まあ結局、人はないものねだりをしてしまう生き物なのでしょうね。
皆さんどうもこんばんは。
今宵は月が綺麗ですね。深い意味はありませんよ。ただの客観的な事実です。近頃は空を見上げる人が少なく、少し寂しく思っているんですよ。
おや、窓から外を見ている少年が二人いましたね。しかも同じようでいて、全く別なようなことを考えているようです。面白そうですね。ちょっと覗いてみましょうか。
「はあ……」
こちらは東京にある高層マンションの一部屋。そこで窓の外を見て、一人の少年がため息をつきました。
空を見上げても星は見えません。曇っているわけじゃありませんよ。都会は民家やビルなどの明かりが多すぎるため、明るすぎて星が見えないのです。見えるのは明るいビル群の明かりと、大きなまん丸の月ばかりでした。
「田舎では、星がいっぱい見えるんだろうなあ…………」
空を見上げ、少年は思わず呟きました。
田舎の夜空を想像してみます。
勉強で疲れた夜。ふと思いついて窓を開き、空を見上げれば、そこには満天の星空があるのです。ああ、なんて素敵なんでしょう! 疲れも吹き飛ぶに違いありません。
「はあ……」
田舎の星空に比べれば、目の前の夜景なんて、明るすぎる人工的な明かりにすぎません。
頬杖をつき、少年は再度ため息をつくのでした。
「はあ……」
こちらは田んぼの近くにぽつんと佇む一軒家。そこで窓の外を見て、一人の少年がため息をつきました。
目の前は真っ暗で、ほとんど前が見えません。停電なんてしてるわけじゃありませんよ。田舎は家が少ないので、明かりがぽつぽつとしかつかないのです。一際明かりを放っているのは、夜空の星と大きなまん丸の月ぐらいでしょう。
「東京の夜景は綺麗なんだろうなあ……」
外を見ながら、少年は思わず呟きました。
東京の夜景を想像してみます。
東京の窓から見る夜景はさぞかし綺麗なことでしょう。ビルの明かりがそこら中にあり、どこを見てもキラキラ光って明るいのです。ああ、なんて素敵なんでしょう! ずっと見ていたくなるに違いありません。
「はあ……」
東京の夜景に比べれば、田舎の星空なんて、ちゃちなおもちゃの明かりのようです。
頬杖をつき、少年は再度ため息をつくのでした。
……まあ、結局。
やはり人は、ないものねだりをしてしまう生き物なのでしょうね。こういうこと、よくありません?
ちなみに私は何回か見たことありますよ。高い場所にいると、どうしても目に入ってくるものなのです。まあ、私が出ていられるのは夜の間だけなのですが。
今日はよく晴れていたので、少年たちからも私がよく見えたことでしょう。今夜の私は一段と綺麗なので、見てもらえると嬉しいですね。
それでは皆さん、良い夢を。今宵も月が綺麗ですよ。