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【鯵の小噺】其の壱 鯵の味と歴史

 「鯵は味のよい魚だから鯵という名前になった」

 もちろん憶測の域を出ない話ではあるかと思いますが、鯵の名の由来についてこんな話をよく見聞きいたします。何でも江戸の頃から、もう既にこのようなことが言われていたとか。

 確かに鰺は値段も手頃なことも多く、多く出回っている大衆魚ですし、食べ方を選ばない実に万能な魚であると言えるでしょう。

 もっとも、最近は秋刀魚などと同じく、漁獲量が減る一方で段々と大衆魚ではなくなっている部分もあるのかもしれません。そうとは言え、時季になればスーパーの鮮魚コーナーには必ずといっていいほど並んでいる魚ですから、まだまだ身近な魚の部類に入るのではないでしょうか。

 ちなみに、単に鯵と申しました場合は「マアジ」を指すことが多く。本作でもそれを踏襲させて頂きました。これは、鯛なども同じですね。鯵の場合も、マアジの他にもシマアジ、ムロアジなどが知られておりますが、やはり断トツで漁獲量が多いのがマアジでございます。

 さて、鯵がいつから我が国で食用とされてきたのか。

 海に囲まれた我が国ですから、こと魚介類になりますと、この疑問を解消するのは至難の業でございます。鯵もその例に漏れず、具体的な時期というものは未だ定かではございません。恐らく有史以前というのが、その答えになるのではないかと思います。

 作中で取り上げた「なめろう」や「さんが焼き」のように、今も各地に鯵を使った保存食が残っているのを見るに、遥か昔から海辺ではごくありふれた魚であったのでございましょう。

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