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『たすけて……』
んだ…この声?
カルマは暗闇の中立っていた。
『お兄ちゃん』
背後から可愛らしい少女の声が聞こえてきた
『痛い…』
振り向きたいのに…体が…動かない
体全体が太い鎖で縛られているかのように重い
『お″・に″・い″・ち″・ゃ″・ん″』
さっきまでの声が急に苦しみと痛みに歪むような声に変わった。
なにが起きた…なにが…
カルマは暗闇の中体を動かそうとすると何かが自分を押し返そうと、しているようだった
『お″に″い″じゃ″ん″!た″す″け″て″!!』
声がドンドン大きくなり、苦しみに満ち溢れたものへと変わっていった。
カルマの体が徐々に動くことができるようになってきた。
なにが起こってるんだ!?動け!…動け!…動け!…早く!…早く!…早く…
ようやく背後にいる少女を視界に入れる事ができた
……ぁ″…
その瞬間カルマは息を呑んだ。酷い吐き気と立ちくらみに近い、頭痛に襲われた。彼女は両手がちぎり取られているのに何故か、血は一滴たりとも流れていない、異様なものだった。
そこにいた少女は地に這いつくばり、両手はもげ、服は着ておらず、はだけた姿をしていた。そして悲鳴と共に足が目の前でゆっくりと千切れていった。
顔を上げると、あたり一面、その少女と同じくらいの歳の子供が、同じ姿で仰向けで地に這いつくばっていた。皆大きく震えて、涙を流しているのに、全員が狂ったように笑みを浮かべ喜びにも似た悲鳴を上げていた。その不気味な状況に、今までに感じたことのない吐き気に見舞われた。息ができない、
上手く息ができない。目の前の者がすべて全て気持ち悪いほど鮮明に見える。
『お″…に″…い″…ち″…ゃ″…ん″♡』
足元に触れられる感覚が背筋にまで敏感に伝わってきた。
足元にゆっくりとゆっくり顔を下げると、少女が徐々に右手が千切れている中、今は亡き四肢を使おうと体をくねらせて、足に体を擦り付けていた。
その時少女は無理矢理首を仰け反らせ始めた。骨が折れているのか砕けているのかカチカチとした音が
足にまで伝わってきた。その少女の顔には、狂った笑顔が張り付けられていた。その時、体中に向けられた視線に気がついた。顔を上げると、時間が止まったかのように少女達が微動だにせずカルマを狂った笑顔で見つめていたのだ。
その瞬間カルマの
何かに対する殺意と憎悪に体が震えて頭からの血管がはち切れそうになった。だがカルマは嗚咽で声すらまともに出せず、そのまま倒れてしまった。視界が暗闇に侵食されていく中少女が、カルマのことを心配そうに見ていた。
目を開けると、カルマは医務室のベットで横になっていた。横からは人の唸り声が聞こえてきた。
「母さん痛い…痛いよ誰か…痛いやめて…痛い…」
だがカルマは何も聞こえていないかのように再び寝込もうとしたその時医務室の扉が開いた。
アイニス・ノヴァ・コタロウが入ってきた。
「おい」
カルマは寝たふりをして、その声を無視し続けた。
何を聞かれて、何を言われるのかがわかっているからだ。
「おーーーい聞こえてますかー」
だがそんな嘘に騙される3人では無かった。
アイニスは何かを閃いたようだ
アイニスがカルマの手を持ち上げ、こう言った。
「本当に寝ているならこの手は落ちないはずよ」
そしてそっと手を離すとあら不思議カルマの手が上がったまま落ちない!
「貴様!!起きているな!」
「ああーもう…うるせえ!何だよ!」
めんどくさい本当にめんどくさい
「一つ目、『アイツに何をした?』」
そう言ってノヴァは隣のベットで元気にのたうち回る男を指差した。
「お前…人殺した経験は?」
「は?何を言って…」
「俺はな『殺されたくないから殺さない』ってだけだ…」
「なんの話だ?」
「どうせこれも聞かれるだろうと思って先に答えといた。」
「分かったから。今、俺の聞いた質問に答えろ!
『アイツに何をした?』あと『お前のその力は何なんだ?』どっちからでもいいぞ」
カルマは悪巧みしているかのように、嫌な笑顔をして答えた。
「俺の力はまぁ簡単に言やー、一種の魔教なんだよね。」
「は?何を言い出すかと思えばお前!魔教使いだったのか?」
「で次。何をしたかと言いますと。その魔教の力でつくった剣でアイツを刺したの」
「おいおい話しが見えてこねえぞ」
「ところで…俺何回あいつを刺した?」
質問の意図が見えてこない、どう言う意味だ?
