表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/12

三幕 ~朽木の章~ 前編

……私の名前は朽木葉子。両親が旅行から帰宅し、お土産を買ってきた。

ああ、両親が……いや父がこんな物さえ買って来なければ……。私はこんなにも恐怖に怯える必要など無かっただろう……。


……こんな人形さえ、買って来なければ。


────────。


──時は戻り、父はお土産を私に手渡した。


「はい、これお土産。」

「…………。」

気味の悪い人形を手渡された……。


「いらないわよ、こんな薄気味悪い人形なんて……。」

私は"それ"をテーブルの上に置いた。

「なんでだよ?……せっかく買ってきたのに……。」

……残念そうな父の顔なんて、見向きもせず私はお風呂場へ向かった。


「……ふぅ。」

入浴を終え、部屋に戻った私は驚いた。

私のベッドの上に、"その人形"が置いてあったからだ。

私はそれをむんずと掴み、父の元へと走った。

「ちょっと!いらないって言ったのに、どうして私の部屋にまで持って来るのよ?勝手に私の部屋に入らないでよ?」

……私の言葉に父は顔をしかめた。

「いや……父さんはそんな事なんてしていないぞ?勝手に部屋なんて入って、もし口聞いてくれなくなったら困るしな……。」


…………。

父ではない?じゃあ一体誰のいたずらなのだろうか?

……弟?母親?


うーん、わからない。……誰なのよ?……そう考えながら部屋に戻る私は悲鳴をあげた。


「ひぃっ!」

……人形がまた、私のベッドに戻っていたのだ。


……あり得ない。私は先ほど確かにその人形を父に返した筈なのだから……。

私はその人形を掴み外へ出て、走り出した……。

ただ、この人形が怖かった……。

「どこか、どこか遠くへ捨てに行こう。」

……しかし、夜中だしパジャマなのを気が付き。私はその人形を近くの公園のごみ箱に投げ捨てた。


……私は恐る恐る、自分の部屋に戻り自分のベッドの上を確めた。


……ベッドの上には何も無かった。

ほっと安心し、ベッドに腰を降ろした……。


あれは……あの人形は一体何だったのか……。

その事はあまり深く考えずに、葉子は眠りに付いた……。


「……ん。」

目が覚めると、そこは自分の部屋では無かった。

……まだ自分は夢を見ているのだろうか。

回りを見渡して見る……どうやら古びた洋館の一室の様だ。部屋の中はかなり殺風景でベッドしか無かった。……いや部屋の真ん中に何か……。

「……ひぃっ!」

私は急いで走り出した。部屋の真ん中にはあの"人形"が置いてあったのだ。私は急いで部屋の扉を開け廊下へと走り出した。

……しかし、いくら走っても外に出れる事は無かった。廊下へ出て玄関に向かい、扉を開けても何故か元の部屋……人形の部屋にもどされるのだ。


「これは……夢なの!?」

葉子は走った……。一体どの位の時間走ったのだろうか……?

一、二時間程度なのだろうか?……葉子は疲れ果て、座り込んで泣き出した。

「……やっぱり、あの人形……呪われてるのよ。」

葉子はこの館から出られない恐怖と、呪いの人形の恐ろしさに怯えた……。

館からは出られない、部屋に戻ってもあの人形が居る……葉子はただ恐怖に怯えながら、時間が過ぎるのを待つしか無かった。


……あれからどれだけ時間が立ったかわからない……小一時間程度だろうか……?


まだ開けて無い洋館の一室から、なにやら微かに人の声が聞こえた……。

葉子は恐る恐るその部屋に向かい、扉を少し開けて中を覗き込んだ……。


……そこは部屋ではなく、廊下だった。長く……果てしなく長い廊下……。

窓からは風が入り、白いカーテンが風に(なび)いていた。……その白いカーテンから一人の女性の姿が見える。……風に(なび)く流れる長髪の姿の少女だった。


「……誰?」

私はその少女に近付き顔を見ようとしたが、(なび)くカーテンが邪魔をして、顔がきちんと見れなかった。

少し歩くとその少女の顔が、はっきりと見え出した……。

その少女は……。


────────。


…………。

私は夢から覚めた……。

「夢……。」

どうやら先ほどの悪夢は、ただの夢だった様だ。

……見渡して自分の部屋である事を確認し、落ち着く私。

「ふぅ。」

なんだ……ただの夢か、そう思いベッドから出ようとすると"それ"は私の膝の上にあった……。


──!?

……昨夜の人形がまた、私のベッドに戻っていた。

「いやっ……。」

……私はあまりの恐怖に、ベッドから転がり落ちた。


……人形は、カタカタと震えながら……喋り出した。

「オマエノ命ハ、後三日ダ……残リ僅カナ人生ヲ恐怖ニ怯エナガラ、過ゴスガイイ……。ハハハハハハハハハハハハハ!!」



私は足がすくみ、ただただ恐怖に怯える事しか出来なかった……。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