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文芸部 ほたる短歌班  作者: はあとのええす
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車窓

 この地域の入学シーズンの頃の気候まだ寒くて桜はほのかに赤いつぼみだ。だから電車からみると桜の樹は全体的に紅くぼやけみえる。


 切り取った車窓は線路放射線まわりに桜紅き蕾の


 カナツ高校一年に今日からなる僕は、さっそっく一首詠ってみた。電車に乗り込むってことは、その軌道の存在からして、なおかつ「親の敷いたレールに乗る」とかいうスラングもあるし、既得、既成社会への参加の意味があるのかな。ジェームス・ディーンは屋根に乗っかってたけど、寒そうにして。でもレールは無数だ、放射線にちがいない。僕たちはまだ未知数のつぼみだ・・・。

 短歌を詠むようになったのは、中学の三年の時、隣に座っていた女子の夕実の姉貴が「全国高校生短歌大会」という全国大会に出場して、結構良い成績をおさめたことがきっかけだ。その夏には女子の間で短歌ブームーが起きて、彼女たちが町の図書館から借りた歌集本を教室に持ち込んできていたのがきっかけになった。つまり、なんかの表紙に一冊の歌人の歌集をパラパラめくってたら、


 ギブアップがあるならすぐにタップして次の試合の準備をしたい  ゆきのしたまりあ


っていう一首があったってことだ。本の作者は歌人の「ゆきのしたまりあ」、歌集のタイトルは「タコ公園時代」。この歌を目にしたとき僕は、夏休みの夏期講習も不発で、模試の予想では「カナツ高校」がA評定だった。カナツ高校は友達の兄貴なんかも進学してる、この町から三つ駅をいった街の、湖っぱたの高校で僕としては満足な結果だったけど、周囲の圧を感じていた僕は、十五歳の人生のランニングレースに、まさにタップしたい気分だった。けど僕の一回きりの人生という試合はギブアップ無き世界だってことに気づいた作品だった。次の試合なんて無いんだ。「あきらめたらそこで試合終了ですよ」安西先生の言葉が想起される。とにかく読みは浅いかもしれないけど、この一首に感動したんだ。共感ってやつだ。  

 受験勉強と短歌作りは両立しなかったな。だから、受験シーズン真っただ中でも、女子のだれかがMHK短歌やウェブの応募で入選や佳作掲載されたって話があったときはうらやましかったし驚いたんだ。入試が終わったら短歌を作りたいって思った。


入試が終わったらすぐに図書館にいって「タコ公園時代」を借りたんだ。ゆきのしたまりあ・・・やっぱりいいな。


 コンパスをなんども刺して描き上げるハート模様は傷跡だらけ  ゆきのしたまりあ


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