【じゃがいもの小噺】其の参 じゃがいもの産地や地場品種
じゃがいもの産地といえば、やはり北海道。北海道産のじゃがいもは、何と国産の実に約八十パーセントをも占めるそうでございます。
ですが、それ以外にも産地がございます。前にもお話しました通り、じゃがいもは土地を選ばずどこでもよく育ちます。この時期に新じゃがとして関東でよく見かけるのは、長崎県産のもの。長崎県のサラサラとした赤土の土壌がじゃがいもと相性がよいらしく、長崎県もじゃがいもの産地となっております。と申しましても、その割合は国産の約四パーセント程。北海道には遠く及ぶものではございません。ただ、北海道産の場合は秋が旬のとなりますので、この時期には長崎県産のものが多く出回るのでございます。
前の小噺でも書かせて頂きました通り、じゃがいもが普及し始めたのは明治のこと。それ以前に我が国に入ってきた種はさほど広まらず、長い歴史の中でほとんど絶滅してしまったと考えられております。しかしながら、山奥で細々と栽培され、今でもその土地に根ざした在来種として残っているものもいくつかございます。
その内の一つ、山梨県は丹波山村に伝わるのが、「落合いも」。表面が赤いのが特徴の種であり、キメ細やかで煮崩れしにくく、甘味とコクが強いのだとか。この他に当地には「つやいも」と呼ばれる別の在来種も伝わっております。そこから山を越えた先の上野原市にも、このつやいもによく似た「ふじのねがた」と呼ばれる種が残っているとか。
そこから遠くない埼玉県秩父地域にも「中津川いも」という種があり、こちらは「紫いも」の異名が示す通り表面が赤紫色の種でございます。
これらは調査により、いずれも江戸初期に日本に入ってきた種の末裔であると見られております。この地域でこれほど固まって残っている理由は定かではありませんが、何とも不思議なものを感じずにはいられません。
長野県の下伊那地域にある遠山郷にも、古くから伝わるじゃがいもがございます。この地では年に二度収穫できることから、じゃがいものことを「二度芋」と呼んでおり、この他にも土地の名から「下栗芋」といった異名で呼ばれることも。実はこれは特定の一種のことを指す言葉ではなく、この地域で栽培されている在来種の総称なのだとか。伝来の由来などから「甲斐芋」や「下り芋」といったより細かな名前が種ごとにつけられているのだそうでございます。当地では今でも、炉端で作る二度芋の田楽が名物となっております。




