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神の業  作者: 魔手麿
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そうシグマはピキっていた。

完璧にキレていてた。ぷっつんしていた。

今まで見たことのないような鬼の形相で、シグマは荒れ狂うようにギターを掻き鳴らした。

音楽は仲間と合わせて紡ぐのでは?

一人独走状態のシグマに観客も仲間ですら困惑していた。


兄貴…!

お前はいつもそうだな。

大切な時にお前は出てきて全てを壊す。俺がどんな気持ちかも知らずに


その時シグマの異様な視線に気づいた一人の生徒が、視線の先のカルマに気付き、瞬く間に全ての人間の視線がカルマは向いた。

そうとも知らず、カルマはピントを合わせようと一生懸命カメラをいじっていた。


「ねぇ見て!あの人の手」

「え!あれって」

「間違いねぇ『勇者の勲章』だよ!」

アリンコが溢れたジュースに群がるように、体育館中の生徒が兄貴へと集まっていた。

皆が皆ライブのことを忘れて兄貴へと集まっていった。


「あれってもしやお前の兄貴じゃ…」

ドラムがシグマに心配そうに聞いた

「…………がって」

「え?なんて」

「俺らのライブを…メチャクチャにしやがって!!殺してらやらアアアアア!!」


元はと言えばアイツが…カルマがここに来たのがそばでの発端だ!

俺の初恋もライブもコイツが…コイツが…

『でもそれってお前の実力の問題だろ?最高の曲を使ってるのにお前自身の実力がないせいだろ?じゃなきゃ観客が他のことに気を取られることはなかっただろ?』

いや!俺は充分努力してたし、本当にカナタのことが好きだったし

『そんな事ばっか言ってるから()()()もバンド、逃げたんだろ。才能がないとか、自分で思い込んでただけだろ?』

それは…

『いや……実際、お前に才能はなかったな。大体お前が自分の思いを伝えられなかったことと兄貴は関係ないだろ』

でも兄貴が急にこんなタイミングで学校に来なければ、俺に会いに来なければこんなことにはならなかったはずだ!


『君さ〜人のせいにばっかしてないで現実見たらどうよ?』


あーなんか嫌なこと思い出してきちゃったな

頭の中で、実害が出るレベルの嫌な思い出が記憶の奥底から漏れ出てくる。止めようとどんなに記憶を上塗りしても、下からバケツをひっくり返したように滲んで漏れ出てくる。

シグマはおもむろにギターに手をかけた。

「…夜想曲(ノクターン)『virtual reality』……」

その時突如突如としてシグマの足元から、黒雲が立ち込めた。そして、そこから人の手のような真っ黒い物が現れた。そしてその手の指は地面を掴むようにし、這い出してきて、その全貌が明らかになった。だが皮肉なことにそれに気付いたのは、バンドの仲間だけだった。それは徐々に大きくなり、やがて人の形へと変化していった。

丁度校内にいた生徒達が噂を聞きつけて体育館へと集まり、半分くらいしかいなかったオーディエンスが満杯になった頃、事は起こった。唸り声と共に激しい轟音と軽い地震のような揺れが体育館中に広がった。

カルマはこの見覚えのある()に、危機感を感……じた。

「やばい…アイツの…アイツの能力が出ちまってる!皆んな逃げろ……!」

そう言いかけた時、背後に激しい気配が現れた。

人が感じられる気配の上限を超えたなにかが背後にいる、逃げたい!今すぐにここから、一人だけでも


「なーにやってんの?シグマと…『勇者様』」

声の主は体育館の扉に立っていた。

そこにいた生徒の背後には彼と同じように、乱雑に制服を着て、ピアスをつけていたり、髪を染めた、見るからに不良生徒達がうじゃうじゃ立っていた。

「勇者がいるって聞いて見てみればまさか、こんなことになってるとはな」

彼の髪は長く伸びていて、背中まで垂れていた。

そして綺麗な銀色をしていて顔も超イケメンである

「丁度いい!『転生者』と『召来者』どっちの方が上か試してみたかったんだ!」彼はニヤリと笑い、一心不乱にギターを弾くカルマへととびかかった。


召来者

……転生の種類の一つである『召喚』によってた転生してきた転生者。どちらも転生者であることには変わらないが、召来者は意図的に転生してきているためあえて召来者という呼び方をされている。


「やめろ!よせ!今アイツの近くいったら…」

その時カルマの背後にいた、何者かの気配が消えた。消えたというより、移動したという方が正しいだろう。その瞬間、飛び掛かって行った彼の宙に舞った体が高速で地面へと叩き落とされた。

その一瞬の出来事に、取り巻きである、生徒達や、体育館中の生徒達が今起こっていることのヤバさにようやく気がつき、逃げていった。

体育館内に残されたのは転生者と召来者と転生者もどきのみとなった。その時叩き落とされた彼は体を起こした。

「ってーなぁ!ボケが!」

「………」

だがシグマは虚な表情を浮かべるだけで、何も答えなかった。

「舐めてんのかこの野郎!」

「おい!お前いいからさっさと逃げろ!今のアイツはマジで危険だ近づけば何するかわかんねえぞ!」

だがカルマの忠告は火に油を注ぐだけだった。

「ああ?なんだテメェ。召来者のおれに命令すんのか?あん!?勇者だがなんだか知らねえけどなあ、俺は主人公なんだぞ!こんな奴に負けるはずねえんだよ!」

忠告も虚しく、彼は再びカルロスに飛び掛かって行った。

(さっき、なんかが俺の背後からに思いっきり殴ってきた。だから…)