「自分で覚えてないのか?…多分30回…くらい?」
ノヴァは背後の二人に目配せをし確認した。
「ならアイツはあと3ヶ月はあのままだろうな」
「ど…どう言う意味だ?」
「俺の黎剣は、創造エネ……もとい回復エネルギーの塊なんだ。だから刺した部分は全て完璧に治す。痛みを残してな」
「痛みを残して…?」
「そう!簡単に言うと、この剣は『痛み』だけを与える剣なんだ。切ったところは剣の能力で回復してしまう代わりに、切られた感覚(痛み)だけをそこに置いていく。反対に言えば、何かを壊したり切ったりする事ができない『ポンコツ剣』何だ。
まぁでも、それはそれで性に合ってるからいいんだけど…ね」
「なるほど。その剣の事はよく分かった。
では『3ヶ月はあのまま』とはどうゆう事だ?」
「刺殺される痛みを死なずに受けたら、まぁ部位にもよるが大体3日は痛みが引くことはない。普通だったら一回で死ぬような攻撃をアイツは30回も喰らったんだ。3×30は何かな?じゃあ…ノヴァ君!」
「きゅ…90だ!…よな?」
「正解!!だから3ヶ月
アイツはあと3ヶ月は黎剣の回復能力の余韻で自殺することも出来ず、体の至る所を刺され続ける痛みに苦しみ続けるだろうな」
3ヶ月間刺され続ける…
想像するだけで身震いしてしまいそうだった。
「あなたは本当に殺雲様ではないようですね…」
コタロウはボソッとそう呟いた。
「やっと分かったか」
二人はその会話にキョトンとしていた。
「何の話だ?」
「ああ…こっちの話」
「それでは私はこれで。ただの勘違いなら私がここにいる意味はないので。ではアリーデヴェ…ッヂ
痛″ッッッッえ″!!!!」
そう言い終えるとコタロウは一瞬にして姿を消しどこかへ行ってしまった。
その頃、会場の一角では……
「困ったぞ…困ったぞ…」
彼はこの大会の主催者である
「まさか負けるとは…転生者だと聞いていたが…
ただの移民に負けやがるとは思いもしなかった。
クソっ!王様にもうが勝ったと送ってしまったと言うのに!…いや待て…
まだ王様には転生者が優勝したとしか送っていない名前までは知らないはず」
主催者は不敵な笑みを浮かべ使用人に何かを伝えた
「『転生者になれ』って!」
「そうだ頼む!一生の頼みだ!!」
主催者の男は頭を下げて懇願した。
「はあ?広辞苑で不可能って言葉引いてみ」
「待ってろ」主催者は不敵な笑みを浮かべ奥の部屋にカルマを連れ込んだ
そして何処からともなく6センチほどのウイスキーボトルのような形の瓶を手渡した
「これはな…聖錠だ!これを一粒飲めば一時的だが、転生者になる事ができる」
カルマは何から指摘しようか戸惑っていた
「そんな物あるはずがないだろ!そんなので転生者になれたら苦労しねえよ!」
「それがあるんだよ!この水は貴族階級御用達の代物でな、我が子を転生者に仕立て上げるために使われるんだ」
「何でそんな事をする必要があるんだ」
「お前も知ってるだろこの世界での転生者の扱いを。息子が転生者であれば周りから神のように崇められる。それはその親も同様にな。それに息子が転生者と分かれば自分より地位の高い貴族、下手すれゃ王族との縁談だって夢ではない」
「胸糞悪いな。子供を自分のアクセサリーかなんかだと思ってんのかよ…」
主催者は同感するように頷き、話を続けた
「知っての通りこの世界は四人の転生者によって作られた。彼ら『始まりの人』が作ったこの世界は、遥か昔から現在に至るまで沢山の転生者によって発展・繁栄してきた。言わばこの世界自体、転生者の歴史なのだ」
「ああ知ってるよ、小学校で習った。でも一つ聞いていいか?何で俺をそこまでして転生者もどきにする必要がある?普通に嘘つくだけじゃダメなのか?」
主催者は小さくため息をつき応えた
「それがダメなんだ。近年、転生者を偽る不届者が多くて社会問題になっているんだ」
「そうなの?」
「そうなのって…まあいいとにかくだ!お前の過去の経歴とかならこっちでどうとでもできる…だが!
転生者を証明する為には幾つかの質問と検査を受ける」
「それってどんな?」
「わからない、だがそれを聞けば一発で本物か偽物か見分けがつくらしい」
主催者は鬼の形相でカルマに詰め寄った
「いいか?よく聞け。もし転生者じゃないなんてバレたら私とお前さん、両方の首が飛ぶと言うことを肝に命じておくんだ!いいな!」
「は…はい」
「そういえばおまえさん…メダルの授与式はどうした?」
「へ?!ああー!!忘れてた!早く行かなきゃ」
カルマは部屋を飛び出し、会場へと全速力で向かった。
『カルマは聖錠をGETした』




