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神の業  作者: 魔手麿
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「この人たち何?」

4人の目の前に、数人の男が倒れていた。

「急に襲いかかってきたな」

「多分盗賊よ。アンタの勲章狙いのね」

「え!?俺の?でも……なんで」

「はあ……義務教育受けてないの?」

「いやおれ中学卒業してないから」

「え!………まあいいわ。勇者ってかなり凄いのよ。歴史の教科書に載るレベルでね。その理由のひとつがその勲章。」

カルマは自分の手の甲に視線を落とした。

「その勲章は多分、世界全体で見ても5本の指に入るほど超レアな物なの。つまり超超超高級ってこと。売れば貴族に、使えば英雄に、まぁ盗賊が出るのも必然なのよ」

カルマはノヴァとシグマに口パクで『本当に?』と聞くと、2人は揃って首を縦に振った。

「いや怖!」

その時、ノヴァが倒れていると男達の前にかがみ込んで、話し始めた。

「にしてもすげーな、お前の魔教ってのは。」

そう言って倒れる男を指差した。

「傷が一つもない。傷だけならまだしも、服にも傷跡がない。」

「すげ〜だろ!」

「どういう原理なの?」

「そう言えば兄貴、俺にも教えてくれねえよな、

ソレ」

「教えてあげたい気持ちはあるんだが、絶対にダメって言われてっから」

「誰に?」

カルマは謎に、自信満々という表情でこちらを見てきた。

「今日はそこに行くんだ!!」


丘の上に一軒の小屋がポツンと何食わぬ顔で立っていた。道中には、明らかに当たり一帯、かなり広い範囲で、他と少し木々の背丈が低い場所があり、そこを抜けてきた。残骸やら塚がある事からここは古代の遺跡が何かだと伺えた。その場所を抜ける時だけ、カルマの顔が凛々しく見えた。