彼は背後に気配を感じるやいなや瞬時に空中で体を捻り、仰向けになった。

炎神(ファイアーアサシン)全界(フィスト)!」

背後にいた何かを業火を纏った拳で殴りつけた。体育館中に鈍い音と炎のような熱気に包み込まれた。

体育館の天井には人型の陥没ができていた。

やがてその真下へと人が落ちたような音が静寂しきった体育館内をより一層静かに感じたせた。

そこには真っ黒な人の形をしたナニカが、ゆっくりと起き上がっていた。所々がバグったように透けていてた。だがそのナニカの腹のあたりに、クッキリとした拳の跡がついていて、そこを中心に剥がれ落ちているかのように、黒く本体の色が浮かび上がっていた。

「なるほどな、透明化か。面白くなってきたぜ」

そういうと再び彼は拳に炎を纏わせ、殴りかかった

だがその時、人型のナニカが急に自分の首回りを掻きむしり、苦しそうにのたうちまわった。

彼は今何が起こっているのか訳が分からない様子だった。そしてとうとう、ナニカの動きが止まった。そして灰のようにハラハラと消えていってしまった。

それと同時にに体育館の舞台でガタンと人が倒れる音が聞こえた。目を向けると、シグマが舞台の上で倒れていた。そしてその後ろには『勇者』の男が、立っていた。

「ふーー助かったあ!いや本当ありがとう!君が意識逸らしてくんなかったら、サビに入ってるとこだったよ。あっぶねー!」

「おい!ふざけるなよ!俺はコイツ正々堂々戦ってたんだ!邪魔しやがって。なんなら今ここでお前をぶっ殺してやっても……」

気がついた時には、男は勇者に地に体を押し付けられていた。

「殺すとか簡単に使っちゃダメよ」

何が起こったのかまだ頭が追いついてない。

カルマは何かニヤニヤして、男を見下ろした。

「召来者なんだって?君」

「ああそうだ!いいからはなせ!馬鹿」

「弟と仲良くやってんの?」

「はあ?」

(弟?コイツ、シグマの兄貴か?)

「何でそんなこと聞くんだよ?」

「いやなんか知り合いっぽいから」

彼は思ってもみなかった言葉に少し混乱した。

「ま、まあな。ってか!アイツはどうしたんだ」

「ん?ああ!ちょっと締め落としといた」

「とんだ兄貴だな」

その時ピンポンパンポーンという音と共に放送が入ってきた。

『副校長先生は体育館に至急お越しください』

「おい!ヤバいぞ勇者さんよ…」

「え!何が?」

「うちの学校に副校長いないんだよ。副校長って呼んだ時は不審者が出たって意味なんだ」

「ふ…不審者!」

放送が終わると同時に体育館の扉が開く音がした。

「大丈夫かあああ!シグマ!ナサク!お!?お前だな勇者を名乗る変態!うちの生徒に手え出しやがって!こんのビチグソゴミ○カスf*cking b*tchく!そ!や!ろ!ーおがあああ!!!」

そこには刺股を持ったこの学校の先生らしき人物達が大勢立っていた。

「やけにアメリキャーンなヤクザモンがきたああ!

怖ーい!!」

「かあああくほおおおお!!」

カルマは大勢のteachersに抑え込まれ、職員室に連行されて行った。


「いやー本物の勇者様だったとはー……そうならそうと言ってくださればよかったのに」

「俺は何度も言ったがな」

カルマはパンパンに腫れ上がった顔で答えた

「なんでも、シグマ君のお兄様なんだとか」

「それも言いましたよね」

「あ…あはははあはあはは」

その俺の顔を一番殴っていた男性教諭は苦し紛れの

笑いで、全てを水に流しにかかってきた。

その時、職員室の扉が乱暴に開かれ、ハゲた中年男性がカルマの前まで来て、スライディング土下座をかました。

「申し訳ござぁせんでした!!!!!」

「校長先生、頭を上げてください。眩しいんで」

「この度は勇者である貴方に無礼を働き誠に申し訳ありません。」

「いや別に勇者はいいんですけどね、はい。」

周りが勇者という言葉にざわつき出したところで、

シグマが職員室の扉を開けて入ってきた。

「今回は全部俺の責任です。なので僕は責任をとって自主退学させていただきます。今までありがとうございました。皆んなには、転校したとか適当な理由をつけといて下さい。ほら兄貴帰ろ」

「え!ちゃっと、ちょっとちょっと待てお前!

どうしたんだよ!俺は別にお前を連れてくつもりはなかったんだ。俺はお前が普通にやってけるか、見に来ただけなんだ。頼むからこのまま普通に暮らしててくれれ!俺みたいにならないで欲しいんだよ」

「俺だってそう思ってたさ。でも今日のことでわかったんだ。俺みたいなのは無理なんだ、また同じようなことをするかもしれない、死傷者が出てもおかしくない。どんなに可能性が低かろうと、なるかもしれないなら……。俺は兄貴についてくよ!」

「シグマお前……」

「それに学校よりかは楽しいかもだしね。

あ!…っでもやっぱり!停学って事にしといて下さい。高校は卒業しときたいんですよ、就職に響くんで」

「相変わらず、現実的だなお前は。安心したよ。」

「ふ、なんだよ急……」

トンッ

「にッ………!」

シグマの体がゆっくりと崩れ落ち、倒れた込んだ。





その頃ノヴァとアイニスは………

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