二十七膳目 「いももち」
「陽平さん、茹でたじゃがいもまだ残ってるけど、これどーすんの?」
和樹がザルに残った冷めかけのいもを指差した。
「これはねぇ、次の料理に使うつもり」
「何作んの?」
「また郷土料理だよ。せっかくだから何作るか当ててみてよ」
陽平がニヤリと笑う。
「え? いきなり何?」
「何だと思う?」
「どこの料理?」
「北海道が有名かな? 割と重めの主食系」
「うーん。俺食べたことある?」
「多分ある」
「えー、何だろ」
和樹が腕組みをする。
「あー、やっぱ分かんない! 正解は?」
「正解は、『いももち』」
「あー聞いたことあるー! てか食ったことあるわー」
「だろ?」
「あれって家で作れるんだ」
「意外と簡単だよ。茹でたいもと片栗粉混ぜて焼くだけ」
「へー、それだけで作れるんだ」
「うん。片栗粉もじゃがいものデンプンだし、実質材料じゃがいもだけだね」
「え? 片栗粉ってじゃがいもから出来てんの?」
和樹の初歩的な質問に、陽平がコケそうになる。
「和樹、片栗粉って何だと思ってたの?」
「うーん、あんまり深く考えたことなかったわ」
和樹は時たま、社会人とは思えぬ天然さや世間知らずを発揮するのだ。
やれやれと思いながら、陽平はボールに茹でたいもを入れてマッシュポテトと同じように潰し、粒がなくなったら片栗粉を少しずつ混ぜこんでいく。粉っぽさが消え、いもがしっとりとして一まとまりになるまでゴムベラで混ぜ、手で平べったい丸型にまとめていく。
「何かここまでだとマッシュポテトとあんまり変わらないね」
「だね。こっから焼いてタレ絡めていくよ」
陽平が大きめのフライパンを出し、温まった頃合いで少し多めに油をしいた。フライパンに重ならないようにいももちを並べていき、表裏を返しながら両面にこんがりと焼き色がつくまで焼いていく。焼き色がついたら醤油に砂糖と味醂を合わせたタレを入れ、そのまま少しとろみが出るまで火にかけて絡めていく。
「ねぇねぇ、味見させてよ」
「ダーメ」
「何でー? 出来立て食べたいのに」
和樹が口を尖らせる。陽平がフライパンをコンロから下ろし、いももちを皿に盛っていく。
「一回冷やして、もう一回温めた方が美味しい気がするんだよね」
「そうなの?」
「そっちの方が粉っぽさが消えて、よりお餅っぽい食感になる気がするんだ。でも、そういう作り方してる人っていないんだよね」
「じゃぁ、まだ味見はお預けってこと?」
「少し冷やして、また夕飯の時ね」
「わかった」
いももちを並べた皿に、陽平が上からふんわりとラップをかけた。




