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神の業  作者: 魔手麿
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その瞬間、ノヴァは残像が見えるほどの速度で拳を握り込んだ。

「………」

ノヴァが何かを言った瞬間、眩い光があたり一体を照らし爆風のような風と共にそこにいた5人の眼をくらました。

七秒間にわたって出たその衝撃波は辺りの草木を靡かせ、木々の枝を幾らか吹き飛ばし空を押しのけるように広がった。

光が薄れ、眼を開けるとそこには倒れる女とその前で立つノヴァがいた。

「オッサン……もういいだろ……出てこい………よ」

ノヴァは掠れる声を押し出すように言ってその場に倒れた。

(くそっ……最後の言葉がこれかよ。俺にもおっさんみたいな触れただけで治るような力があれば)

そう言って、カルマがやっていたように傷口に、手を突き立てた。

(ん?)

ノヴァは状態を起こし、血飛沫が出ていたところを見た。だがそこには傷ひとつない若く艶のある肌がある。

「何がどうなって……」


すると茂みの中から見に枝やら葉っぱやらを見に纏ったカルマがシグマを抱えて出てきた。

「大丈夫か!!」

「ああ……うん!」

ノヴァはもう一度治った肌を触って確認した。

「よくやったな。二人だけでここまで出来るとは…」

カルマが言った『二人だけ』という言葉が喉に引っかかった魚の骨のようにつっかえた。

「俺たちが戦ってる時、遠くの方から聞こえたんだよ。すっげえ小さい音だったけど………」

そう言って気絶するシグマを指差した。

「何かさせてただろ?」

カルマは一瞬黙った

「お前達が心配なんだ」

「俺は!!!」

食い入るようなノヴァの声が辺り一面に響き渡り、鳥達は木から飛び出し、木々の軋む音が聞こえてきた。

その目には大粒の涙がキラキラと光を反射しているのが見えた。

「俺は………弱くないんだ!!」

「知ってる」

「俺は!!お前なんかよりずっと強いんだ!」

「知ってる」

「一人でも良かった!!」

「かもな」

ノヴァが両手を使って止めどなく溢れる涙を拭うように目を擦る。

「アイニスが……そうだ!……アイツがいなきゃ俺は勝ててた!弱い癖に戦って……それで狙われて!!アレさえなけりゃ俺は……!」

「それは違う。」

「!?」

カルマは片膝をついて、ノヴァと目線を合わせ、肩に手を置いた。

「本当なら、お前は武器を変えたあの瞬間に死んでた。何でそうならなかったか分かるか?」

目を赤くしたノヴァは言葉を発する代わりに首を横に振った。

「アイニスだよ。アイツはお前の目からしたらただの弱い奴に見えてるかもしれないが、アイツは自分の力量が足りてない事を理解している。だからその分お前との連携を崩そうとしなかった。お前は気づいてなかったと思うが、一人なら何度も死んでた。今生きてんのはアイニスがお前への攻撃を許さないよう立ち回っていたからなんだ。」

ノヴァは俯きながらもハッとした。

「俺はお前達を信用してる。その上で死んだらやなんだよ。だから3人で何とかやってくれ。いいな」

カルマは肩をポンと叩き、立ち上がった。

「さあ!コイツら起こすぞ!」

ノヴァが最後の涙を拭っていると、手の甲に何かがあるのが見えた。

(ふっ………何だよ……信用ってwww)

その手の甲には勇者の紋章が描かれていた。


「あの女どうしたの?お前の事だし殺してないんだろうけど……」

シグマが後ろ歩きしながらカルマに聞いた。

「アイツなら、じいさんとこに送っといた。」

「ああ」

シグマはあの勲章の力を思い出した。

「大丈夫なの?」

アイニスがシグマの真似をして後ろ歩きしながらカルマに聞いた。

「何が……ってああ、そういう事ね。大丈夫大丈夫!じいさんもう年でstand UP↑しないから。変な気は起こさないよ」

「そういう事じゃなくて!起きた時に大変なことになるわよ!」

「流石に舐めすぎ笑」

3人は一瞬ゾッとした。

その時まだ下を向いて歩くノヴァに3人は目をやった。

顔は見えないが心ここに在らず感が滲み出ていた。

まだ半べそをかくノヴァの頭をわしゃわしゃと四人で掻き回した。

「もう!塞ぎ込むんじゃねえよ!ガキならあんな事忘れとけって!」

シグマがホッペを軽くつねって励ました。

「そうよ!私が弱すぎたせいなんだからっっ!!あなたのせいじゃないわよっっ!!」

アイニスがノヴァを抱き抱えて振り回した。

「わかった分かった!!ありがと………ありがとってば!!もう……」

「なら何でそんな顔してんだよ」

カルマがアイニスからノヴァをつまみ取って肩に座らせた。

「いや…………今、何だかは知らないけどカルマの力無理に使わせちまって……ホント…ごめん」

カルマはハ?とポカンとした顔でカルマを見た。

「使ってねえよ、俺」

・・・・・・・・・・・・・・・・チーーん

「は?」「は?」「は?」

「いや、何でお前らも不思議がってんだよ」

「え!?じゃあ俺どうして傷が治ってたんだよ?!」

ノヴァは不思議そうに……というか普通に恐怖している様子だった。

「よく考えれば分かるんじゃない?」

シグマが適当に答えた。

「意外とそうかもよ?物事には理由があるんだから」

アイニスも適当に答えた。

「考えるっても………」

その時ノヴァはあの女と戦う前の記憶がフラッシュバックした。いなくなる寸前、カルマが何かを俺に渡したんだ。えっと………勇者の勲章?と……

あ!

「聖錠!!そうだあの薬だ!」

「え?聖錠?」

「どういうことよ?」

「ああね!涙だ!!」

カルマが手を叩いて言った。そして何を思ったか指先をカリッと噛みちぎった。

「イッッッッッテエエエエエ!!!あああああああ!!!!!ふぁああああああ!!!」


「一人で何やってんの?カルマ」

「イッッッッッテエエエエエぇぇええええ!!」

「おいおいみっともねえよ。兄貴。てか何?口寄せでもすんのの?」

すると今度はカルマが自分の目玉を直に軽く殴った。

「おいおい!やめなって!」

目から匹敵の涙が搾り出され、頬を伝い、一滴落ちた。その時カルマは素早い動きでその雫を出血した指先に垂らした。

その場にいる3人は何がしたいのかわからなかったが、いつのまにか声を上げるのをやめたカルマが黙って自分の指先を見ていた。

「くくくくく……やっぱりな」

「え?何が、何がよ」

アイニスが恐る恐る聞くと自分の指先を見せた。

その指から一筋の湯煙のようなものと共に傷が消えていったのが見えた。そしてとうとつ血痕の跡を残し、傷が跡形もなく消えてしまった。

「やっぱりあの薬は本物だったみたいだ」

カルマが手をしなるように振った。

「すげぇな……兄貴の以上だよ」

「ああ、お前ら転生者の出す涙には劣るんだろうが、それ抜きにしてもかなりの性能だ。あの狸親父…いいもんくれちまったな!」


「お!あれ村じゃない?!」

「あ!本当じゃん」

シグマとアイニスが少し先の道を歩いていると、木々の向こう側に煉瓦造りの教会の塔が見えたと言って、カルマとノヴァの手を引いた。

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