陽平の弱点
仄暗い寝室に、アラームの電子音がけたたましく鳴り響く。
その音に急かされて、和樹が気だるげに起き上がった。まだ眠い目をこすりながら、枕元の目覚まし時計に手を伸ばす。
「陽平さーん、朝だよ」
「……」
同じベッドで寝ている陽平に声をかけるが、ぐっすり眠っていてピクリともしない。仕方なく和樹は陽平の肩を何度かゆする。
「うーん……」
「陽平さん、もう朝だよ」
「あと五分……」
「それで起きてこないの知ってるんだから、さっさと起きてシャワー浴びてきな」
半ば和樹に引きずられるようにして、陽平は洗面所に連れていかれた。まだ寝ぼけまなこの陽平は、ナマケモノのような遅々とした動きである。台所を縦横無尽に動き回る俊敏さなど、今は見る影もない。
何とか陽平にシャワーを浴びさせ、和樹はようやく自分の身支度を始めた。
陽平はとにかく朝が弱いのである。その寝起きの悪さたるや、常々和樹に、あれで社会人ができてるのが不思議でならない、と言わしめるほどである。
数分後、陽平はシャワーを浴びて風呂場から出てきた。シャワーを浴びたことで、もうほとんど平常運転に戻っている。
「あー、サッパリしたー」
「ホントさぁ、マジで朝何とかならんの?」
「無理だね」
「即答しないでよ」
「雨とか曇りだともっと悪くなるしね。シャワー浴びてからじゃないと動けないし」
「あなたホントに社会人ですか?」
「一応そうだけど、俺はサラリーマン向いてないだろうね」
濡れた髪をタオルで拭きながら、陽平が悪びれもせずに笑う。
「陽平さん、俺メシ食べて会社行かなきゃならないんだけど?」
「俺もだよ?」
「なら早くご飯の支度してよ!」
「わかったよ…、今サッと支度しちゃうからさ…」
そう言うと陽平はエプロンをして、ものの十分足らずで簡単な朝食を支度した。その間に和樹が着替えてきて、でき上がった料理を食卓に並べた。
「さ、時間ないからパッと食べちゃって!」
「まったく、誰かさんがもう少し早く起きてくれればこんなことにならないのになぁ」
「じゃぁ、和樹が用意してくれてもいいんだよ?」
「俺一人なら朝ほとんど食べないもん」
「それが心配だから結局俺が作っちゃうんだよねぇ」
あれこれと会話をしながら食べる、慌ただしくも、充実した朝食。
この時間があるから、二人とも互いに今日一日仕事を頑張ろうという気持ちになれるのだろう。
こうして今日も、平日の朝が過ぎていく。




