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———首都マロリス某所の闘技場内
「おい知ってるかこの闘技場に
素手で挑む様な馬鹿がいるらしいぞ」
その男は俺の顔をチラリと見ながらわざと周りに聞こえるように言い放った
(くそっ何で俺がこんな目に、全てはあの書類のせいだ…)
〜十分前〜
彼は闘技場内の参加受付に並び
書類に個人情報や契約書を書かされていた
(参加条件が緩い分こういうとこには結構厳しいんだな…)
そうして色々書いていると一つの項目に手が止まった。それは『使用武器』という欄だ。
男は少し考えた後ゆっくりとペンを動かした。
NOW
「これに関しては運営側に問題があるよな!クレームつけてやろうか!あ!いるだろ素手の奴だって!
ジョ○サンとかゴ○に同じこと言えんのか?!!
ジョジョン拳使っちまってもいいのかコラ!!
クレームもんだからは今からでもいったんぞ!!
絶対つけてやっからな!…クレームつけてやるからな!カサハラとか知らねえからな俺・・・・・・
いいのか!付けちまうぞ!今!ここで!………… ここで!今!!!本当に付けるぞ!!!絶対つけるぞ!いやまじで!いいのか!ごー…よーん…
さーーん…にーーー…いーーーーーーー…行くぞ!本当に行くぞ!!」
男は案内された部屋に寝転んで、一人の喚いていると急に机の上が光だした。
「おっ、来たか」
起き上がる頃にはその光は消え、机の上には一枚の紙だけが残されていた。それはトーナメント用紙だった。
(さてさて俺はどこにい……)
端から順に見ていくと自分の名前をすぐに見つけた
俺は名前は綺麗な逆シードの位置に記載されていた
「ま…まあそういうこともあるよな」
男は思いの外心にダメージを負ったのか、再び寝転び、目を瞑ろうとしていた。
『コツコツコツコツ』
その時一人の女がこの男の部屋へと足を運んでいた。
(ハァー…負けたらどうしよかな。やっぱ再就職かなー)
『コツコツコツコツコツコツコツ……ガチャ』
その時部屋のドアが乱暴に開けられた。
男はびっくりして、水に入った猫のように跳ね起きた。目の前には若い女が立っていた。
だがその雰囲気は、とても10代とは思えない重々しいものだった。
彼女はカルマを目の前にして「たのもー!」と部屋に年相応なキンキンとした声が響いた。
「た…多分そういうのって、部屋を開けるときにいうんじゃないかな?」
彼女は表情を全く変えず少し黙り、さっきよりも大きな声で「たのもーーー!!!」と叫んだ。
「や!別にもう一回言えって意味じゃないからね」
「あな…お前がカルマ・コールマンだな!」
「(聞けよ……)はい、そうですけど」
呆れた声で答えた。
「私の…我が名はライニス・ホーソーン
知っての通り、五方家の一つ『東』のホーソーン家
のニ女にして我が一族最強と謳われたかのビクトリア・ホーソーンと同じ最強の魔法。空斬魔法の使い手だ」
「……」
「今のうちに棄権するのが身のためだ!」
「人違いだと思いますよ?」
「え…あなたカルマ…さんです…よね?」
急に拍子抜けしたように声を縮こませた。
「よく考えたら僕の名前カル○ス・ゴ○ンでした。急に聞かれたもんだから間違えちゃいました。
自己紹介までして下さったのに、ごめんなさい」
「あっ…えっと……こちらこそ、すいませんでした。」
(こいつバカだ)
彼女はそう言って逃げるように部屋を後にした。
カルマは再び風船の空気が抜けたように地面に寝転んだ。
「なんだったんだろうアイツ」
カルマはゆっくりと目を瞑った。
だがまたもや扉が開いた。心なしかさっきの乱暴に開けられた時の音と酷似していた。
今度はゆっくりと面倒くさそうに起きると。
案の定目の前に立っていたのはさっきの少女だった
彼女は少しばかり涙を浮かべて、何か怒っているようだ。
「外にこれがあったんだけど」
そう言って一枚の紙を見せた。
「ハハ、ばれちった?」
それは外の部屋番号と一緒に貼られていた、出場選手の名前だった。
「バカにしてんでしょ!」
「してないしてない」
「嘘よ!本当は私のこと馬鹿なやつって思ってるんでしょ!」
「思ってねーよ。思うまでもねーよ」
(堪えなさい私!ここで手を出したら負けだ)
「忘れてたけど、お前何しに来たの?」
「はぁ…貴方…マジふざけてんの?」
アイニスは呆れらように言った。
「次の対戦相手くらい見ときなさいよ!」
「あ!ほんとじゃん!で、何しに来たの?自己紹介?」
「違うわ!宣戦布告だわ!」
「ああね、で?布告すんの?しちゃうの?布告んの?」
「なんだ布告るって、気持ち悪い。というかもう布告ったわ!!」
「え!!!!!もう!もう布告ったの?!!」
「布告ったわよ!!随分前に」
カルマは覚えてないと言うように、腕を組んで眉を寄せた。
「とにかく…痛い目見たくなきゃ、棄権しなさいこのアホ…馬鹿……中年!!」
そう言ってアイニスは今度こそ帰って行った。
ドアが閉まるとカルマは唸り声を上げ地面にのたうちまわった。
「だれが!…誰が中年じゃい!ボケエエエエ!!
おっさんとかジジイとかでなく単なる『中年』ってのが地味にくる!オラァまだ28だぞ!20代だ20代!ハァー…来るんじゃなかったかな…」
〜先週〜
「おいカルマ」
老人はカルマに尋ねた。
「あ?何ですかい?」
「ちょっ!これ出てみ」
「何すかこれ?」
「あれだって、大会があんだってさ」
「何の大会ですか?」
「『勇者選抜大会』だってよ」
「へー、そんなんがあるんすねー。でもそれ、俺エントリーできます?そう言うのって基本的に上流階級の人間しか出られなくないすか?」
「お前つい最近、ここいらのなんかの大会で優勝してたじゃん」
「あーなんかありましたねそんなの」
「あれ結構凄い大会だったぽくてな、色んなとこでやってたらしいんだ。それの優勝者プラス何かで選ばれた上流階級の奴らが出れる大会なんだと」
〜現在〜
(あのジジイが変なこと言うから!)
『第一試合の選手は一階準備室にお越し下さい』
「これで言われたとこに行きゃいいのかな…」
彼はゆっくり立ち上がり自分の部屋を後にした