不思議な本のきらめき
8歳のエドは、毎週土曜日の朝、町の古い図書館に行くのを楽しみにしていた。木の床がきしむ音と本の物語でまるで魔法の国みたい。
いつものように本棚の奥をのぞいていると
埃まみれの不思議な本が目に入った。
背表紙はなく、古い紙が紐で結ばれている。
「これ、何かな?」エドはそっと手に取った。
ページをめくると、そこにはエドの名前が
生まれた日のこと、初めての自転車、友達とケーキを分け合った日……全部、エドの記憶と同じ。
「え、僕の話!?」さらにめくると、今日のことまで書いてある。『エドは図書館で本を見つけ、ページをめくる。』心臓がドキドキした。
次のページには、『図書館を出ると、車が水たまりを跳ねて、エドの服をびしょ濡れにする。』
そんな事ってと思いながらエドは本を抱えて、閉館の鐘が鳴るのを待った。
外に出ると、本当に車が水しぶきを上げ、エドの服が濡れた。「うわっ! 本当になっちゃった……」家に帰って本を開くと、次のページに一行。『明日の朝、エドは寝坊して学校に遅刻する。』
その夜、エドは興奮で眠れず、案の定寝坊。お母さんの「早く!」という声に飛び起きて学校へ。やっぱり遅刻で、先生に叱られた。
「この本、僕の未来を知ってるの?」
学校から帰って本を見ると、次のページは真っ白。
「未来が……ない?」
何時間待っても文字が出ない。
ふと、エドは思った。
未来が書かれてるなら??
『もし自分で書いたら……どうなるかな?」
エドの想像力はワクワク感でいっぱいになった。
試しにペンで、
『明日の朝ごはんは、チョコパンとホットケーキがいっぱい!』と書いた。
すると、急に眠くなってベッドに倒れ込む。
朝、キッチンには本当に大好きな朝ごはんが山盛り!「わあ、叶った! この本、僕の願いを叶えてくれるんだ!』
それからエドは、毎日本に書いた。
『テストでいい点取る』
『お友達と遊べる』。
全部叶って、毎日が楽しくなった。でも、ページが少なくなってきた。めくると、白紙のはずのページに、暗い文字が浮かぶ。
『エドは転んでケガをし、おもちゃをなくす。悪い日が続く。』
本当に転んで膝を痛め、お気に入りのおもちゃがなくなった。
『何だか怖いよ……もう書きたくない!」
エドは本を閉じて、図書館に返しに行こうと決めた。
帰り道で本を落としてしまい、ページが開く。そこには恐ろしい言葉。
『エドは雷に打たれて……』
「いやだ……死にたくないよ……!」
エドは涙をこぼしながら、本を抱えて必死に走った。
もう図書館まであと少し——
雷が鳴り、空が真っ暗になって来た!?
図書館に急いで入り、本があった棚へ行こうとすると窓がバキッと割れて、ものすごい雨が中へ吹き込んできた!
エドはびしょ濡れになりながら、なんとか本を抱えて走る!
本を棚に戻そうとすると
黒い雫が本からぽとりと落ちた…
そーっと本を開くと怖い文字が消えていく……
突然、空が晴れ、
夕陽がきらきら光った。
本のページは全部白紙に……
エドは思った。
「いいことばかりじゃなく、悪いこともある。でも、未来は僕が自分で、きらきらさせるんだ。」
それからエドは、本に頼らず、毎日を一生懸命に過ごした。転んでも立ち上がり、友達と笑い合った。図書館の窓から見える空は、いつもより明るくきらめいていた。
未来は、誰かの手で書かれたものじゃない。自分の小さな手で、描いていくものだ。
(完)




