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「私の『技の秘密』がわかったですって?馬鹿言わないでよ(笑)」
「笑ってられるのも今のうち…ゴフッだぜ」
(少し痛ーが我慢しろ俺)
カルマは小さく『創復』と呟き、傷口に手を置いた。そして肩から脇腹にかけて傷口を力強く撫でた。
カルマは痛みに悲痛の表情を浮かべながらもその手を止めなかった。掌に目一杯力を入れて傷に押し付けた。
「っ…!」
場内の人間は皆唖然としていた
撫でられた傷は今までなかったかの様に
血痕すら残さず消えていたのだ
(一時的にだが出血はこれなんとかなった)
「あなた…今何をしたの…」
アイニスはシリアスな表情でカルマを睨んだ
「回復魔法じゃあないわよね?」
カルマはアイニスの質問に答えようと口を開けたが、面倒くさいのかフル無視した。
「あんたの負けだよ『お嬢ちゃん』…」
さっきまでの態度から一変し、ポケットに手を突っ込み不敵な笑みを浮かべて歩み寄ら始めた。
「何を言ってるの!舐めるんじゃないわよ死鎌鼬鼠!」
アスナは杖を大きく振った
だがカルマは全く焦ることなく歩きながら体を少し傾けた
すると『ガビャン』と何かがカルマの横を通り抜けた
カルマの目はライニスだけに向いていた
ゆっくりと、ゆっくりとライニスに歩み寄っていく
「(くっ…何で)死鎌鼬鼠」
杖を大きく振った
「敗因はな、自分を知らなかった事だな…うん」
カルマが軽くのけぞると
また何かがカルマの上を『ガヒュン』と通り過ぎた
「(何で何で)死鎌鼬鼠…!」
アイニスはさっきよりも強く杖を振った。
「あんたは気付いていない、何も理解できていないよ、魔法にも自分のことも」
カルマはまた避ける
「(何で何で何で何で!)死鎌鼬鼠死鎌鼬鼠死鎌鼬鼠」
ヒョイ、ヒョイ、ヒョイ
ドンドン距離が近ずいてゆき
気付けばカルマはライニスの目の前に立っていた
「…エアログルー…!」
杖を大きく振る瞬間
眼前にいたカルマの姿が消えた
(どこに消え…?)
気が付けばカルマはライニスの背後に静かに立っていた。
「あんたの魔法…空斬魔法つったけ?お前さん自分でも良くわかっていないだろうが、あれ空気吸っ動いてんだよ多分。だから普通なんも見えないし、煙を突っ切れば半透明な塊として、目で見ることもできる。しかもそれ、そう言った何らかの遮蔽物がある中じゃ最大限効果が発揮でかないんだと思うぞ。その証拠に、砂煙吸い込んだそれ、かなり遅くなるしな。そう言うのって使用者が理解さえしてりゃそんな弱体化することがないって聞くぞ。あと!
そのー…魔法出す時の予備動作。そいつにも問題があるんだと思うぞ。お前魔法出す時意味もなく杖を大きく振ってるだろ、その振る方向が技の向きと同じになってる…イヤ、なっちゃってるんだろ?違うか?」
ライニスはハッとした
「杖を振り下ろせば斬撃は縦に飛んでくるし
横に振れば横方向に斬撃が飛ぶ…出力系の魔法使いが良くする癖…だろ?前のが分かってなくてもそれさえ気付けりゃお前の魔法何で屁でもゲップでもねえよ」
カルマはアイニスの目の前に立ち見下ろしてみせた。
「…………うるさい…」
「うるさい!うるさい!うるさい!うるさい!」
その時カルマの背後から「ガビャン」と
どこからともなく突風が吹き抜けた。カルマは思わず腕で顔を覆い、後退した。
「う…!」
その風は段々と強くなっていくのを感じた
何とか目を開けてみると
アイニスの背後には吹き上げられた砂煙によって
小さな竜巻ができていた。
その中は不気味な光で満ちていた。
何か…恐ろしい何かがこちらを見ていた
「…羅神召喚…3厘…東の天使」
そして背後の何かがおもむろに動き出そうとした。
カルマの右手が不意に紫色に光りアイニスの目の前から姿を消した。
『トンッ』
カルマは瞬時に背後に回り込み、首を小突きアスナを気絶させた。
『しょ…勝者カルマコールマン!
重症を負いながらも
相手に傷ひとつつける事なく倒してしまった!
会場の皆様、彼に大きな拍手を』
会場に歓声と拍手の渦が響き渡った
アイニスの背後にあった竜巻晴れ
何かも跡形もなく消え失せていた
「何ださっきのとてつもない何かは?」
(一歩遅けりゃ確実に死んでた…てかコイツ注意力が散漫すぎるな、俺に何回背後取られたよ)
カルマはそのままその少女を抱き抱え、もときた入場ゲートへと帰っていった。