第六話 バグたち
なんだこいつは?
俺は立ち上がって土煙を払うそいつに対してそんな事を考えた
『風殺』
風を操り対象を押しつぶす技
風といってもその威力は凄まじく、例えるなら象が体にのしかかっているようなものだった
掠ったのならまだわかる
ただ、その技は間違いなく奴に直撃した
だと言うのに…
???「さて…今際の際は楽しめたか?」
そいつは…そんな事を言いつつ、その顔は笑っていた
明らかにさっきまでと雰囲気が変わった
さっきまで死にかけだったやつが
余裕そうに立って笑っていたのだ
ヌイセマカ「お前は…誰だ?」
俺はそんなことを問う
???「ん?せっかく自己紹介をしてやったのにそのちっぽけな脳じゃもう忘れてしまったか?」
そう煽りながら奴は続ける
???「俺はマモだ。どこからどうみても…そうだろ?」
俺の本能が告げる
『こいつはやばい』
と…
ヌイセマカ『風断!!』
次の瞬間、俺は技を放っていた
“風断“は風を斬撃のようにして飛ばす
さっきの風殺よりも格段に殺傷能力の高い技だ
それだと言うのに…
???「…うむ。少し切れたか?」
見れば、腕に少し切り傷ができた程度だった
その攻撃もまた、やつに直撃した
ただ、奴のエネルギーは驚くべきごとに1万程度しか減っていなかった
やつは1万程度のエネルギーで風断をほぼ防ぎ切ったのだ
1万程度のエネルギーで風断をかすり傷程度で済ませられるわけがない
ヌイセマカ「お前…今…何をした!?」
能力…と言われた方がまだ納得だった
しかし…能力の使用痕跡がないためそんなわけもなく…
???「防漏でエネルギーを抑え、強化で肉体を強化しただけだが…はて、そんなに理解し難いことか?」
理解し難いことに…決まっている…
普通、風断を防ぐためには…最低でもエネルギーは80万程度いるだろう
それを…1万で防ぎ切ったのだ
しかも風断はエネルギー消費とクールタイムが激しい技だ
しばらく能力は使えないだろう
そんな中、奴は口を開く
???「来ないなら…こっちからいかしてもらうぞ?」
次の瞬間…
奴は俺の懐に潜り込み…
そいつは俺の胸をぶん殴った
これもまた…さっきまでのやつの威力とは違う…
俺はそのまま数十m吹っ飛ばされた
ヌイセマカ「グゥ…」
俺は思わず呻き声を上げる
どうしたらいい?どうしたらこの状況をひっくり返せる?
そんな事を考えていると突如として俺の体は吹っ飛ばされる前の地点に戻っていく
俺は困惑し、ふと体を見る
すると胸に鎖が伸びていた
俺はその鎖を引きちぎろうと試みる
しかし、その鎖はびくともしない
そして…その鎖は奴の拳から伸びていて…
俺は再度、ぶん殴られる
その拳は…壁のようなものだった
とどのつまり、俺は超高速で壁にぶつかったようなものだった
俺はその衝撃に耐えられずに…
俺の意識はなくなってしまった…
俺は全てが終わったあと、草むらから出る
その、伯爵の首元を掴んだマモのような生物を見て…
そいつに質問する
ジャスティア「お前は…なんだ?」
すると、そいつはこちらをゆっくり振り向き
その質問に答えを告げる
???「そんなの…わかっているだろう?」
と…
ジャスティア「いや?わからんな?お前の正体が何かなど」
そう言い返す
???「あくまでもシラを切るつもりか…つくづく鼻につく男だ…ただ…お前はこいつの命の恩人…故、攻撃するわけにもいかない…エネルギーも残り3万程度だしな」
そう言い終えるとそいつはその伯爵の男の頭部を拳で貫いた
ジャスティア「…おいおい、他人の体で人を殺すなよ…こいつが罪に囚われてしまうじゃねえか」
???「それは自分の弟子が人を殺したことに対する世間の目を気にしているのか?」
ジャスティア「世間の目?そんなもの…気にする必要がないと言うことを…同じ能力者ならわかっているだろ?」
???「はっはっはっ…そうだな」
俺は奴に近づき、奴の頭に触れた
そして…
???「どういうつもりだ?」
ジャスティア「いや何。ただ、お前と試しに戦ってみたくなっただけだ」
俺は奴のエネルギーを上限以上に回復した
???「20万…俺の持てる上限ギリギリのエネルギー量か…しかし…しかしだ。流石に回復してもらおうとお前に勝つのは苦しいどころか不可能だと思うのだが」
