段、増えただけだった。
午前中、その本人が再び委員会室を訪れた。
今日は用件があるらしい。
「自己申告、忘れてました」
そう言って、端末を差し出す。
私は一瞬、画面を見る。
申告欄は空白のまま。
「今から書いても、いいですか?」
規定では、可能。
例外が付いた後でも、修正はできる。
「大丈夫です」
本人は、その場で数行を入力した。
内容は、特別なものではない。
授業、移動、少しの雑談。
何も起きていない一日。
送信完了。
端末に反映される。
自己申告欄は埋まった。
それでも、例外記録は消えない。
一度付与された例外は、履歴として残る。
本人は、それを知らない。
説明義務はない。
「ありがとうございました」
そう言って、帰っていく背中を見送る。
昼休み、委員長が言った。
「まあ、こういうこともある」
誰も反応しない。
正しい処理だった。
私は、自分の端末を見る。
自分の記録も、問題なく整っている。
自己申告欄に、昨日と同じ文を入力する。
──特に問題なし。
保存。
例外は付いていない。
ただ、あの画面の表示が、頭から離れなかった。
例外とは、
起きたことではなく、遅れたことに付く。
そして遅れは、
いつでも、誰にでも起こり得る。
それを、私は知っている。
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