8
「次は準決勝ね」
アイニスは意気揚々と話し出した。
「いつゆうか迷ってたんだけど…」
アイニスはそんな言葉を遮り話し続ける
「今まで以上に気合を入れていかなきゃ勝てないわよ」
「お前いつまで俺にひっついてるつもりだ?」
「え〜〜?何でよー?いいでしょー別に(泣)」
「お前もう負けたろ。さっさっと帰んな」
「………」
アイニスはくちをムッとして目を逸らした
「何だよ急に黙りこくって…」
アイニスは恥ずかしそうに口を開いた
「イヤー…その家族と縁切られちゃって…」
………………。
「はああ!!おまっ…はああああ!…えええ〜……おまっ次期党首みたいなこといってなかった?」
「あれ言うと大体の対戦相手がビビって棄権するんですよ…ね…」
「何だそりゃ」
カルマは呆れた。それと同時に納得した。何でアイニスが俺の部屋に来たのか、初対面の俺にあんな暴言を吐いたのかを、この子はこの子なりに頑張ったんだ。
「私ホーソーン家の中で唯一斬空魔法使えるんだけ
ど、でも威力が弱すぎちゃって兄弟達の固有魔法に普通に負けるのよね〜」
「いや『ね〜』じゃなくて…」
「しかもうちの一族は完璧な実力至上主義だから
一族の中で相伝の固有魔法を持っていたとしても
実力がなければ家には居れないの」
「ああそう言うもんなのね」
「それで私…弱すぎるから家から追い出されそうになって…」
「はー…」
「で!『この大会で優勝したら家に居させてくれ』って言ってどうにか頑張ろうと思ったんだけど…」
(あっ…)「あっ…」
「だから私今家無しなのよね」
この子……………すごい
ニコッとしながらえげつないことを言っている
「すす…すまん…変な事聞いちゃって…」
「別にいいのよもう終わった事だし、それに…」
アイニスは何かを言おうとしたその時放送が入った
『カルマ様準備室へお越しください』
「やべ!行かなきゃ…話は試合の後に聞くから」
カルマは中指と人差し指を頭に突き立てて、『やってくるぜ』というような感じでこっちも見ずに行ってしまった。
(アイニスにそんな事情があったとは…………
あいつみたいな人生かかってるやつもいるのか…ヴァルカスを騙す時もアイツ、あんなに明るくふざけていたのは緊張の糸がいい意味で切れて素の自分が出たのだろう)
カルマは色々考えながらゆっくりと戦場へ歩き続けた。
『準決勝!カルマ・コールマン対コタロウー!!』
(おいおい…何だあいつ…)
相手は見たことない服を着ていて全身黒ずくめで顔も目以外を布で覆っていた。背中には見た事のない剣を携えていた。
俺が不思議そうにそいつを見ていると
「拙者の名はコタロウ…」
と唐突に名乗り出した
「え…えと…俺はカルマって言います」
戸惑いながらも相手の国の風習なのだろうと思い
同じ様に自分の名を名乗った
「そうですか……では」
「ふぇっ?」
次の瞬間視界の中心に菱形の黒い物体が現れた
カルマがキョトンとしていると
遠くからアイニスの声が聞こえた
その声からとても切羽詰まった様子が伺えた。
「危ない!」
その声を聞きようやく分かった。これは何かの幻覚でも目がおかしくなったのではない。
カルマは瞬時に体を傾けたが間に合いそうになく
無理矢理体をのけ反らせ、それを下から覗くように視界に捉えた。
横から見てようやくそれが何なのか分かった
コタロウはあの瞬間、予備動作を一切見せず
あの短刀の様な物を真直線に投げつけたのだ
カルマは次の瞬間不意に腕を鞭の様なスピード動かした。その腕を見てみるとカルマはその見たことの無い短刀の刃先をつまんでいた
「何っ!」
カルマは興味津々にその短刀を見つめていた
その姿にコタロウは自分の技を(場外からの助言があったにせよ)見切られた事に呆気に取られている様だった。その隙を卑怯にもカルマは見過ごさなかった。一瞬にしてカルマの手にあった短刀の様な物が消えていた。その時コタロウから「ゔっ」と唸り声が聞こえた。そこには右腕を押さえ、呼吸を荒くしたコタロウが立っていた。
コタロウはまばたきよりも早く持っていた短刀を投げたのだ、それも予備動作なしで
「変な物を投げるんじゃねえよ」
だがその言葉を虚しくコタロウは息を荒くしていた
「腕…早く医務室へ行ってこい」
コタロウが腕から手をだからとそこには傷も血も衣服すら破れていなかった
「やっぱ分かってても体が避けてしまうな…」
コタロウの呼吸をどうにか落ち着かせようと、目を閉じて深呼吸を何度もしどうにか呼吸をおちつかせ、どうにか言葉を絞り出した
「それにしても私の投げた『クナイ』を取って、あろうことか投げてくるとはな…やはり貴様」
さっきの武器はどこいった
落ちてる訳でも無い、だが俺は見た。奴の腕に短刀が刺さるのを…いや実際には奴の手が重なって見えていなかったが、進行方向、奴のうろたえかたからして確実に短刀が奴の腕を貫く…とまではいかなくとも深く刺さったに違いないはずだった
コタロウは不意に悪戯に笑みを浮かべた
「さっきの試合、見ましたよ…手首の関節辺りから光る剣を出したり、指一本であのバカデカい武器を止めたりと人間の所業じゃない」
「いや…………でも意外と頑張れば…」
「できるかああ!」
そう言うとコタロウは急に俯き黙り込んだ
「お前…いやあなた様なのですよね…」
顔を上げるとコタロウの目には涙が溢れていた
「…殺雲様」
その姿はまるで両親の墓参りに来る老人の様だった
「イヤ違いますよ」
だがカルマにそんなことは関係なかった!