そんな事を言ってくる
俺でも流石に勝ち目のないような戦いはしたくない
なので俺は
ジャスティア「…10秒。10秒ハンデをやる。10秒の間、俺は防御以外の行動を一切しない」
と、ハンデをやることにした
???「10秒か…ふむ…」
次の瞬間、奴は…動き出した
???『錠前』
そいつは俺の胸に触れ、そう呟いた
そうして、そいつは俺から距離を取る
ジャスティア「あと5秒だが…他に何もしてこないのか?」
???「勝てると思ってないからな。ただ、“この状態“でお前はどれだけ戦えるか知りたい」
ジャスティア「驚いたな。てっきりもっと畳み掛けてくると思ってたわ」
そして…
ジャスティア「0」
俺とそいつは同時に地を蹴る
そいつは拳を繰り出してくる
ジャスティア「馬鹿正直に真正面から受けると思ってんのか?」
そう思いながら俺は能力を発動する…
はずだった
ジャスティア「…へぇ」
???「…ふっ」
次の瞬間、奴の拳が俺の腹に直撃する
ダメージを喰らい、俺は少し、後方に飛ばされてしまう
そして…なぜさっきの拳を喰らってしまったのか…
俺はすぐさま理解する
ジャスティア「ハハ…ハハハ…!!能力を封じたか!!こんな感覚…久しぶりだ!!」
???「普通ならば絶望する場面で笑うか…狂人か…いや、お前だからそうなのだろう?」
ジャスティア「あぁ、そうだ!俺は俺だからこそこの状況を笑い飛ばせる!」
そうして俺は拳を構え、一瞬で攻撃の間合いに入る
???「…!?」
俺は拳を前に突き出し…そう呟いた…
ジャスティア『空破』
直後、どこからともなく鎖が飛び出して俺の攻撃を防ごうとする
…が、俺はその鎖すらもぶち壊してやつに攻撃を喰らわせた
刹那、大きな打撃音…そして…
『パリン』という音が鳴った
ジャスティア「すげぇ反応速度だ。ちょっと軽減されたか?」
俺はそんなこと言う
それに対し、そいつは…
???「…チッ…バケモノが…」
そんな事を言うのだった
見れば、俺が攻撃した部分は抉られていた
そんな状態で奴は口を開く
???「神級エネルギー応用術…“空破“。ハハ…まさか本当に使えるやつがいるとはな…俺には原理などさっぱりわからぬ」
ジャスティア「原理はわかるだろ?原理は」
そんな事を言いながら俺はそいつに一歩ずつ近づきながら…
ジャスティア「治せ」
そう言ってみる
???「…ハッ…治せ?仮に俺が治さなかったらどうするつもりだったんだ?」
ジャスティア「そんときゃあ俺が治してやりますよ。ただ…できるだろ?」
次の瞬間、そいつは
???『還命』
そう呟いた
“還命“、エネルギーを使い、体の再生を一時的に早めるエネルギー消費の激しい上級エネルギー応用術。
熟練度が高ければ高いほど、再生速度が速くなったり、消費エネルギーを抑えられたりする
???「これとさっきまでのやつで節約に節約したと言うのに…俺は残り10万エネルギーだ…」
ジャスティア「10万あれば十分だろ」
そう言いながら俺は続ける
ジャスティア「第二ラウンドといこうか?」
今度はさっきと違い、いきなり地面を蹴ったりはしなかった
お互いがお互いの攻撃間合いに入る
そして…
ジャスティア「ふん!!」
???「ハッ!」
超至近距離での近接戦が始まった
手と手、足と足と
お互いに引けを取らない攻防を繰り広げる
ジャスティア「その程度のエネルギー量で俺と張り合えるんだ。自慢してもいい!!」
???「それはありがたいことか?その発言はただの傲慢の戯言にしか聞こえんぞ?」
次の瞬間、突如として、右手がうごかなくなった
見れば、地面から鎖で繋がれているではないか
俺はすぐさま、その鎖を引きちぎる
本当にすぐに引きちぎった
ただ…コンマ数秒…遅れてしまったのだろう
俺はその攻撃を左手にモロに喰らってしまった
『バキバキ!』とそんな音が鳴る
少しダメージをもらったがそんなのは気にしていない
ふと、そいつの顔を見上げる
すると、そいつは笑っていた
ジャスティア「…バレた?」
思わず、そんな質問を繰り出す
その問いにそいつは…
???「ずっと…ずっと不思議だったんだ。何故、左手を使わないのか。何故、左腕を使わないのか。でもなるほどな…納得した」
