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神の業  作者: 魔手麿
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「カルマが最初にここに来たのは、確か二十歳の頃と言っていた。」

アイニスはテーブル越しに老人と向かい合い、手前に置いてあるガラスを見つめた。

「何をしに?」

「仕事だ。カルマの警察になって二回目の派遣場所が正にここだ。」

「警察……?」

アイニスはピンとこなかった。あのカルマが警察だなんて俄かに信じられない。頭の中にカルマを思い浮かべ、警察の服を着せてみらがやっぱりピンとこなかった。

「考えられないのも無理はない。性格も、今とではだいぶ違った。」

「どんな風に?」

「まぁ……実直というか、真っ直ぐな性格をしていた。寡黙だが正義感に溢れ、誰からも信頼されるような青年だった。」

「まっすぐで……寡黙……ですか……」

「ははは、まぁそうだったとだけ分かっていてくれさえすればいいさ」

アイニスは腕を組み、何もない天井を見つめた。

どう想像しても今のカルマとどうも合致しない。その面影が記憶の中のカルマに存在しない。

「何が…彼を変えたんですか」

正直アイニスも触れていいのか分からなかった。

暗い洞窟の中に入るような気分だ。必要もないのに。外はこれでもかと晴れているのに、そのぽっかりと空いた穴に入ろうとしているのだ。

「あの日は………いや、やめとこう」

「え?」

「カルマの口から聞きなさい。きっといつか彼が君たちを信用して、心を開くときがくる。その時、彼はこの話を君たちにするだろう」

アイニスは少し戸惑った。自分たちが信用されてない?まだ日は浅いが、信用すらされていないという事に。みたところ、弟にすら話していない話なのだろう。弟すら信用していないということなのか。

「えっ……じゃあ」

「ん?」

咄嗟に口から余計な言葉が漏れてしまった。別にもう聞きたいことはない。というか、思考がうまくまとまらない。だが今更何でもないというのも今のアイニスには気が引けた。

「えっと……魔教……カルマが使ってる魔教って、何なんですか」

「ああー……カルマ使っちゃってる?」

「あ、はい」

「………フーー……まぁしょうがないよな、流石に素手だけじゃな……。いいよ、話してあげよう。でも絶対他言しないでくれ。少なくとも君たち以外に話が広がると危険だ。」

「はい、」

(そりゃそうですよね。魔教使いは重罪。見つけられたり、疑われてしまったら即処刑。よくても島流。言ったら私達の身も危険よね)

「アレはね私が彼に教えたんだ。」

「自分から……ですか?」

「そうさ、私も止めたんだ。魔教なんかに君みたいな若人が触れるべきじゃないってね。でも…聞かないだこれが。それから八年間彼は鍛えた。修行をし、技を身につけた。」

「八年ですか」

「彼はこの魔教の才はそれほどではなかったが、努力でその分を補っていた。見ていても恐ろしかったよ。あの時の彼は正気の沙汰じゃなかったと今でも思うよ」

アイニスはコップの中に残った数滴の滴をぐいっと飲み込んだ。

「それで、今の彼が完成したってわけだ。お終〜い!。では……おやすみ」

そう言って老人は腰を上げ、スタスタと部屋へと行こうとした。

「え……あっ……ちよ、ちょっと」

「なんだい」

アイニスは一つちゃんと聞きたいことを思いついた。

「あの、彼の中にもう1人誰かいません?」

その質問の途端、老人の顔つきが一変した。

「何でそれを?!」

「大会で彼が二度変わったようなきがして。別人に。」

「肌や髪、眼球の色が変色して、口調も変わって?」

「は………はい。でも、何でそれを?」

老人はアイニスの言葉を聞かず、舌打ちをし、頭を掻き、俯いた。

「それで、何人死んだ?」

「え?…いや……誰も死んでませんけど」

その言葉に老人はとても驚いたようで、俯いた顔をすぐ上げた。

「本当に?」

「はい。一応」

老人は風船の空気が抜けるように息を吐いた。

そしてもう一度椅子に座り直し、アイニスに向かい合った。

「アレはな………


丘の側面を朝日が照らし、窓から入った光が、シグマの目を覚まさせた。シグマは上半身だけを起こし、足に乗っかるノヴァそっとどけた。

リビングに行くと、老人がコーヒーを飲んでいた。

「おー、おはよう。よく寝れたかな?」

「はい。久しぶりにちゃんとしたベットだったんでぐっすりでした。」

「はっは、それはよかった」

老人が手に持つカップを、口元に運んだその時、ドアが開いた。

「ファ〜〜〜」

あああくびして入ってきたカルマは、寝癖なのか、髪の毛が爆発し、大量に草や木の枝が刺さっていた。服も所々汚れていて、酷い事になっていた。

「どういう状況?」

「ん?これか?ちょっと外で寝てたから」

「外で?」

「そ。ファ〜〜〜。もっかい寝てくるは」

カルマはまた大きなあくびをし、どこかへ行ってしまった。その数秒後、子供の悲鳴と女のうめき声が聞こえたような気がしたが、多分気のせいなので無視した。


「ありがとうございました。こんないっぱい泊めていただいて。」

「いいんだよ、またいつでも来な。」

「そうだよ、いつでもいいからな」

「お前は誰だ」

みんな荷物をまとめ、また旅路に戻ろうとした時、カルマが何かを思いついたようにあっ!と声を上げた。

「なに……どうしたの」

カルマは石碑の正面で屈んで何かをしたが、カルマの背でよく見えなかった。

そしてカルマがよしっ!と言い、戻ってきた。

「何したの?」

「瞬間移動」

カルマ派すっとぼけた声で答えた。

「は?」

「だから、瞬間移動だって。勲章の能力の一つ」

「え……まさか」

そう言って三人は石碑に視線を向けた。石碑の表面に紋章が刻み込まれていた。

「あの家につけさせてもらった方がいいんじゃない?」

「木と石じゃ石の方が丈夫だろ?」

「どっちでもいいけど……とにかく、いきましょう。ここから長いんだから。」

「…………ん?あっ!ごめんごめん。よしレッツゴー!」

一瞬カルマが石碑を見たまま止まった。その時の目はまるで友人や親の墓石を見ているように、懐かしみと後悔に満ち溢れていた。

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