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~魔法戦を楽しんでみる~

~魔法戦を楽しんでみる~


「辞退するのなら今のうちだぞ。私は怒っているのだ。だから手加減なんぞできんからな!」


 アルベイン王子がそう言って来た。私が戦おうと思っていたのだけれど、セギュール公爵が「娘が不正を疑われておるのじゃ。払拭させてもらうぞ」と私のお父様に話した。


 話したと言うか有無も言わさぬような感じだったけれどね。


 なので、場所は魔法演習場に移動になった。


 魔法演習場は防御魔法がかかっている。即死レベルの攻撃を受けたら、場外に転移させられるのだ。


 だからどれだけ魔法演習場で戦っても相手が死ぬことはない。そして、この場外に転移させられる魔法はこの国の最高峰の魔法でもある。


 不正なんてできないものなのだ。


「オディ。ちょっと楽しんでくるね」


 シャーリーはすでに戦いのため学校指定の戦闘用の服装に着替えている。皮の胸当てに茜色のシャツにクリーム色のズボンに黒いブーツ。かわいさはどこにもない。ダンジョンドロップやショップで購入することもできるが、こういう公式の場の時は学園指定のダサいのがよいと言われている。


 まあ、空気を読まない人はいるよね。アルベイン王子は青いジャケットを着ている。しかも黄色の大き目のボタンに、白いひらひらまでついている。ズボンは白で黒いブーツを履いている。


 学園指定なのは黒いブーツだけかしら?違うわ。あの装備品って全部魔法の防具よね。防御力を上げるやつ。


 なりふり構っていない感じだよね。後、なぜかチート主人公のしフも戦闘用に着替えている。


 こちらは赤いドレス風だ。しかもミニスカート。下には黒いスパッツを履いている。チート主人公と模擬戦をするのか。


 あまり気乗りしないがまあ、受けて立ちましょう。私とて今はチート級に強くなっていますしね。


 というわけで、シャーリーVSアルベイン王子の戦いだけれど、見どころもなくアルベイン王子は瞬殺されていた。


「これは違う。こんなことありえない。ありえないのだ!不正だ。不正に違いない!私が負けるわけがないんだ!」


 アルベイン王子が何か叫んでいるが、どこに不正があったというのだろう?


「ふむふむ、アルベインよ。不正だというのなら、どういう不正があったというのかな?そこに証拠はあるのかい?」


 国王がにやにや笑いながら話している。この笑顔が怖い。目がずっと笑っていないのだ。まるで仮面舞踏会につける仮面の目のような感じに見えるのだ。怖い。


「そ、それはまだわからない。だが、この私が負けるわけがないのだ!!!」


 そう叫んで場外から魔法演習場に向けて火魔法の初級魔法である「ファイアショット」を放つ。レベルは高くない。魔力低いな。このまま放置していてもいいのだけれど、こちらの水魔法の初級魔法である「アクアショット」を放って相殺させる。あ、失敗した。威力が高すぎて水がアルベイン王子に降りかかった。


「な、な、な、何をする!!!こんなこと許されるわけがないだろう!!!不敬罪だ!!!」


 アルベイン王子が叫んでいるけれど、初級魔法で相殺されず、相手に攻撃が届くということはレベル、強さに差がある証拠でもある。


「差し出がましいことをしてすみませんでした」


 私は立ちあがり国王と王妃に向かって謝罪した。


「これで、アルベインよりコンラディン公爵令嬢の方が、魔力は上であることが証明されたな。ならば、クラス対応戦で不正はなかった。そう判断できるな」


 国王が周囲を見ながらそう話す。これは意見を求めているのではなく、決定事項の通知だ。


「え~わからないじゃないですかぁ?不正かもしれませんわよぉ。だって、どうやってぇ、そこまでぇ、強くなれたんですかぁ?」


 空気を読まないチート主人公がいた。国王の表情が無になった。ってか、ステータスカンストしているお前が言うか?


 文官の一人が前に出て説明をする。


「コンラディン公爵令嬢から、生徒の強化について提案を受けており、すでに多くの生徒が強化に協力をしてもらい実績も出ております。そのため王国として不正はないと判断しております。そして、いましがた成績についても問題ないことが今証明されました。問題ありません。何かございますか?」


「私ぃ、よくわからないですぅ。なんですか?その強化の方法ってぇ?」


 チート主人公ってメンタルが鋼か何かで出来ているのだろうか?


「妾から言ってやろう。コンラディン公爵令嬢は水クラス、風クラス、土クラスを取りまとめダンジョン攻略を効率的に行うと共に、マジックポーションの提供も行ってくれたのじゃ。きちんとダンジョンで入手したドロップ品は領主および国に報告の上、献上までしておる。どこかのクラスは手続き、ルールも無視し、勝手にダンジョンにもぐり、ドロップ品を個人で所有しておったがな」


 王妃がそう説明した。


「個人でぇ、所有するのがぁ、なんでぇ、問題なんですかぁ?意味わかんないんですけどぉ?」


 チート主人公はそんなことも知らないのか。ああ、そうか。『ハナコイ』のゲームでは関係なくダンジョン攻略できたものね。


 でも、ここは『ハナコイ』に似ているけれど違う世界なのだ。ダンジョンがある領主にダンジョン攻略の伺いを立てないといけないし、入手したダンジョンドロップ品は報告する義務がある。


 ダンジョンは適切に管理され、ダンジョンからモンスターがあふれないように調整する必要がある。


 まあ、定期的にモンスターは復活するから枯渇することはないけれど、ダンジョンは鉱山なんかと同じ領主が所有する資産でもある。


 そして、勝手にダンジョンにもぐり、ドロップ品を得ることは犯罪行為でもある。


 授業でも習う基本的なことだ。授業もほとんど聞いていなかったんだろうな。


「そう言えば、アルベインは無報告でダンジョン攻略をしているものたちのことは知っているのかな?それが犯罪行為だと知っていて何もしていないのなら同罪だよ」


 国王がにやにや笑いながらそう言っている。


「そんなのぉ、おかしいじゃぁ、ないですかぁ?モンスターは倒されて被害はでないしぃ、私たちはぁ、レベルが上がるしぃ、お金もアイテムもぉ、手に入るんですよぉ。誰も困らないじゃぁ、ないですかぁ?」


 あ~やっちゃったな。国王はアルベイン王子に話しかけている。つまり、ここで言葉を発していいのはアルベイン王子だけだ。


 チート主人公が声を発していい場面ではない。


「アルベインよ。その女が本当に良いと言うのか?」


 国王はチート主人公を無視してそう言った。顔はもう笑っていない。


「もちろんでございます!」

「アルベイン!」


 チート主人公は喜びアルベイン王子に抱きつく。


「そうか。ならばこれからはお主たちの罪について話しをしていく。良いか?」


 国王が冷たくそう言い放った。


「え?なんでぇ?だってぇ、これからぁ、そこのぁ、オードリーヌをぉ、断罪するんでしょ?突き落されたのよぉ」


 チート主人公はそう言って駄々をこねた。まるで子供みたいだ。


「仕方がない。茶番につきあってあげようじゃない。なら、思うようにしてみるがいいよ」


 国王はそう言った。でも、すでに顔から笑みは消えている。その表情は悪魔的にしか見えなかった。


 ああ、これもう終わったな。


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