~ナタリーを鍛えてみる~
~ナタリーを鍛えてみる~
お兄様のおかげでカイ男爵とは良好な関係を築けるようになった。というか、ビジネスの話しを振られたが、当たり前だが、『ハナコイ』にそういうイベントはない。
お金を入手するにはダンジョンを攻略するというどちらかというとRPG要素の方が強かったのだ。
カイ男爵はダンジョンドロップをメインにしておらず、他国ではあまり重要視されていないけれど、スミュール王国では価値が高いものを取り扱っているのだ。
そのため、かなり儲かっているそうだ。
「ダンジョン攻略をしてくれるものがいれば良いのだが」
スミュール王国内の商人はお抱えの冒険者を抱えている。この『ハナコイ』では主人公と攻略キャラが共にダンジョン攻略をするというのがある。
もちろん、どのキャラとダンジョン攻略するのかは重要なのだが、ダンジョンには属性もあるため、特定のキャラだけを選べばいいとわけじゃない。
まあ、チート主人公なら一人でも中級ダンジョンまでなら困らないだろうな。いや、チート主人公でも属性が『火』だから『水』の中級ダンジョンは苦戦するかもね。
すでに攻略を勝手に進めているみたいだからそっちは放置しておこう。
私はナタリーを鍛えることを決めたのだ。
中庭でお昼を食べている時もナタリーは挙動不審だった。
「わ、わ、わ、私も、こ、こ、こ、ここに、す、す、座るんでスかぁ?」
なんか昼食を一緒に食べるのだから当たり前でしょと思ったがかなり緊張しているのがわかった。
「それで、ナタリーの属性は『水』なのよね?」
私がそう聞くとナタリーは微妙な表情になった。
「わ、わ、私の、ぞ、ぞ、属性は『水』とそのひ、ひ、『火』なんです」
相反する属性を身に付けていたのか。そりゃ、魔力暴走もするってものだ。でも、私は4つの属性を身に付けているからよくわかる。相反する属性は何も対処をしないと予想以上に魔力制御が難しいのだ。
これは、このオードリーヌ・フォン・コンラディンの身になって初めて知ったことだ。
「私は全属性持ちよ。だから相反する属性の制御方法は理解しているわ」
そこまで難しくない。右手と左手で別々に魔法を発動させればいい。
『水』と『火』の複合魔法はあるのだが、かなり制御が難しい。冷たい炎というのがあるが、これは習得するのにものすごく時間がかかった。
その習得方法について教えたら2日かかったが、ナタリーも魔力制御ができるようになってきた。
「わ、わ、私が、こ、こ、こんな感じで魔法を使えるなんて!」
ちょっとずつナタリーも自信がついてきた感じがする。本当にちょっとだけれど。
「そうね、ナタリーには初級ダンジョンを攻略してほしいの。王都近くにある『火』のダンジョンと『水』のダンジョンをクリアしてきてほしいの」
今のナタリーだと初級ダンジョンでかつ、弱点、火のダンジョンでは水魔法を、のように使えば問題なくクリアできるはずだ。
「そ、そ、それは、お、お、お、お二人もつ、つ、ついて来てくれるの、で、で、ですか?」
「「行かないわよ」」
シャーリーと返答が被った。高位の貴族はダンジョンなんかに潜らない。私たち貴族が戦うのは国防の時だけだ。
このスミュール王国が外国から攻められたら貴族は立ち上がり戦う。ダンジョンにもぐるとか、モンスター討伐くらいで貴族は戦わない。
まあ、自分の領地に盗賊が出たり、問題が起きれば戦うけれどね。
そう思いながら、風担当のセドリック・フォン・スカルポンの領地の盗賊狩りの話しを思い出した。
鉄鉱石の供給はないため、かなり渋っていたが、スカルポン侯爵は被害を出しながら盗賊は掃討したという。
ただ、破損した武器や防具については、買い替えではなく修繕で対応をしたらしい。
見た目が悪くなるため、スカルポン侯爵は歯を噛みしめながらその選択をしたと。後はセドリックがかなり実家で肩身の狭い思いをしているみたいで、その傷ついた心をチート主人公が癒しているらしい。
あの媚をうるようなねっとりした話し方を聞くとイライラしちゃうんだよね。でも、だからと言って何かをするつもりはない。
それにマジックポーションについてはダンジョンのボスがドロップするダンジョンがある。
しかも、そのダンジョンはコンラディン公爵領にあるのだ。つまり、チート主人公が攻略できない。
だって、コンラディン公爵がダンジョンへの立ち入りを許可しないですものね。うふふ。
更に初級のダンジョンだ。だから少しずつ水クラスの人間を誘っていこう。火クラスには負けていられないものね。