第13話 何も書かれなかった日の記録
戻ってきたのは、月曜日だった。
朝の登校時間。
構内測位が、反応を再開した。
一覧に、名前が復活する。
空白だった列に、位置情報が流れ込む。
委員会室が、少しだけざわついた。
「戻った」
それだけの言葉だった。
教員が確認に向かい、
保護者にも連絡が入る。
処理は、段階を下げて進む。
所在不明 → 未登校 → 登校。
制度は、正確だ。
午前中、その生徒は何事もなかったように席に着いた。
怪我はない。
表情も、変わらない。
昼休み、委員会室に呼ばれた。
形式的な確認だ。
「体調は?」
「問題ありません」
「何か、ありましたか」
少し間があって、
生徒は首を振った。
「特に」
それ以上は、聞かれない。
聞く規定がない。
例外記録は、解除されない。
解除条件は、満たされていない。
だが、新しい印も付かない。
午後、自己申告の期限が近づく。
その生徒の欄は、まだ空白だ。
私は、自分の端末を開く。
今日も、入力する。
──特に問題なし。
送信。
放課後、廊下ですれ違った。
目が合う。
何か言うような気がして、
私は立ち止まった。
生徒は、何も言わずに通り過ぎた。
呼び止めなかった。
理由は、ない。
帰宅後、最終確認を行う。
自己申告。
その生徒の欄に、短い文が入っている。
──特に問題なし。
それだけだ。
委員会室の一覧は、すべて埋まった。
空白は、どこにもない。
事故も、失踪も、
すべて処理済みとして並んでいる。
私は、端末を閉じる。
世界は、事実を残したがる。
だから、記録する。
だが、
語られなかった理由だけは、
どこにも残らない。
それで、この制度は、完成している。
⸻
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
本作は、派手な結末や明確な答えを提示することよりも、
制度や記録の中で「語られなかったこと」「選ばれなかった反応」が
どのように残るのかを描くことを目的とした物語でした。
なお、本作の執筆にあたっては、
AI(ChatGPT)を補助的に使用しつつ、
構成・表現・最終的な文章の決定は作者自身が行っています。
AIの利用については、ChatGPTおよび「小説家になろう」の
利用規約・ガイドラインを確認し、
これらに反しない形で執筆・投稿しています。
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。




