ある日の目覚め
初めての投稿となります。至らぬ点ばかりかと思いますがご容赦ください。これからマイペースに投稿していこうと思います。
眼が開いた。薄暗い天井で視界が埋まる。細かく刻まれた模様。入居したときからある傷。眼を閉じる前と同じだ。良かった。
耳を澄ませると、微かに何か聞こえる。鳥だ。毎日聴いているのに、未だに名前も知らなくてごめんよ。君のことは、今日こそ調べるから。おや、何か別の音も聴こえる。車が近くの道路を通る音。これは、小さめの車かな。真っ直ぐ進んで……あ、曲がった。車の走る音が消えていく。頭の中のモヤが晴れてくる。
身体にほんの少しだけ力を入れてみる。僕の身体は動かない。ではもうほんの少し入れてみよう。おお、これはこれは。危ないところだった。では更にもう少し。とうとう動いてしまった。仕方がないのでそのままウゴウゴして、シーツと身体の擦れる感触を味わう。更に両手で掛け布団を顔に押し付け、柔軟剤の香りを肺に取り込んだ。僕はかなり僕になってきた。
突然、頭の中にニュースが流れる。これは、脳の仕業だ。頼んでもいないのに、こいつは勝手に昨日を描く。昨日の出来事の要点を一通り述べたら、次は今日の天気予報。今日も雷雨のようだ。傘を差しても風ですぐ壊れるし、危ないから家に居ろってさ。そうかもね。そうなんだろうね。だって最近よく当たるもんね。
上半身をゆっくりと起こす。ベッドに手を添え、身体の向きを変える。足を下ろしてから、深呼吸。そして、立ち上がる。目の前には、紺のカーテン。それを開けると、鮮明な赤が目に刺さる。目を背けながら掃き出し窓に手を掛け、開ける。静かな風が僕を出迎えた。それを使って、もう一度深呼吸。……やっぱりもう一回だけ、深呼吸しよう。それで、終わりにするから。
しばらく経ってから、僕は大きく息を吸って、そして静かに吐いた。