無限地獄
驚く事に気が付いた。自分の意志がある、でも辺りを見渡すと真っ暗だ。
一筋の光も射さない、経験した事の無い暗さだ。そして1秒2秒と数えて見るけど、その暗闇に目が慣れる事は無い。
手足の感覚はある。今自分が所謂体育座りをしているのも分かる。
でも何も聞こえない。風の音どころか、自分の心臓の音さえ感じない。まぁ死んだから心臓も止まったよね、てへぺろ❗これ生前一度やってみたかったこと。
自分以外の気配もないな、あぁ分かった。
ここは無限地獄だ。
子供の頃宗教の子供教育会みたいなので教わった。
自分で死んだ人は「無限地獄」に行かされるのだと。
輪廻転生の輪から外された其処は、光も音もなくただ暗闇が広がり続ける。そして独りぼっちで無限の時を過ごさねばならない。
何故なら崇高な使命を持ちながら、それを果たさずに自らを絶つ事は身体を与えてくれた両親、命と使命を授けてくれた神様に対して、大変罪深い事だから。自分を殺す事は他者を殺す事と同じぐらい罪深いとしなさい。
だから悩み事や困った事があった時は誰かに相談しなさい。家族、友人、宗教の人達、あなたの悩みを真摯に受け止め、必ず正しい方へ導いてくれるから。
小さな子供の頃はそれが、ストンッと何の抵抗もなく身体と心に入ってすぐに馴染めた。
困った時や辛い悲しい時は家族や宗教の人に相談した。必ずと言って良い程に、正しい解答を得られた。有名歌手の歌では無いけど、あの頃は神様がすく側に居てくれた。
だけれど少し大きくなって歴史を学び、太平洋戦争で、国内唯一地上戦が行われた沖縄を知り、ひめゆり学徒隊を始めとする、一般人が戦闘に巻き込まれ、やむ無く自ら命を絶った事が、ひめゆり学徒隊と同年代だった私には深く心に突き刺さった。
折しも家族旅行で沖縄を訪れ、ひめゆり学徒隊の資料館にも行って、当時の資料や1人1人の写真と何処でどうなったか、何処までは分かっているがその先不明、といった資料を見たからだろう。
現代と違って気軽に写真が撮れない時代、カメラに向かって、キリッと真面目な表情の子も居れば、ニコッと浮かべた笑みにエクボが印象的な子、1人1人様々だが確かに生きて、時代に翻弄され自ら命を絶っていた。
可哀想なんて一言で済ますのは余りに傲慢だ、そして彼女達が無限地獄に行かされるとしたら、余りに辛い、悲しすぎる。
生きている時にこんなに頑張ったのだから、辛いことにも耐えたのだから、神様は情状酌量してくれる。良く頑張ったね、辛かったね、最後にした事は罪深いけれども、輪廻転生の輪に入れてあげよう。次はこんな事の無い生涯を送りなさい、と私が幼い頃から信じている神様ならそう言ってくれる筈だ。
そう思ったが確証が欲しくて、私の中で救われた彼女達を得たくて、宗教の幹部と呼ばれる人に答え合わせの感覚で質問したが、それは違っていた。
等しく「無限地獄」に行かされると。
私の学んだ事や考え想いを聞いてくれたうえで、それでもあの日あの時を体験した人達全てが、自ら命を絶った訳ではないと。
残酷な現実の中で必死で生きる事を選択した人達がいるから、現在がある。恐らく死ぬよりも大変な思いをしながら、必死で生きている筈だ。もし私の言うように神様が受け入れるのであれば、それは不平等と言うモノだよ、神様は平等である、そして神様は常に私達を試し導こうとしている、だから彼女達にも選択出来た筈だ。
だが彼女達は選んではいけない方を選んだ、もう分かるよね? と。
この瞬間から私が幼い頃から信じていた神様はいなくなった。
その後答え合わせがしたくて、色々な宗教の本を読み漁った。中学生が読むには難しい内容の物もあったけれど、とにかく片っ端から読み漁り出てきた答えは、神様仕事してねぇじゃん‼️だった。
世の中は不平等だし、情状酌量なんてものもないし、人間を試すにしてもドンだけ試せば納得するのよ!
あぁ本当に神様がいたのは、小さい頃だけなのね。
それきり私の中で神様は居なくなった。
宗教は名ばかり会員で勉強会にも会合にも参加しなくなった。 生まれた時から崇高な使命を与えられるのは、自分なんかではないのだから。どっかの熊犬や、一握りの特別な人達だけなのだから。
結果として外では無心論者や適当な事を言ってその場を濁していた。
そして今、教えられた通りの暗闇に一人きり。
あれ? もしかしなくても快適? 友達いたけど片手で足りる数だったし、友達と遊んだり旅行行くのも楽しかったけど、これでいて気を使う方だから、楽しい分気も使っていた。
1人で遊んだり旅行行くのは超楽しかった❗
好きな所行けたし急に予定も変えられたし、当然好きな物も食べられた。1人で食べた上野のレストランの一万円のランチ、大阪の超有名フグ料理店の高級コース料理、この2つは友達と行く時にも提案したけど、高過ぎると却下されたものだ。
だから1人で旅行した時に美味しく頂いた。物凄く美味しかった、ボッチで来ているのは私だけだったけど、全く気にならなかった。
そりゃそうだボッチ旅行で3日間国会図書館に通って、読みたかった本を読み漁ったのは私だ。ボッチでパンダ見たし、ボッチでもんじゃ焼き食べたし、ボッチでショッピングも楽しんだ‼️
ふむ、そう考えると暗闇は目を瞑っているとすれば良いし、お腹も減らない喉も渇かない。体育座りから仰向けになり、手足をうーんと思い切り伸ばしてみる。
おぉかなり快適‼️ ゴロゴロと転がってみても果てがない超広い‼️
ヤバい、ボッチ上等‼️には快適だわ。暑くもないし寒くもない。輪廻転生、しなくてOKです全然大丈夫です、だってさ必ずしも良い所に行けるとは限らないし。
性別一つで天国と地獄に分かれる地域もあるし、最悪ゴキブリなんかになった日には、カブトムシとの不平等さを嘆くわ。
罰のおつもりの「無限地獄」でしょうが、私にはご褒美でしたね。
なんかすいません。でもボッチ上等‼️イェイ‼️
無限地獄イェイ‼️最高だぜ❗