表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/12

二幕 ~針山の章~ 前編

一幕と二幕は短編と同じ内容になっております。よろしくお願いいたします。

三幕も、よろしくお願いいたします……。

…………。

ちゃぷちゃぷ……と、波の音。僅かに漂う海の匂い、微かに揺れる地面。

……ここは海の上なのだろうか?


──"彼"は目を覚ます。

「……ここは?」

彼には記憶が無かった。自分が男で高校生なのは覚えているのだが、自分の名前、顔、そしてどうして自分はこんな場所にいるのか?……それが全く分からなかった。


「……ここは、船……なのか?」

「うっ……。」

頭が少し痛んだ。……とりあえず周りを見回す。……ここは船の中なのだろうか?

……船の中、そして同じ年頃なのだろうか……自分と同じ様に座り込んでいる男女が四人居る。顔は……やはり見覚えが無い。


「あ、あの……。」

俺が話し掛けようとすると、突然何処からともなく声が聞こえてきた。


「……やあ、諸君。楽しいゲームの始まりだ。死にたくないなら、まず席に座りたまへ。」


……席?辺りを見回すと白いテーブルがあった。

「……座ればいいのか?」

俺はとりあえず、指示に従いとりあえず椅子に座る事にした。他の四人も無言で椅子に腰を掛けた。


……するとまた突如何処からともなく、声が聞こえ出した。

「……まず名前だねぇ、君達は全員記憶が無いだろう。名前はこちらで勝手に付けさせて貰うよ?名前が無いと不便だろうしねぇ。」


!?


それは突如出現した。

「……一体どういうカラクリだ!?」

驚いて左隣の男性が声をあげた。

まるで魔法でも使ったかの様に、それはいきなり現れた。

「名前……ハリー?なんだこれ?」

それは五つ現れ、名前が書いてあった。


……俺がハリー?隣の肥満体型の男性がロン。その隣の眼鏡の男性がクリス、その隣の黒髪の女性がマイ、一週回って俺の右隣のツインテールの女性がアリス。


喋る間もなく、次のアナウンスが始まる……。

「君達にはデスゲームをやって貰う。その名の通り、命を賭けたゲームをね。勝てばここから脱出出来る単純(シンプル)なゲームだ。」


「ゲームは三回行われる、そうだな……。ブラックジャック、ポーカー、七並べで行こうか……。」


──ガチャッ。

またもや何もない所から拳銃が出現し、テーブルの中央に配置された……。


──!?

……拳銃、嫌な予感しかしない。


「ルールは簡単、最下位の者が死ぬ。」

……!?おいおい、ふざけるのもいい加減にしろよ。三回やって最下位が死ぬ!?五人中三人も死ぬとかバカにしているのか?リスクが高いにも程があるだろ。

そう考え、一言文句を言ってやろうとしたが、先に隣のロン……の名札の男性に言われてしまった。


「ふざけるなよ!俺はやらないぞ!!」

ドン!とテーブルを叩くロン。とりあえずロンにしておこう。

「なら、この拳銃は何かね?」

眼鏡をくいっとするクリス。

「……私、怖い。」

怯えるマイ。

「は?バカじゃないの?私帰りたいんですけどー。」

何を考えているのか、よく分からないアリス。


「まあまあ、説明は最後まで聞きたまへ……。そこでこの拳銃の出番と言うことだ。君達が全員助かる方法もきちんと用意しているよ?それはこの中に一人、人狼が紛れ込んでいると言う事だ。」


「人狼?……どういう意味だ?」


「あれ、おかしいな?人狼で伝わると思ったのだが……。それじゃあ"鬼"にしようか、分かりやすく言うと君達五人の中に、我々運営側の人間が一人紛れ込んでいると言う訳だよ。」


「その人物を最下位にすれば君達の勝利となる。……最下位だと必然、死ぬ事となるからねぇ。それともう一つ、一位の者は一度だけこの拳銃を使う事が出来る。君達の中に紛れ込んでいる"(オーガ)"を見事撃ち殺す事が出来れば君達の勝利となる。ただし、三回目のゲームでは最下位の人間は死なない。その替わり拳銃は二発使って貰っても構わないよ?……以上だ、さあゲームをいつでも始めたまへ……。」


