異世界から帰還、おめでとう
プロット組まずに書いているため矛盾があるかもしれません。
この物語が気に入ってくだされば幸いです。
よろしくお願いします。
日本のみなさん、ごきげんよう。やっぱり日本は素晴らしい。そう思わない?
ご飯は美味いし、平和で治安は大変よろしい。
異世界なんて不便で危険な所、好き好んで行きたいとは思わないですよまったく・・・。
武器や魔法が日々飛び交う世界は、危険と隣り合わせで、日常生活すら警戒しなきゃならないし、遠出すると基本は獣車だし、魔物や魔獣、盗賊は襲ってくるし、貴族と関わると権力者からは目をつけられるし、利用価値があると分かると、政に巻き込まれて、どこぞの貴族令嬢と結婚させられそうになるし、派閥争いとか知ったこっちゃないのに、お世話になった貴族の敵対勢力の騎士や暗殺者とかに狙われるし、歳を取らないと分かると、人外認定されて神のように祀られたり・・・なんか色々あったな。
見た目も日本人だから、地元民の人達と人種が違うからそもそも奇異な目で見られるし。言葉も本当なら通じないはずだ。というのも異世界に召喚される時に連絡するね
でもやっぱり一番の問題は・・・
(仲間を置いてきたことか)
「やっと、あぁ、やっと帰ってこれた。地球に、日本に・・・。すぅ、はぁ〜。あー、空気不味いわァ」
時空魔法で開通した地球と異世界を繋ぐゲートをくぐり抜けて早々、発した第一声が、空気不味い。いや、異世界は、自然が豊で空気は美味しかったんだよね。
木々に囲まれて、人の気配が皆無な場所に運良く登場。
あ、はい、異世界から日本に戻ってきました。赤坂麗音です。男です。見た目は少年、中身はおっさん。
というのも、異世界にいた期間はざっと40余年。
中身はいい歳したオッサンだよ。でも身体は召喚された時と変わらずの中学生。
向こうで歳を取らなかったから、日本に帰ってきたら急激に老けるのかと思って身構えたけど、そうならなくて良かった。玉手箱でおじいちゃんになる浦島太郎なんて御免だね。
「さて、これからどうしようか」
木々の隙間から見える、斜陽で茜色に染まった景観を眺めては、実家の家を思い出す。
もしかしたら、両親は既に亡くなっているかもしれない。なにせ40年以上経っているのだ。生きていても80歳から90歳くらいか。
ついさっきまで、長い年月を掛けて生み出したこのゲート魔法の完成に、期待と不安を抱いていた。
「さて、地球でも魔法は使えるのかなーっと」
ブォンと、魔法陣が指先に生まれると、光の球体が浮かぶ。
「お、使える使える」
40余年の異世界ライフで得た魔法が無駄にならずに済んで良かった。
魔法を使えれば生活に役立つこと間違いない。
特に魔法なんてない地球では、かなり便利だろう。
「さて、それにしても、ここは何処なんだ?」
生い茂った草木のただ中にいて、風が草木を揺らす音が聞こえる。その中にギーチョギーチョと、虫の鳴く音も混じっている。
森を抜けたら実はまだ異世界でした〜ってことは無いよな?
そんなオチは嫌だな。
しばらく進むと、ブロロロ〜と、何かが凄い勢いで通り過ぎる音が聞こえた。すぐにピンときた。
「もしかして、車か!?」
音のする方に枝葉をかき分けて進むと、山に面した道路に、車が通り過ぎていく。
イエス! イエス!
40年振りに聞く車の音! 懐かし過ぎる。感動さえ覚えるね。
異世界では魔獣の引く獣車が一般的。
なので、鉄の塊が動くのは懐かしさがある。
ゴーレムで車作りに挑戦して、コストがかかり過ぎて量産は出来なかった異世界事情を思い出しての寸感だ。
もはや、家の場所も忘れた・・・訳では無いけど、現在地も定かでは無いので、帰ることもままならない。
とりあえず、ヒッチハイクでもしてみるか。
山道の道路で、片手を挙げて車を待つ。
ブロロォ
無視された。
ブロロォ...キキィ...ブロロォ
道路を膨らんで避けられたし、顔が引きつっていた?
