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巷で噂の謎の人間?

分かりにくかったり、回りくどい表現があればご指摘お願いします。

 帰還してから3日が経過した。いやはや、これは参った。とてつもなく、面倒なことになった。それはもう、冷や汗ものだ。


 俺は()()()に向かって威力の低い、地味な魔法を放つ。()()()の体は抉られ、絶命した。


 俺は何をしているのかというと、魔物退治である。お陰で寝不足だ。今日は土曜日で朝の10時頃にさしかかる。


「学校休む訳にはいかないし、どうしたものか」


 昨日は学校が終わるとすぐに山の中に入って、魔物が現れた原因を探していたが、山は広いうえ放課後からの活動となる。なぜ急に現れるようになったのかはわからないが原因があるはずだ。それを見つけて解決しないことには、平和が脅かされてしまう。

 ゴブリンは弱いけど、地球人にとっては普通に脅威だ。日本には銃が無い。ましてや身を守る武器も持ってない。


 一般人がゴブリンに襲われたら確実に殺されてしまう。それは避けたいので、とりあえず魔物探知を周囲に放って気配を探る。


「これで全部か?」


 昨日は3匹、今日は朝から5体始末した。この調子ではもっもいてもおかしくは無い。そう思って山の中を探知魔法を発動しつつの探索である。周囲には特に魔物や魔獣といった存在を感知することはない。念の為、もっと山の中を探索することにする。運が良ければ異世界の生物がこちら側にいる原因がなにか掴めるかもしれない。


 しばらく探索をして、昼食を食べに帰ろうとしたところ、森の入口付近に複数の気配を感知した。


「なんだか人の気配が集まってるな、見ていくか」


 森の木の合間を縫って、気配を消しつつその集団に接近し観察する。


「この山には、UMAが実在しております! 正体不明の猿に似た生物に襲われた人もいて、証拠映像や目撃証言もあります」


 カメラマンや、レポーターみたいな人達が現地取材をしているようだ。


「そのUMAを退治する謎の人物も目撃証言としてあがっております」


(もしかして俺のこと? 監視カメラに気をつけないと写っちゃうなぁ)


 カメラの事も気にしないといけないのか。防犯カメラや車載カメラ、スマホのカメラなど、カメラだらけである。一応、認識阻害の魔法はかけていたけど、カメラにも効果がどこまであるよかわからない。

 そう考えると、今後は覆面でもした方がいいかもしれない。


(ふむ、ここは離れるとするか。山から子供が出てきたら怪しまれるかもしれない)


 気配を消して反対方向に移動する。すると今度は魔力とは違う歪な気配を感知した。

「なんの気配だこれ?」


 妙な気配のする方に進むと、空間に穴が空いている。そこは俺が帰還した場所だろうか?分からないけど、そんな気がする。


「薄々気づいてたけど、やっぱり俺のせいだよなぁ」


 ゴブリン共が現れたのは俺がこっちの世界に帰ってきたのと関係はあるとは考えてたけど、こんな空間に穴が空いてるとは思わなかった。こんな穴、最初はなかったから。


「時空魔法で閉じれるか試してみるか」



 とりあえず、このままはよろしくない。またゴブリン共が来るかもしれない。それと、あのテレビクルーの人達に見つかる前に処理しないと大事だ。この歪みは危険だ。今後、穴から何が出てくるかわかったものでは無い。この歪みに興味をもった人が近づいてきて魔獣や魔物に襲われる可能性は十分に考えられる。


 魔力を練ると、ブォンと魔法陣が浮かび上がる。時空の穴を閉ざす魔法を放つと、その歪みからバキンと音がした。


「・・・え?」


 穴がもっと大きくなってしまった。これには焦る。

 魔法を間違えたわけではない。今度は、時空を修復する魔法をぶつける。


 バキンッ!


「更に広がってしまった」


 なんだか、嫌な予感がするんだよな。つつけばつつくほど悪化する。


 頭を悩ませると、歪みから強い力が発せられたかと思えば間もなくグググと、空間から大きな前足が這い出てきた。


「ちょっと待て待て待て! スクリームリングベアかよ」


 俺はすぐに攻撃をしかける。早く対処しなければマズイ!