カルマは小屋の前につくやいなや、ノックもせずに

扉を開け、中へズカズカと入って行った。

三人は少し引き気味で、カルマの後に続いた。

「ただいまー」

「おー、おかえりー。早かったな。」

中には柔和な顔をした椅子に座った老人がテーブルに向き合い、首だけを少し曲げ歓迎をしてくれた。

「そっちがお前のの弟くんか?話は聞いてるよ。」

「あっ、どうも……兄がお世話になっているそうで」

シグマは少し困惑しながらも、根の礼儀正しさで挨拶をした。

「で、そっちの子達は?」

「えっとねー…………」

カルマは頭を掻き、何かを考えた。

「なんかそのーー…………居候?」

「ちがうわ!」

「冗談じゃん。そんなキーキーいうなよ。耳壊れるだろ……なあ!!!!!」

「唐突な逆ギレしてくんなオッサン」

「ホッホッホ、カルマ、いい仲間を持ったな。」

「まあ!類は、友を、呼ぶと、いいますからね

ハイ」

三人の頭に青筋が浮き出た。

「今日は皆、ここに一泊して行きなさい。ここから1番近い町まで半日はかかる。」

「いいんですか?」

アイニスが申し訳なさそうに尋ねた

「当たり前だろ」

カルマがドヤ顔で言ってきた。

「お前は誰だよ!」


日が沈み、晩飯を終え、皆が寝床に入った。

その老人は客人だからとベットで寝かせてくれた。

三人にとっては久しぶりのベットでの就寝だったため、横になって10分も経たないうちに熟睡してしまった。

カルマと老人は椅子に座り向かい合った。

「あの子達はどこの子だ?カルマ」

「アイツらは……まぁ……大会で会ってついてきちまったんだ。家に居場所がないとかで……」

「はー。ワシはお前に小銭を稼いで貰おうと思ったっただけだったんじゃがねー」

「まぁなっちまったもんはしょうがない。たまには……なりゆきに任せるのも良いんじゃないかな」

そう言ってテーブルの脇に置いてあったグラスに水を注いで飲んだ。

「お前はこの先……又、後悔する覚悟はあるのか」

カルマのグラスを掴む手に薄らと筋が出た。

「俺は……大丈夫だ。もう……大丈夫だ、と思う。アンタにこの力を教えてもらった。あの時の俺とは違う。強くなった。」

「そうだな……でも、お前の中にいる()()はどうかな?」

カルマは少し躊躇ったが、答えた。

「大丈夫だ。」

「そいつらは、いつかお前を憎しみで飲み込むぞ。

その()()達を制御できるのか?もしミスを犯せば、あの子達を殺すぞ。カルマ、お前がな」

カルマは思わず下を向いた。そして答えた。

「ちょっと外の空気……吸ってくる」

老人はカルマを止めることなく、見送った。


ドアが閉まるその音で、アイニスが起きた。

ふとカルマがどこにも居ないことに気がついた。

老人に聞くと、外に出たとだけ言われた。

アイニスは重たい体に鞭を打ち、外に出た。

老人が「ここから1番近い街まで半日はかかる」と言う言葉は本当のようだ。どこからも光が入っていないせいで初めて、月の光で影ができるのを見た。

星の光が地に満遍なく降り注ぎ、丈の伸びた草の表面を漣のように光らせていた。カルマ達がいた小屋の背後は崖のようになっていて、そこから自分たちが通った道を見下ろすことができた。途中見た、古代の遺跡のような一帯が見えた。点々と、建物の残骸らしき物が上からでも見えた。その時アイニスは違和感を覚えた。その一帯だけ何故か、地面の起伏が激しい。何故が地面が規則的にボコボコと膨らんでいる。何かがおかしいと気づき降りてみようと振り返ると、そこには石碑が置かれていた。お世辞にもできが良いとは言えないが、ちゃんとした石碑のようだ。アイニスは回り込み石碑の正面に立った。

月明かりに照らされた文字がアイニスの目に飛び込んできた。

その時、アイニスはここにくる道のことを思い出し、急いで丘を下ていった。


カルマは何かの建物の残骸の中にいた。

その建物の大部分が焼け焦げたような跡があり、所々には草や苔が生えていた。

中には焼けたデスクと、背もたれが折れたキャスター付きの椅子がセットで置いてあった。椅子に座り、横を向くと、丁度そこからドアを通して、外が見えた。多分そういう設計で作られたのだろう。

カルマはいつか見た風景を思い出した。

昼下がり、子供達が外で駆け回り、1人の子が中に入ってきて、カルマの手を引き、無邪気な笑顔を見せて、「一緒に遊ぼうと」言ってくれる。最初はちゃんと、「仕事があるから」と断るが、そのうち

「少しだけだぞ」と、言って一緒になって遊んでしまう。そんな、子供がクレヨンで描いたような日常がここにあった事を思い出していた。

だがそれも幻想。風景は色褪せていき、カルマの目の前から蜃気楼のように消えてしまった。

体の向きを元に戻し、机に体を向けた。そして

徐にカルマは左手を見つめた。その目にはさっきまでのような光はなく、固まる前のセメントのように薄暗く、光を失っていた。そして、瞬時に黎剣をだし、ゆっくりと自分の額へとそれを近づけていった。

「カルマ!」

そのキンキンとした声は丁度外から聞こえてきた。

剣を戻し、声の方に体を向けると、そこに立っていたのはアイニスだった。でも今のカルマにはそれを驚くほどの気力はなかった。その代わりにカルマは口を半開きにして、驚きを表現した。

「ここって、八年前に起こった『バロリックシティ大火災』の場所だったのね。」

カルマは何も言わずに、体の向きを戻した。だがアイニスもお構いなしに、話し続けた。

「この火災で村人全員、視察に来ていた、召来者率いる軍の一行全員が焼死した。原因は村人の不審火だと言われているけど、このバロリックシティの黒い噂と死体の損傷の激しさから、都市伝説としてもよく扱われているわよね。村人が古くから魔教の闇の儀式を行っているって言われていて、実際にも政府の役人が何年かに一度視察に来ていた。この火災も、村人が儀式を目撃されて、隠蔽のために行ったが、運悪く火災に発展。当時の新聞にはそう載ってたかしらね。」

その時ずっと口を閉じていたカルマが口を開けた。

最初はボソボソと話しているため、よく聞き取れなかったが、次第に声は大きくなった。

「それはなんて………儀式だ?」

カルマが急にそんなことに興味を持ったことに内心、お題ではいたが、表に出すほどでもなかったためすぐに答えた。

「確か……子供を襲って、殺すっていう……」

「へーwww」

急にカルマが嘲笑うかのように声を出したことに今度は驚きを隠せなかった。

「メイソンさんが!……ジェイさんが!子供を襲って殺したって!言われてんのかwwwはっはっはっはっはっはっ」

急に顔を上げて笑い出すカルマにアイニスはゾッとした。さっきまで、死人のようだったカルマが今目の前で狂ったように声を上げて笑っているのだ。

「はーはっはっはっはっ!はっはっはっ」


ガン


その時、不意にカルマが拳を机に叩きつけた。音が崩れかける建物を震わせた。その力は机の表面に拳の跡がくっきりとつくほどのものだった。

カルマの顔からはさっきのような笑みは消え、歯を食いしばり、眉間に皺を寄せ、本気で怒りを露わにした。怒りというよりかは、恨みと憎悪の方が正しいだろう。

カルマは顔をこわばらせ、再び机を叩いた。

「どっか行け」

カルマが小さく呟いた。

「え、?」

「どっかに行ってくれ!!」

アイニスがこんなにも声を荒げて、自分を呼ぶのに図らずも恐怖を感じてしまっていた。

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