【鯵の小噺】其の弐 「せつき鯵」のこと
皆様は「せつき鯵」という言葉をご存知でしょうか。
鯵には面白い生態がございまして、同じ種なのに全く違う生活サイクルを取ることがあるのでございます。一つ所に留まらずに回遊する鯵もいる一方で、一か所に留まったまま他に動かない鯵もおります。後者のような鯵を「せつき鯵」と申しまして、漢字にしますと「瀬付き鯵」となります。
また、前者を「黒アジ」、後者を「黄金アジ」「金アジ」と呼び分けることもございます。いずれも同じマアジではございますが、この両者の扱いには歴然たる差がある気がいたします。もうほとんど別の魚として扱われているといっても過言ではないでしょう。
ちなみに、お値段は瀬付き鯵の方がお高め。
回遊しないために小ぶりながら脂乗りがよく、ふっくらとした厚みのある見た目が特徴。「黄金アジ」や「黄アジ」の呼び名は、浅瀬で目立ちにくくするためにほんのり黄色っぽい体色になる特徴に由来するものでございます。
対する「黒アジ」の方は、水深の深い場所で目立ちにくくするために黒っぽい見た目になると言われており、一般に多く流通しているのはこちらの方。網を使って一気に獲る方法が用いられるため漁獲量は多いのですが、その反面鰺の表面が傷つきやすいという欠点もございます。
瀬付き鯵の場合は、生息地が沿岸部の浅瀬であり、海底地形の制約などから網を使うことが難しいことも。そのため一匹一匹人の手で釣り上げられており、そのことが商品価値を高めることに繋がっているのでございます。
こうして獲られた鯵は各地でブランド化されており、東京近郊では東京湾や相模湾が産地として知られておりまして、神奈川県の「平塚の金アジ」や房総の富津市の「黄金アジ」などがよく知られております。
この他にも、日本各地で瀬付き鯵を地域独自のブランド品とし、その商品価値を高めているいるようでございます。