「グオオオオオオ!!!」


 喉を潰そうとするも 、咄嗟に腕で防がれて、目論見が外れてしまった。あまりの声に鼓膜が破れてしまう。一切の音が聞こえず、頭が痛い。目眩でふらつき、耳から出血。

 すぐに回復魔法で完治させる。


「そんな声出したら、さっきのテレビクルーが来るだろが!!」


 よりにもよって雄叫び大好きな魔獣のスクリームリングベアが現れてしまった。大きな体躯をした赤紫の熊で、リングは大音量の音響を可能にする器官だ。雄叫びをあげることで、物理的な衝撃として、怯ませたり攻撃手段として有効なものとなる。


 そこら辺の木の幹より太い前足が、俺を襲う。躱すと後ろの木が難なく折れて、吹き飛んだ。


「暴れるなって。人がくるだろ!」


「グルァァアアアア!?」


 スパッと水魔法のウォーターカッターで輪っかを切り落とすことで、さらなる雄叫びに対処する。喉かリングを潰すのが正攻法だ。


 切り落とされたことで隙だらけになった胴体に、魔法で岩の拳を作り出しパンチを食らわる。その勢いで歪みに接触したスクリームリングベアは歪みに吸い込まれ消えてしまった。


 その代わり、歪みは更に大きくなってしまった。


「嘘だろ!? 歪みを通る度に大きくなるのかよ。よかった、ゴブリンどもを返さないで。もっと大きくなるところだった」


 穴を塞げないなら、穴を広がならないようにするしかない。なので、時空魔法でこれ以上広がることがないよう歪みを囲むように空間固定魔法を展開。直接歪みを弄れないならこの方法しか思いつかなかった。


 穴を塞げなかった以上、人が近づけないようにしなければならない。空間の固定をしたことにより、これ以上広がるとこはまず有り得ない。しかし魔物や魔獣は引き続きこちらにやってくるだろうから、さて、どうしたものやら。


(腹減った。とりあえず帰ってご飯食べよう)


 人払いは確実とはいえないものの、とりあえずは一安心といえる。

 これで、さっきのテレビクルーの人達は引き返しているはず。

 熊の叫び声に反応して途中まで近づいてきたのを感じていたから、早く回れ右して立ち去って欲しい。


 歪みを監視する必要があるため、自分一人だけでは手に負えないのが問題だ。


 ***

 《???視点》


 レオンが去った後、歪みから1人の少女が現れた。肩で切りそろえられた薄い緑の髪と、スラッとした華奢な体型、それと一番の特徴は長く尖った耳であろうか。陶器のような肌と美貌が相まって、まるで精巧に作られた人形と言われても頷けるほど。


「ここはどこでしょうか。なんですかこの空気は」

 ギルドに報告を済ませた帰り、路地裏からおかしな魔力の波長を感じ、足を運んだら気づけば森の中。空気が澱んでいて、お世辞にもキレイな空気とは言えない。


 周りをキョロキョロ見渡すと、それに気がつく。

「これは、《時空の歪み》ですね。これに巻き込まれてしまったみたいです。・・・なにか別の魔法がかかってるようですが、人払いと空間固定魔法でしょうか?」


 しかしこの魔力の質には覚えがある。高度な術式に詰めの甘さがあるこの感じ。1人の少年の顔が浮かぶ。人払いの効果も、この場所を意識すれば誰でも来れてしまうような緩い条件のもの。


 人払いの結界はそこまで難しいものではないので、もしかしたら意図した効果なのでしょうか。固定魔法については、閉じようとして失敗したから、これ以上歪みが広がらないようにした、とかありえますね。《時空の歪み》は下手に干渉するとどんどん拡がることもあるので、この対処法はとても彼らしいというか、不器用で可愛いと思います。私なら《時空の歪み》を閉じることはできる自信がありますが、彼にはまだ技術不足だったのでしょう、などと推測していた。正解である。


「それにしても、彼が消えてからしばらく経ちますが、こんな所にいたのですね」


 ふふふ、と微笑むと少女は彼の痕跡を辿るように、その場を後にした。


 ***


 ご飯を食べて午後の山は、魔物や魔獣を発見できなかった。


「拍子抜けだな。もっと来てもおかしくはないと思ったけど」


 人払いは有効で機能している。ここら辺に人の気配は皆無。なので空間の歪みを広範囲に囲むように土木魔法で壁を作った。こちらにやってきた魔物や魔獣が散布してしまうのを防ぐためだ。なぜ早くやらなかったのかって? 学校生活に支障が出ることを懸念したからだ。ご飯を食べている時に、改めて考えて決心したが、できればやりたくはなかった。その理由は急に森の中に壁が出現したら、不審がられるし、驚くだろう。でも危険と安全を取るなら、安全を取る方がいい。俺も学校がある時は監視できない。テレビクルーの人たちも気配はなく、無事人払いも出来のを確認しての壁づくり。


「よし、帰るか」


 俺は帰った。さすがに広範囲の土木魔法製の壁に魔力をごっそり持ってかれたので疲れた。疲労困憊だ。


 家に帰る途中、気になることがあって寄り道をすることにした。山に面する道路だ。前にニュースになっていたゴブリンが出現して車が事故を起こした所だ。


「ゴブリンは車に轢かれて生きているのか、死んだのか」


 生きていれば、おそらくまだどこかでなりを潜めて生きている。俺がこの2日間で退治した中に手負いのゴブリンはいなかった。匿われているのか、あるいは死んでいれば、死体を誰かが回収したものだろう。