そいつは続ける
???「お前…隻腕か」
…と
ジャスティア「だったらどうする?煽るのか?」
???「何、そんな愚行はしないさ。ただ、左手を頑なに使わない。ならば、左手に何か秘密があるのではないか…と…そして、それは大当たりだ。これはお前の明確な弱点だろう。相手の弱みを知ることは戦場では最も大切。そうだろ?」
俺はぶち壊された義手を思わず、右手で撫でる
???「何か…あったのか?昔に?」
ジャスティア「心配してくれているのか?優しいな?」
???「心配?ハハ…心配などしていない。ただ、お前と言う強者を知りたいだけだ」
ジャスティア「あいにく、お前に言う必要性は…ない」
俺は続ける
ジャスティア「そろそろ…終わらせようか?」
次の瞬間、俺は先ほどとは比べ物にならないスピードで走り出す
そしてやつを殴る
一様、マモの肉体なので多少は手加減しながら
どうやら、やつは殴られてから気付いた様子だ
手加減といっても数十メートル吹っ飛ばせるくらいには力を込めた攻撃だ
そして…俺はその吹っ飛ばされた方向に先回りして
さらに攻撃を浴びせる
そんなことを繰り返し続ける
ジャスティア「なぁ?なんで俺の左腕がなくなる運命だったか…わかるか?」
俺は攻撃しながらそんな問いを奴に言う
???「…ぐっ!!わかるわけ…ないだろう!!」
ジャスティア「それはな…俺が正義であるためだ」
俺は連撃で弱ったそいつの頭をつかみ、地面に叩きつける
ジャスティア「これは世界が俺に科したハンデなんだよ。だってさ…」
俺は続ける
ジャスティア「強すぎる力があれば世界はつまらなくなる。そうしたら、俺が世界征服でもなんでもするかもしれないだろ?」
???「はっ!!それは傲慢な自惚れだ。結局のところその左腕はお前が弱いからおった傷だ。それを世界を擬人化し、自らにだけハンデを科したと?そんなわけがないだろう?」
頭を押さえつけられながらそんなことを言うそいつ
ジャスティア「そんなわけあるんだよ。仮に両腕が今に至るまであれば…もしかしたら魔王ギルティマ…そいつを倒すこともいとも簡単だったかもしれないなぁ」
???「仮にお前に両腕があれば…なんて…それは現実から目を向ける哀れな弱者のないものねだりに過ぎない…それに…たとえ両腕があったとしても…お前じゃギルティマには勝てない」
ジャスティア「現実から目を背ける哀れな弱者…ねぇ…まぁ、事実、この左腕を失ってしまったのは俺の過ちだ。だから、そんな理想像はもう掲げていない。あくまで…もしもの話だ。さて、俺の話は終わった。次にお前の話」
その発言と同時に俺は敵意を抑える
そして…再度その質問をする
ジャスティア「お前は…なんだ?」
???「俺が…何か…か…」
すると俺がもう戦う気がないことを悟ったのか奴も殺意を無くした
俺はそれに気付き、手を離す
そして、そいつは大の字で仰向けになって言った
???「ずっと…考えていたことだ…自信がなんなのか…俺は本来ならば“存在してはいけない身分“。だと言うのに何故、こいつの体でいまだに生きながらえているのか。仮に神がいるのならば…何を企んでいるのだろうか」
ジャスティア「存在してはいけない身分?どう言うことだ?」
???「その話は…残念ながら話せないな…それにそろそろ時間だ」
見れば、やつはの目は細くなっていた
時間というのは多分、体に憑依できる時間がそろそろ終わりに近い…と言うことだろう
そんな中で最後にやつは口を開いた
バグ「俺は“バグ“だ。世界に存在してはいけない存在…だから“バグ“。そう呼んでくれ。かっこいいだろう?」
そして、そのまま、バグは目を閉じた
こんちゃーレイジネスですよ。
今回はまぁ、結構熱い回だったんじゃないでしょうか!!
俺の物語展開が下手くそなことは置いておいて…
今回は後々回収するための伏線をたんまりしこましておきました
いやぁ、これを回収する日が楽しみですねぇ!(俺が飽きなければの話)
それについに出てきました!!神級エネルギー応用術“空破“!!
これだけ詳細が書かれていないのはもちろん意図的です
後々、空破の説明も出てくると思うので
是非!次の回もお楽しみください!!




