~罪について考えてみる~
~罪について考えてみる~
罪。アルベイン王子とチート主人公。この二人が行った罪について考えてみた。多すぎて解らない。アルベイン王子が行った罪はかなり重いだろうな。
「アルベインよ。お前に聞くことはただ一つだ。国で保管してあるマジックポーション。あれを無断で持ち出したな。しかも許可を得ていると書類まで偽造して」
国王はもう笑っていない。目の周りが黒くかげっているように見える。まじで怖い。すごく迫力があるのだ。
「いえ、それは、担当者が、間違えたというか、その、私ではありません!」
アルベイン王子は誤魔化した。ってか、国王がそう言うということは証拠が全て揃っているからだ。
「そうか、正直に自ら罪を認めるのなら減刑も考えたがな。書面を」
「はっ」
影が動いて書面を差し出す。
「マジックポーションを国の保管庫から出した記録だ。申請者はアルベイン王子。承認印は偽造した印影だ。似ているが違う。公文書偽造は重罪だ」
国王がつめたく言い放ち、影がアルベイン王子の前に書面を見せる。
「違うんです。これは。これは、国が豊かになるための方法だったんです。そうしフ嬢から教わり、クラスメイトに協力してもらい鍛えたんです」
そうだと思っていた。
「同じようにマジックポーションの有用性をコンラディン公爵令嬢からも申請されている。だが、コンラディン公爵令嬢はダンジョンを攻略し、ドロップアイテムであるマジックポーションを国に治めたんだ。その有用性を我が国の魔法兵団に試した。わかるか?不正に国庫からマジックポーションを持ち出し、たかだかクラスメイトの強化に使ったものと、きちんと申請をし、我が国に益が出るように対応したものの違いだ。それがわからぬわけはないだろう」
国王は感情がない人だと思っていた。だが、少しだけ親が子を思う感情が見えた。一瞬優しい顔になったからだ。
「皆、その悪女に騙されているんです。オードリーヌ・フォン・コンラディンは悪女です。悪女なんです。そうしフ嬢が何度も、何度も言っていたから、そうに違いないんだ!」
この信仰心に近いものってなんなんだろう。ゲームだと攻略が進むと相手のいう事を何でもそのまま受け取ってしまう感じになるんだけれど、実際の世界でそうなると恐怖でしかないわ。
「そうか。ならば次に試すことがあるな。レイリ男爵はいるか?」
「・・・・はい」
ものすごく小さい声で返事をして出てきたのは小太りで耳の付近だけが赤い髪が残っている男性だった。おどおどしており、すごい汗をかいていた。
まあ、今までのチート主人公の行動を見ていたらわかる。あの責任を取らされるだもの。親としてどういう教育をしてきたんだってね。
「レイリ男爵領の近くには変わった部族がいるらしいじゃない。その部族との取引はあるのかい?」
国王はにやにや笑っている。私が渡した情報を元に調べたんだろう。
「え~と、その、はい。ルルド族という部族と取引をしております」
ルルド族は『ハナコイ』の中では名前だけは出てきたんだよね。そう、信愛度を上げるアイテムを作っているということで。しかも、そのアイテムはチート級。ゲーム中は現地に行けないから入手が難しいんだよね。
確かアイテムの名前は『魅了の香水』だったはず。そう、このスミュール王国では使用を禁止されているものでもある。
「そのルルド族から禁制のアイテムを購入していると報告を受けているのだが、申し開きはあるのかな?」
国王がにやにやしている。国王は証拠がないことは言わない。こう言うという事は確実な証拠が手元にあるのだ。
まあ、王妃に進言したのは私だけれどね。
「その、手違いで、入手した、かも、知れませんが。悪気があったわけじゃ、ないんですよ」
汗をかきながらレイリ男爵はそう説明する。
「そうか。ならばその『魅了の香水』を無効にするアイテムをつかってみても問題ないな?」
国王から笑みが消えた。国王の言葉の後に後ろに居た影の一人が何か小さな小瓶を懐から取り出し、チート主人公の頭からかけていった。
チート主人公は「ふー、ふー」と叫んでいるのがわかる。『魅了の香水』は自分よりレベルやステータスが低いものを魅了状態にするというもの。
ただし、親密度が10以上ある場合に限るという注釈がついている。私は当たり前だがチート主人公への親密度はプラスどころかマイナスだ。
私以外にもマイナスや親密度が10以下の者は多い。国王や王妃もそうだろう。おそらく火クラス以外のクラスメイトもそうじゃないかな。
私は何もしていないけれど、勝手に噂話しが広まり嫌悪感を持った生徒は多いしね。私が何かすると影がすぐ王妃に報告するから、私は潔白じゃないといけなかったもの。
この辺りはチート主人公がバカで本当に助かった。
そうそう、『魅了の香水』の効果が切れたけれど、元々親密度が高かった攻略対象は変化はなかったけれど、それ以外のものには変化が起きた。
明らかに自らの立ち位置を変えたり、怒りに震えているものがいたからだ。
「ふざけるな!」
「人の感情を弄ぶ非道が!」
「貴族として最低だな!」
色んな声が上がっている。その声に押されてレイリ男爵は土下座をした。
国王が手に持っている王錫で地面を叩く。その音で周囲は静かになった。周囲にいるものは今の国王が機嫌がたいそう悪いことに気が付いている。
「それでレイリ男爵申し開きはあるのかな?」
国王はにやにや笑っている。
「・・・いえ、ございません」
「ならば極刑を受けるがよい。レイリ男爵家は禁制の商品を使い、学園を混乱させた責任を負う事で廃嫡。一族は3親等まで斬首。以上だ。連れて行け」
国王はそう吐き捨てるように言った。
「父上!待ってください。しフ嬢は騙されたんです。だから、彼女については斬首ではなく減刑をお願いします!」
アルベイン王子がそう言って来た。後ろに護衛のように立っていた、土担当のリッテン・フォン・ハルー侯爵子息も同じように頭を下げて懇願している。
この場にいるハルー侯爵の顔色が悪い。動いて息子であるリッテンの頭を叩きたいのだろうけれど、国王が睨みつけているため勝手に動けない。
この辺りは武人って感じだよね。ちゃんと上を立てる人だし、礼儀もしっかりしている。
「アルベイン。それとハルー侯爵子息よ。そのものは誰に騙されたというのかね?」
国王の目は笑っていないが口元は三日月のように笑っている。すごく怖い。
「「オードリーヌ・フォン・コンラディンです!!」」
二人は間髪入れずに私の名前を叫んだ。すごいね。そこまで洗脳されるって。
「証拠はあるのかね?」
国王はにやにやと笑っている。目は優しいのが余計に怖い。
「そこでオードリーヌが捕えられていることがその証拠です!」
アルベイン王子がわけのわからないことを言い出した。面白そうなのでアルベイン王子の主張を聞いてみることにしたのだ。
いや、一番楽しんでいるのは国王なのかもしれない。