 ネットではCGだということで、あの映像を信じる人の方が少ないが、日本政府が正式に発表した場合のことを考えると、色々問題が出てくる。


 魔法や異世界が公になったら、いかなる事件や精神がおかしいやつが人を殺したりすると、まったく関係の無いことも全て魔法のせいにされてしまうことは想像に難くない。


 例えば、魔法が公になることのデメリットは、犯罪を犯した奴が「俺は魔法で操られていたんだ」そう主張すれば罪が軽くなると考えるやつもいるだろうし、それによって魔法を危険視する人も出てくるかもしれない。魔法という未知の不確定要素を言い訳に犯罪が増える可能性があるのだ。日本はこの事実を公表するだろうか。


 確かに、魅了や催眠の魔法は存在するので、精神に作用する魔法は耐性がなければ容易に掛かってしまう。


「ま、その時はその時か」


 既にこちらの世界に来た魔物は狩った。もし、この山を出た魔物や魔獣がいたら、その時は警察の特殊部隊か、自衛隊が出動することだろう。そう考えた時だった。


 とある近くの民家から出てくるゴブリンを見かけた。


「グゲェ!?」


 ゴブリンからしてみれば一瞬のことだ。俺はすぐに間合いを詰めてウィンドカッターで首を切断した。


 民家からは人が住んでる気配はなかった。

「空き家か?」

 もしくは、既にゴブリンに殺されたか。


「少し、お邪魔してみよう」


 ゴブリンの住処になっていたら大変だ。一応、家の中を確認する。

 探知魔法には反応はない。足を踏み入れるが、やはり空き家だったらしく、血の匂いも死体も見当たらない。


 俺はそのまま家から出て、ゴブリンを灰も残さず焼却してから帰るのだった。



 ***


 《テレビクルー視点》


 私たちはUMAの存在を取材しに山に入っていたが、遠くから得体の知れないお腹の底から響く鳴き声を聞いて足が震えてしまった。恐怖心を煽るその雄叫びは、ちょうどマイクで拾っていた。

 その声に興味を惹かれた人はこの中に誰一人としていなかった。行けば死ぬと本能が告げていた。お小水を漏らさなかった自分を褒めてあげたいくらい。


「も、もうここから離れましょう! 私は行きませんよ!?」

 私は必死に訴えかける。死にたくないですと切実に。


「あ、ああ、俺も賛成だ。あんな声は聞いた経験は無い」

 そういうカメラマンの山田さんは、額に汗をかいて顔が引きつっている。

 他のスタッフがタクシーの手配をしていた時、私は見てしまった。遠くにいた人が、物凄い勢いでガードレールを飛び越え、民家から出てきた子供くらいの背丈の緑色の肌をした生き物に近づいたかと思えば、その生き物の首が落ちるところを。


「ヒッ!! く首がおちッ?! 落ちッ、人殺し!?」


 私は衝撃的な現場を目撃して、なかばパニックになった。あれ、でも、あの人が殺したの? 触る前に首が落ちたよね!?それに 緑色の肌ってこの前に報道された動画で見たけど、あれがUMAなの?


「おい、どうした! なにを見た!」


 私はカメラマンの山田さんに声を掛けられて、カメラで撮るように言った。


「UMAを退治する人がいたんです!!! 撮って! 早く!」


「あ、ああ!」


 UMAを殺した人は民家に入り、しばらくして出てきた。UMAの死体に近づき手をかざすと炎が生まれて、一瞬にしてUMAの死体を燃やしてしまった。そして歩いてどこかに歩いていく。


「どど、どうしましょう?!警察に電話した方が!」


「もう電話させている! 映像に残したから証拠はある」


「どこかに行っちゃいますよ!? ついて行きますか?」


「やめておこう」

 でも! と反論して、続く言葉を遮られる。

「俺らも殺されたらどうする!」

 そう叱咤された。確かにそうかもしれないけど、このチャンスを逃したら次は無いかもしれない。


「警察が来るから、上司にも電話しておく」


 その言葉を聞いて、これ以上の問答は控えた。しばらくして私達は警察の事情聴取を受けてこの件はテレビに公開しないことと、録画したあのデータは警察に渡すように言われた。

 警察からは、口外しないことを約束させられた。

 現場は封鎖され、立ち入り禁止になった。


「上司に連絡しちゃったけど、あんまり誤魔化せねぇよなぁ」

 そんなことをカメラマンの山田さんが、口走っていたのが印象的だった。警察には、誰にも伝えていないという嘘をついたのだ。


 ちなみに、あのUMA殺しの人の顔は遠くで見えなかった。警察に回収される前に、データを複製していたし、顔を拡大して見たけど

 やっぱりよく分からなかった。

詰めが甘くて、どこか抜けた主人公をお楽しみください。



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