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神の業  作者: 魔手麿
23/29

23

半日かけ、近くの街に着いた。

カルマは疲れ切っていて、ゾンビのようにぐったりとしていた。だが子供達は元気だ。街を散策しようと言い出したのだった。

「俺は宿でも取ってくるから、お前たちで行ってくれないかな〜?」

「オッサンは元気がないな。行けば楽しいぞ」

「んなこと言われても……」

子供達が目を輝かせてカルマを見つめた。

カルマは小さくため息をつき、仕方なく行く事にした。

(アイニスとノヴァは貴族だし、シグマも高校生だもんな。遠出なんかする機会が、滅多にないんだろう)

ただ街を散策したいノヴァとシグマ、何かを買いたいアイニスとそれにつきそうカルマという形で二つに分かれ街を歩いた。

アイニスとノヴァが街を散策しているとふと路地裏から、男女の話し声が聞こえた。一人は太った中年親父、もう一人は小学生くらいの幼女だ。

「一緒に来てくれれば、お金をあげるよ。だからほら、一緒に行こう。」

「痛いっ………やめて下さい!」

男が無理やり少女の手を強く掴み、顔を近づけ、息を荒くした。

「ちょっと何あ……」

アイニスが指を刺し、カルマに教えようと横を見ると、目には光をなくし、口も半開きで、焦る息が漏れ、握る拳からは血がポタポタと滴っていた。

そして、カルマは一直線男へ向かって行き、男の顔面に跳び膝蹴りを喰らわせ、一瞬でダウンをとった。アイニスはカルマに続いていき、少女を路地裏から出した。

「大丈夫?何かされなかった?」

少女は無言で頷いたが、アイニスの手にまで少女の震えが伝わってきた。

その時ノヴァがタイミングよく通りかかってくれた。ノヴァの背後には、ゆっくり歩いてくるシグマがいた。

「いやー、意外と色々あるよこの街……って、誰その子?!」

アイニスが簡潔に2人に事情を話すと、シグマの顔から急に血の気が引いた。

「兄貴は…………」

「え?」

「兄貴は今どこだ?」

シグマが、か細い声でアイニスに尋ねた。その声は震えて、何かに恐怖しているようだった。

「どうしたのよ、カルマならあそ……こ」

路地裏の奥を指差した。

「マズい!ノヴァ!一緒に来い!アイニスお前はそこで待ってろ。いいな、絶対にこっちに来るなよ!」

シグマ、ノヴァと一緒にカルマのとこへ全速力で駆けていった。そこではカルマが男に馬乗りになって、失神したその男を一心不乱に殴り続けていた。

周りの壁と拳には男の血がベッタリと付着し、まさに殺人現場のようだった。

シグマとノヴァはそれを見るなり、すぐにカルマを羽交締めにし取り押さえた。カルマ本人も興奮していて、半分錯乱しているような状態になっていた。

男性はかろうじて生きているようだが、このままほっといてもマズイと考え、ノヴァに男性を病院の前に置くよう頼んだ。


2人路地裏に残った、カルマとシグマだったが、カルマはハアハアと息を荒くし、自分の血まみれの手を見つめていた。カルマの目は深い後悔の念で満ち、より一層息を荒くした。

