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天空の妖界  作者: siguhatyou
出会い
14/15

千宮司先輩VS雪撫

「……という感じで課題は終わりました。まぁ見ていたかもしれませんが報告です」


 俺達は家に帰宅して千宮司先輩へと事の顛末を全て話した。御社の姿が見えないと思ったら、彼女は二階の掃除をしてくれているそうだ。俺達の帰宅を階段の上から確認すると、すぐに戻っていった。


「うむ。最後に二人でコントを始めたところ含めて見ておったよ。まずはおめでとう。それと、金を受け取らなかったのも評価しよう。受け取って帰宅していたらお主は今頃この畳に頭から突き刺さっていただろうよ」


「俺ってドリルかなんかですか……?」


 平然とした顔で言っているあたり本気で言っているのだろう。別に貰う気は毛頭無かったのだが、冷や汗が額から流れるのを自覚した。


「雪撫の実力も見事の一言に尽きる。あの大海原を一瞬で凍らせたのはそれ以上の言葉が出ぬよ。しかも自然にある海ではなく、こやつの結界内。妖力がたんまり含まれていただろうに」


 そう言って千宮司先輩は俺から受け取った札をぴらぴらと振る。中に封印されている牛鬼がどんな状態なのか分からないが、随分と雑な扱いをする人だ。


「して雪撫」


「あ、はい!」


 別に説教されている訳でもないのに俺を真似て正座をしている雪撫が千宮司先輩の方へと目を向ける。


「妾とはいつ全力で戦ってくれる?」


「えっ――」


「いや、それ俺の体は原型保ってます?」


「冗談じゃ。雪撫も今回本気で戦っている様子は無かったしな。まだまだ底が見えぬな」


「やっぱりあれってお前の全力じゃないんだな……」


「あはは、だってどこかから視線を感じていたからね。でも牛鬼を舐めていたとかそんなことはないよ。真君の体が傷付いちゃうし」


「ほー、妾の視線に気が付いていたのか。目の前に敵がいて尚その余裕があったとは……やはりお主、妾の為にその体を使ってくれぬか?」


「いやだから、それだと俺が死ぬって――」


「……駄目?」


 先輩は目は吊り上がっているものの、幼い顔立ちをしているからか意外に上目遣いが似合う。確かに可愛いと思うが、自分の命を天秤にかけられて色欲を選ぶのは余程の阿呆か死にたがりだろう。


「駄目に決まってんだろ。何を可愛く殺して良いですかって聞いてくれてんだ」


「ちっ。……ん? おいお主、連れは引っかかっておるぞ」


「はぁ?」


 千宮司先輩の指さした先に視線を移すと、雪撫が口を押えて千宮司先輩を見入っていた。その瞳は小動物を眺めている時の人間の視線ではないだろうか。


「……雪撫?」


「あ、ごめんなさい。可愛いのに戦意が高まっていたのに思わず見惚れちゃった」


「え、可愛いのになんて?」


「戦意が高まっていたって言ったの。千宮司先輩とやる機会があったら是非やりたいです!」


「あぁ……」


 違った。小動物を眺めている肉食動物の視線だった。千宮司先輩と雪撫はどうやら似たもの同士のようだ。二人共強者が心から大好きで惹かれる性格。今一歩でも動けば首に刃物が当てられそうな敵意のぶつかり合いを肌で感じている。

 体を渡して現実逃避をしてしまいたいが、もれなく家はあっても帰る場所が無くなるだろう。


「ま、また機会があったらだな」


「えへへ、楽しみにしておきます」


 俺の様子を見た千宮司先輩が警戒をやめると、それに習って雪撫も警戒を解いた。


「凄い殺意を感じたから思わず降りてきたけれど……真君大丈夫?」


「あぁ、あと一秒殺意が続いていたら無事じゃなかったかもしれないよ。御社、掃除ありがとうな」


「良いのよ。どうせバルコニーしか掃除する場所ないし」


 何もない家で悪かったな。


「あっ、お主に問うが体を戻すときはスムーズに戻せるのか? よくある話だが、何度も交代すると新しい人格に喰われるとかあるじゃろ?」


「まーったく無いですね。何も問題なく交代出来ますよ」


「んっ――あ、そ、そうか……」


 嬉しい報告の筈なのに千宮司先輩は俺の返答が不満そうだ。俺っていつの間にそんな嫌われていたのだろうか……?


「違うわ真君。きっと先輩は雪撫ちゃんのせいで戻りにくいって事があったら戦う口実になったから不満なのよ」


「なぜ俺の心中読めて適格な返答が出来ているのかわからないけれど、まぁ御社がそう言うならそういう事なんだろうな。全く、諦めたんじゃないのかよ。そんなしょうもない喧嘩させないぞ」


「ふむ、先輩への気遣いを教育してやろうか?」


「直前まで戦っていた後輩の体を気遣ってから頼みます」


「なるほど負けた」


 一体何の勝負をしていたのだろう?


「さて、そろそろ真面目な話に戻ろう。お主らどうする? 学園に戻るかまだ少しいるか。夢現とやらを探したいんじゃろ?」


「いやぁ、この周辺に妖気を感じられないので正直雲の中で綿あめを探すような状況でして……」


「砂漠の中で砂金を探すって言いたいのか……?」


「可愛い表現をするのぅ……それならば学園で情報を集めてみるか? 幸い妖気ですら感知できぬ程気配は消せるし問題は無かろうよ」

感想等お待ちしておりますぅ


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