カルマは飄々と否定した。
「嘘だ!人とは思えぬ身のこなし、眩い光を纏いし剣…間違いないあなたが殺雲様だ!」
「イヤ違いますよ」
カルマは謎の意地で全く食い下がろうとせず
コタロウの顔はドンドン暗くなっていった
「ここまで来てまだ嘘を吐くおつもりですか…どうしても認められないのであらば…」
コタロウの目から涙がピタッと止まり笑みを消した
コタロウはおのずと懐に手を入れた
「先祖として力尽くでも認めさせていただきます」
カルマはその瞬間卑怯にもコタロウに襲いかかった
「何っ?!」
「黎剣…」
観客や参加者たちはその姿に唖然とした。一度だって自分から攻めたりすることのなかった彼があろうことか襲いかかる何て誰も予想だにしていなかった。
「そっちがその気なら…」
コタロウは冷静な身のこなしで最低限の動きでカルマをかわした。
そして、懐から『クナイ』の端の輪で大量に繋がれた武器を取り出した。
「ちょっ…おまっ四次元懐はないだろ!」
すぐさまカルマは戦闘体制に入り
そう言ってカルマは再びコタロウに襲いかかった。
カルマは両手から生やした剣でコタロウを応戦した。カルマの二刀流に対しコタロウは一本(?)
本来「コタロウは、どうにかカルマの攻撃を受け止めているが崩れるのは時間の問題だろう」になるはずなのだがコタロウはカルマの攻撃に全く動じないのだそれどころかコタロウは避けるだけで全くカウンターを仕掛けてこない
カルマは何度もコタロウの足元や手元と色々な箇所を狙うが、全てヌルッと避けられてしまう。攻撃も段々と慣らられてきている。気のせいかコタロウの動きも段々と俊敏になっているような感じがする。
「おらっ!」
体力の消耗を感じたカルマは半分ヤケクソで力一杯黎剣を振り下ろした。だがそれもコタロウの服を掠めることすらできなかった。
その大きな隙を見てコタロウはとうとうジャラジャラとしたしなったクナイの塊がカルマの背中を叩きつけた
「いっ!…」
鉄が擦れ合う音と共にカルマの背中には無数の傷が刻まれた。全て浅いとはいえその無数のクナイによる傷は、目もあてられないものだった。
背中に激痛が走り、カルマは立ち尽くしていた。だがコタロウにとってはそんなことは関係なかった
コタロウはカルマが痛みに気を取られている所を狙い、武器についた短刀を一つちぎり取りカルマの喉元に狙いを定め渾身の突きを放った。
その瞬間、カルマは両手の二つの剣で短刀を挟み込み、その小さな剣を精一杯の力で止めた。
その時スッとコタロウのクナイの力が弱まった。
反射的にカルマも気が抜けてしまった。
だがそれは大きな過ちだと気づくにはもう遅すぎた
次の瞬間カルマの右足に激痛が走った。
さっきの背中の痛みとは次元の違う痛みが右足の太ももに走った。もう何が起こったのかなんて見たくもないが視線が勝手に太ももへと向かった。
カルマの足にコタロウがらクナイを突き刺していた
「なっ!?」
カルマはコタロウを振り払うと片膝をつき崩れ落ちた。
「その足ではもう戦えないでしょう…終わりにしましょう」
カルマは痛みに耐えながらも、どうにか立ち上がろうともがいたが流石無理のようだ。
ハァと少しため息をつき「創復…」と言うと、突き出した片手の親指が神々しく光り、その指を真っ直ぐ傷口に突っ込んだ。
「イイッ…」
皆がカルマの奇行にギョッとしコタロウも攻撃の手を止めた。カルマは苦痛の叫びをどうにか堪え、数秒間じっと動かなかった。指を抜くと、そこには見るに耐えない傷も血もどこかに消えていた。
誰もがカルマに驚きとある意味恐怖を与えた。
一回戦目でもみせたその謎の治癒力や見たこともない武器や能力に改めて皆が驚嘆した。
そして今彼は骨まで貫通したであろう傷を瞬時に治してみせた。カルマが安堵したその刹那、コタロウはすでにカルマの背後に立っており、再びクナイでうなじを狙い刺しにきた。
「第三壊相懐…」
中指を突き立て、首元に矢の如く突きつけられたクナイの先端を指先でピタッと止めてみせた。
(っぶねー今日勘冴えてる〜)
振り返ると半端ない目つきでカルマの事を睨みつけていた。
「あっ…」カルマは中指を立てられたことに腹を立てたの客人思い、何か言おうとしたが何も思い浮かばなかった。
「…っ……あああああ!」
なので瞬時に黎剣を出しヤケクソでコタロウを振り払った。
それコタロウは華麗に避け、再びクナイを構えた。
カルマはすぐ様立ち上がり両手にまた剣を備えた。