「大丈夫かよ」

「んっ……だ……大丈夫だ。心配すん……ヴォエッ」

やっと言葉を出したと思ったカルマだったが今度は嘔吐してしまった。

「おい!本当に……」

「う……ヴォエッロロ……ハアハア……ヴッ……

ヴァエッ………ハアハア」

その後、5分間カルマは止めどなく吐き続けた。

「もう大丈夫だ。本当に…ハア本当に大丈夫だ。

よし……行こう。」

アイニスが少女の手を繋いで2人を待っていると、シグマの肩を借りてカルマが帰ってきた。

「さっきノヴァがあのオッサンをかついでどっか行ってたけど………大丈夫?」

「俺のことか?ああ大丈夫だ。」

「吐いたんだ。かなりの量だ。魔法でどうにかしてやってくれ」

シグマは前にも同じようなことがあったかのように淡々としていた。

「おいおい大丈夫だって!ほら」

そう言って、シグマの方から手をどけ、大きくジャンプして見せた。

「でも、なくなった分を補いたい。日も落ちてきてるし、飯でも食おうぜ。」

「置いてきたぞー」

丁度ノヴァも帰ってきた。

「おっ!丁度いい。ノヴァ何食いたい?」

「え?なんでもいいけど」

「なんでもいいが1番困るの!!いつも言ってるでしょ!!」

「なんで急にお母さんに……」

「あ!じゃあ俺ラーメン食いたい」

「ラーメンか今風ね」

「そんな流行の最北端なものあるかよ」

「(択捉島か!)そっか、こっちじゃ最近の食べ物なのか」

「まっ、適当に探そうぜ。俺の奢りだ。」

「全部勲章で払ってるくせに」


4人は適当な店を見つけた。なんでもかなり有名で遠方からはるばる食べに来る人も少なくないらしい。

「……それなのに…!」

ぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっぽいっ

アイニスはカルマの皿へ、シグマはノヴァの皿へ嫌いな食べ物をぽいぽいと無断で移している。

「お前らもう大人だろ!食えよ!そんくらい」

「だって私、ピーマンだけは本当に無理なのよ。味が最悪すぎてどんな調理してもダメなのよ」

「お前は何を頼んだ……」…

「ピーマンの肉詰め?」

「お前は店長と農家に詰められてこい。あと……

シグマあああああ!!!ゴラァアア!!」

「でっけえ声出すな!聞こえとるわい。」

ぽいっぽいっぽいっ

「お前は何歳だ?」

「16であります」

「ノヴァは何歳だ」

「6だけど?」

「ゴラァアアアアアア!!!」

「いや怖い怖い」

「こうぇーのはこっちだよ。」

「そうだよお前だよ」

「……………」

「……………」

「こんの……ど畜生オオオオ!!!」

カルマはシグマの方をぶっ叩き、三メートルほどぶっ飛ばした。

「いや!今のはお前の落ち度だろ」

「ノヴァ!お前も貰わなくていいんだぞ!どっちかって言ったらお前があげる側だ。」

「俺嫌いなもんないから」

「強ーなお前」

「別に普通よ。嫌いなものないくらい。」

アイニスがピーマンの付いていないただの肉を食いそう言った。

「お前もそのピーマンみたいに中身くり抜いてやろうか」

「兄貴は気にしすぎなんだよ」

シグマはまたテーブルに座り直し、卵がなくなった、ただのケチャップライスを食べ始めた。

「気にしすぎはハゲの元だよ」

(フードロスはきっとお前らが元だよ)

「分かったわかった好きに食えよ。最近の若いやつは。」

そう言ってカルマも元いた席に戻り、モッツァレラチーズだけが器用にくり抜かれたピザを食べ始めた

(誰でもいいから………誰かコイツに垂れ下がる黄ばんだモッツァレラチーズをくり抜いてやってくれないかな)


「あの時何があったの?」

宿に着き早々カルマとノヴァはベットに横になって寝てしまい、本人から聞くことはできなかったが、シグマに事情を聞くことにした。

「カルマがオッサンをタコ殴りにしてた。素手で」

「え、?」

「まぁこういうの初めてじゃないから」

「どう言うこと?」

「昔、カルマが休みが取れたって言って、家に帰ってきたことがあったんだ。知ってるかわからないけど、兄貴は警察やっててさ。公務員ってのもあって、殆ど家に帰って来なかったんだ。すぐに帰っちゃったけど、両親が死んだすぐ後だったから、色々やることがあったんだ。遺品整理も兼ねて、叔父さんとこ行って家具とかあげたんだ。叔父さんのとこにはな、一人娘の可愛い子がいたんだ。小学生くらいの。そんで、叔父さんが家具を業者と一緒に家に運ぶってんで、その子と俺らでそこら辺を散歩したんだ。そしたら、チンピラに絡まれちゃってさ。

なんでも、その娘がどっかの令嬢だとか言い出して、終いにゃ、ナイフなんか出しちゃって、襲いかかってきたのよ。それをカルマが……」

そう言って、ベットからはみ出た拳を指差した。

「なんか、仕事辞めてから、あの人も人が変わったみたいになっちゃって。仕事でなんかやったんだろうな。大きなミスとか。」

「そうなのね……」

窓からの月の光が2人を照らしていることに気づく程、2人の会話が止まった。

「あのさあ……」

シグマが気まずさに耐えられなかったのか、口を開いた。

「最近、誰かにつけられてる気がするんだよね」

「え?」

「いや……気のせいならいいんだけどさ……」

「待って待って本当に言ってる?」

「アイツが転生者だってのもあるし、あり得る話だと思うんだ。例えば、転生者じゃないってバレたとかさ。」

「つけられてるわけないでしょ。」

「ずっと見られてる気がするんだよ!どこ歩いてても、何してても。なんなら今も見られてて話も聞かれてる気がするんだよ!」

「寝た方がいいわよ」


『あーあー疑われちゃったよ。俺の仕事はここまでですね。この能力は、バレたり、疑われた瞬間から使えなくなるんですよ。このストーンもこれで最後です。』

「いいよ。充分だ。ところで…まだ痛むのか?」

「やばいですよこれ。三ヶ月続くんですって。」

「彼女を貸すよ」

そう言って、ベットで横になる男に杖をかざす、女性を指差した。

「『魔法使い』使いが悪いですよ。メビウスさん」

「我慢してくれ。カルロス君は僕の大切な後輩だからね」


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