「ふむ、日本はこんなに冷たい所だったのか。異世界だともう少し人情あったけどな」
次が来た。トラックだ。
今度は両手を振る。
どうやら止まってくれるようだ。止まると窓から運転手のおじさんが問うてくる。
「どうしたこんな所で?」
俺も歳をとったらこんな感じになるのかね、そんなことを思いながらの受け答え。
「道に迷ったので、乗せて貰えませんか?」
「こんな山道で、1人か?坊主。歩きで?」
訝しそうな顔だ。怪しまれている。
「えぇ、まぁ、そうですね」
「おいおい、なんか事件か? まぁいい、乗ってけ」
おじさんは少し考えたあと、乗せてくれた。
「ありがとうございます」
道中、色々聞かれた。山の中で1人で何していたのか、
歩いてきたのか、家はどこなのかなど。
当たり障りのない返答で誤魔化した。
最初は幽霊かと頭を過ぎったりしたらしい。確かにそうだ。
山道に一人でいたのだから。先程顔が引きつっていた車の運転手も、俺を霊だと思ったのだろう。霊ではなくても、意味ありな子供に関わりたくないと感じるのも無理は無いことだろう。
とりあえず、最寄りの交番にお世話になるみたいだけど、これは判断に迷う。なにせ40年も過ぎているのだ。自分の戸籍はどうなっているのだろうか。行方不明として処理されて、死んだものとなっているかもしれない。それが、今になって帰ってきたらそれはもう一大事な訳で。これは、不味いかもしれない。適当に下ろしてもらわねば。
そんなことを思うと、異世界から日本に逆召喚したみたいだな、とかなんとか思い始めた。いや、その通りっちゃその通りか。
ふと、新聞を見る。
「あの、これって今日の新聞ですか?」
「あぁ、そうだ。中学生なのに新聞読むのか?」
「いえ、あまり読みませんね」
日付を見ると、なんとビックリ。自分が異世界召喚されてから、日時は進んでないように思う。当時の日付の、あまり正確な時間は覚えていないけれど、少なくとも1年は経っていない。もしかしたら時間が進んでおらず、俺が異世界召喚されてから、そっくりそのままの時間の可能性もある。これには俺も混乱だ。驚きと安堵が一緒に来たぞ。
であれば、両親も変わらず生きている。家も変わらない。
これは喜ばしいことなのだろうか。
あの異世界にいた間、こっちの世界は時間が進まない、ということになる。俺の体が異世界で老けなかったことと関係があるのだろうか。
15分ほどが過ぎた頃合、山道を抜けた。なんとなく見覚えがある景色だ。朧気ながら記憶を辿る。
俺の家が近いな。
交番に無事送り届けられて、トラックの運転手にお礼を言う。
一応、軽い事情聴取された後、程なくして親が迎えに来た。
警察官から両親に一通り説明された後、お礼を言って車に乗り込んだ。
* * *
帰りの車内での会話は、当然の疑問と気遣うような質問を投げかけられた。
母さんとの会話は嬉しく思うし、懐かしさを感じる。もしかしたら、まだ異世界にいて、帰ってきた夢でも見ているのではないか、そんな疑念さえ感じる。
「麗音、あんたなにしてんのよ、学校は?」
母さんの顔は記憶と寸分たがわず、母さんだった。老けた様子は無い。
「学校の帰り道、冒険しようとしていつの間にか山の中入っちゃって迷子になった」
「はぁ、なんでまたそんなことを? 学校でなんかあった?」
「いやこれと言ってないよ」
そういえば学校のクラスメイトの顔や名前を覚えてない。これは学校生活に支障が出る。
「・・・あんた、なんか変わった? 雰囲気とかまるで別人よ」
自分ではあまり実感が湧かないので、親が言うのなら変わったのだろう。
「そう?子供の成長は早いんだよ、成長期だし」
「なんか誤魔化してるでしょ」
「そんなことないって、母さん。あ、久々に母さんのカレー食べたいかも」
「え? カレーなら昨日食べたでしょ?」
それは残念だ。
「そうだっけ。今日は、ご飯何?」
「餃子とチャーハン」
「そっか、楽しみだ」
異世界では食べられなかったなぁ、餃子。
グッとポーズを取ってしまった。バックミラーでそれを見られていた。ジト目だ。
「・・・やっぱり、なんか変よ?」
「なんでもないって」
そんなこんなで、家に着いた。記憶の通りの一軒家。テレビを見て、ご飯を食べ、お風呂に入って体を洗う。
シャンプーも、ボディソープも、めっちゃくちゃ凄いな。髪の毛ごわつかないし、いい匂いだ。お肌スベスベなんだけど。
といった感慨も一入。
自分の部屋に入ると、やはり懐かしい。当たり前だけど当時のままだ。だってこっちはまったく時間が進んでいない。
それと、部屋が狭く感じた。異世界では普通に一軒家、というか屋敷を買って仲間のみんなで暮らしてたし、部屋の広さもかなり広かった。
テレビもあっちはほとんど普及しておらず、街中で大型のホログラムみたいな装置でニュースが放映されているくらいだ。
ゲーム機を見て「うわ懐かしいな」そう一言呟きベッドに横たわる。記憶の中にあるゲームのプレイ内容を思い出すも今はやりたいと感じなかった。
しかし、The・男の散らかった部屋だな。
屋敷は魔導人形のメイドに管理させていたから、散らかってもある程度は整理整頓してくれていた。
「少し片ずけるかぁ」
***
片付けをしていると母さんが階下から大きく「ご飯よー」と呼ぶので、俺はすぐにリビングへ。
母さんと食卓を囲んで食べる。父さんは仕事だ。いつも夜遅く帰ってくる。テレビを見ながらご飯を食べる。
やっぱり日本は素晴らしい。そう思わない?
ご飯は美味いし、平和で治安は良いし、娯楽は多い。
異世界での生活は、本当に大変だった。でもそれが俺にとっては当たり前になっていた。
こっちの世界では両親がいて、日本は平和で魔物もいないし、暗殺者もいない。でもどこか落ち着かない、というか寂しい感じがする。
あっちで過ごした時間の方が長いから、日本での生活にズレがあるだろう。これからはあまり人と関われないかもな。
異世界で関わった連中を思い出す。
あいつら、俺が居なくなっても元気でやってるだろうか。
テレビの音をBGMに母さんと2人の雑談をする当たり前の光景はしかし、やはり異世界で騒がしかった連中はもういないため、寂しく感じるのであった。
修正しました。