そんなゲームやるわけないだろ!……俺は席を立ち外を見た。

うーん、やはりここは船の中で。外はこれでもかって位に海だ。しかし小さいが豪華な船だな。……辺りをキョロキョロ見渡すが、あるのはこの部屋と、扉が一つだけだ。

扉?とりあえず開けて見たが、トイレだった。

「出れ……そうには無いな。」


「おいおいふざけんなよっ!クソッ!」

壁を蹴り、怒りだすロン……。

「食いもんくらい、置いとけよっ!」

出れない事より、食べ物の怒りの様だ……。


「なるほど……少しは楽しめそうだな……。」

またもや、眼鏡をくいっとして椅子に座ったまま動かないクリス。


「怖いよぉ……お家に帰りたいよぉ……。」

泣き出すマイ。


「出口どこー?出口……何よもう!トイレしか無いじゃない!」

何考えてるのか全く分からなかったが、アリスは俺と同じ考えの様だ……。



──あれから暫く時が経過したが、誰一人喋る事なくゲームを始める訳でもなく、只々(ただただ)時だけが過ぎて行った……。

当然だろう、死ぬと分かっているのにそんなバカなゲーム等やりたい奴なんて一人も居ないだろう。

誰もが皆、ただ時が過ぎるのを静に見守っていた……。


「何よっ、出られないじゃない!船なのに出口も入り口も無いなんて、一体どういう作りなのよっ!?」

──ドカッ!


……よし、一つ訂正しよう。一人だけ賑やかでお喋りな例外(アリス)が居る事を。

そして落ち着いて考えた。……そうだこれは夢に違いない、船なのに扉が無いのはおかしいし。酔いやすい俺が船酔いもしないなんてのもおかしい。いきなりネームプレートや拳銃が何処からともなく出てくるのもおかしいし、何よりこんなバカげ事が現実だと考える方が何よりも非現実的だろう……。


よし夢だ、こんな物夢に決まっている。……そう考えると頭がすっきりし回転を始めた。

……ルールは理解出来た。ゲームは三回、最下位が死ぬから普通に考えて二人死ぬ。人狼……いや(オーガ)が最下位ならそこで俺達の勝ち、全員が生き残れる可能性がある。

一位なら拳銃を使い、(オーガ)を撃てる。しかし、(オーガ)……。


当たり前だが、俺は(オーガ)ではない。……つまり残りの四人の中に(オーガ)が居るのだ。確率は四分の一……。誰だ?


……食い物もねーのか?と、ぶつぶつ文句を言っている肥満体型のロン。うーんどうだろう?特に不自然な所は見受けられないが……わからん。


静に座り、常に眼鏡をくいっとしている眼鏡男のクリス。先ほど「面白そうだな……。」とか言っていたし、少し冷静過ぎるし不自然である。怪しいと言えば、怪しい……。


ずっと泣いて怯えているマイ。……今は泣き止んではいるが、特に不自然な点は見当たらない。一番自然だとは思うが……わからない。


「ここから出しなさいよ!蹴破るわよ!!」

蹴破っても外は海だよ?と言いたいが黙っている俺。そもそも蹴破れるかは置いといて、一番人間らしいと言えばアリスは一番人間らしい。多少お転婆ではあるが……。


──結論、だれが(オーガ)かわからない。この俺の天才的な頭脳を持ってしても、現時点で(オーガ)を特定するには、情報が足らなさ過ぎると言えるだろう……。


──そして誰も何も話さないまま、さらに時は過ぎて行った。


「開けなさいよ、居るのは分かっているのよ?」

……そりゃあまあ、居るよね。誰かしら。

よし、訂正しよう。一人だけ賑やかなアリスが居る事を。


──そんな事を考えていると、またアナウンスが流れ始めた……。

「そうそういい忘れていたけど、タイムリミットは6時ジャストだよ?6時迄にゲームが終わらないと……全員死んで貰うよ?」


──!?

全員が壁を見た。……また何もない所から壁掛け式の時計が出現した。

只今の時刻、2時40分……。


「時間制限だと……クソッ!やるしかねーのかよ!!」

怒り出すロン。


「……やるのか?面白そうだし、俺は構わない。」

またもや、眼鏡をくいっとしているクリス。


「……本当にやるんですか?負けたら死んじゃうんですよね?」

怯えるマイ。


「バカじゃないの?やる訳ないでしょ?」

と、アリス。

一人だけやらないなら、棄権扱いで負けにならないか?と考えたが黙っている俺。


「じゃあ、始めようか?」

……どうせ夢に決まっている。……俺は席に着いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