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ここは国で一番デカい高校である。
「ここにいるの?」
「まぁ多分ね」
「多分ねって…」
カルマが門を開け中に入ろうとした時、警備員に止められた。
「ちょっと勝手に入らないで下さいよ」
「いやすぐ済むんで」
「いやダメですよ」
「だからすぐ済むから」
「ダメなもんはダメですよ」
「ちょっ…!すぐ済むから!」
「ダメてすって!」
「ちよっ、すぐに済むって言ってるでしょうがああ!!!」
二人は、興奮して警備員を殴ったカルマが、応援に呼ばれた警備員達によって取り押さえられ、校内に連れて行かれていくのをただ見守るしかなかった。
カルマは学校内へと連れて行かれてしまった。
「いや〜すいませんまさかシグマ君のお兄さんだとは、言って下さればよかったのに」
校長を呼び出せと連呼したお陰で、学校関係者に話を聞いてもらう事に成功した。
「ハハハこっちの方が手っ取り早いかなと思いまして」
「は…ははは…シグマ君、今呼んでいるのでもうしばらくお待ち下さい。」
(狂ってんなこの人)
しばらくして、教師と思しき男性とジャージ姿の生徒が入ってきた。
「連れて来ました。こちらシグマく…ん?」
先生の横に居たはずの生徒がいなくなっていた。
その時ドスッと鈍い音がカルマの方から聞こえた。
「何やってんだこの…穀潰し!!!」
カルマがシグマのアッパーカットで天井へと叩きつけられた。
そして間髪入れず、落ちてきたカルマに馬乗りになって顔面をタコ殴りにした。
何が何やら、先生と校長も呆然と彼を見ているしかなかった。生徒が手を止め立ち上がり、先生と校長に謝罪した。
「本っっ当!!すいません!うちの兄がご迷惑をおかけしました!!」
生徒は気絶した、カルマの顔をペチペチ叩きながら
カルマにも謝罪を迫った。
「おい!寝てないで、お前を謝らんかい!!!」
カルマの服の襟を掴み、自分と共に深々と謝罪した。
「ちょっ!誰かー!!AED!AED!」
「いやーすいませんね。いつもの事なんで気にしないで下さいよハハハ」
カルマは笑みを浮かべ腫れ上がった顔をさすり、
弁明した。
「なぁシグマ!」
そう言ってまだ興奮気味の生徒の背中を叩いた。
「『なぁ』じゃねぇよ!」
兄の手を振り払い、鋭い視線で彼を睨みつけた。
「で、お兄様は何をしにお越しになられたのですか?」
校長が恐る恐る聞くとカルマは表情一つ変えずに言った。
「いやーちょっと退学してもらいたくて、弟に」
・・・・・・。
二人は唖然とし、文字通り空いた口が塞がらない状態だった。
「な、何を言い出すんですか!?」
「マジで…マジでマジで…」
シグマはまだ何を言っていいのかわからないようで、『マジで』としか言えない様子だった。
「その……理由を聞かねばまだなんとも」
「理由っすか?僕勇者になったんで、ちょこっと冒険に行ってこないといけなるんで、家を空けるんですよね。それなら『弟もつれてっちゃえ』というような感じですね。はい」
(何言ってんだ?コイツ)
突然の意味不明な説明に校長も目を点にしてしまった。
「兄貴頼むぜ、28でそれは無いぜ。頼むから働いてくれ!そういう妄想も大概にしてくれよ」
「いやマジ大マジだよ」
そう言って手のひらから勇者の勲章をを出して見せた。
「そんなんが何の証拠に何だ?こんなちっこいおもちゃみたいなのが…」
「承知致しました『勇者』様」
校長は深々と頭を下げた。
「校長!どうしたんですか?!」
「この形、この色、何よりこの緻密に刻まれた『王国の紋章』。間違いないこれは本物の『勇者の勲章』だ!」
「ええー!こんなんが!?こんな豆粒みたいなモンが本当に『勇者の勲章』なのか?」
「どうぞ勇者様彼を連れていって下され!」
「ちょっ!校長!変な冗談はやめて下さいよ!」
カルマは苦しゅうないと言わんばかりに校長のハゲた頭をペチペチと叩いた。そして弟をニチャっと見つめた。
シグマは何か諦めたように言った。
「わかった。でもな!退学じゃなくて停学な!て・い・が・く!!あと…」
シグマの表情が少し曇り、言い淀むが拳を強く握りしめて言った。
「後3日は待ってくれ。3日後にライブあるし、荷物とか、友達にも挨拶したいし、色んな人にお世話になったから…」
「ああ好きにしな」
カルマはその言葉を素っ気なく返し学校を後にした。
二人は校門前で退屈そうにカルマを待っていた。
「ジャンケンポン!」
アイニス:グー ノヴァ:パー
「はい俺の勝ち!おでこ出して」
「また負けた…」
ノヴァは思いっきりアイニスのおでこにデコピンしようとしたその時。
おもむろに校門が開いた。
そこには、カルマが一人立っていた。
「え?…その例の人は?」
カルマは少し黙り上を向いた。
「あいつは…来ないと思う」
「だれよ?あいつって?」
カルマは少し笑いそれ以上何も答えなかった
「って!そんな事よりお前らはいいのか?」
カルマが気を取り直すように気さくに二人に聞いた。
「何がよ?」
「家族に『さよなら』言わなくていいのか?」
二人はハッとした後表情を少し曇らせた。
「私はパス。多分会ってすらくれないかな。召喚術使っちゃったし」
「俺は行こうかな」
「いいな少年」
「えっ!本当にー?」
「別にお前が行くわけじゃないんだからいいだろ」
「いやそうだけど……」
「行きたいんだろ?」
アイニスは顔を淀めた。
「いやっ……別にそんな……」
「行ってこい!後悔すんぞ」
アイニスはその時カルマがボソッと「俺みたいに」と呟いたのが聞こえた気がした。




