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二十三膳目 「いもなます」

 「次は、珍しい料理作ってみよっか」

 「ちなみに、陽平さんそれ作ったことは…」

 「ないよ」

 陽平はあっけらかんと言い放つ。

 「やっぱりかぁー。で、どんな料理?」

 「いもなます」

 「いもなます?」

 聞き慣れない単語に、陽平が首を傾げる、

 「うん。じゃがいも使った酢の物」

 「あー『なます』ってそのなますかぁ」

 「そそ」

 「お正月とかに食べるのだよね?」

 「そー、フツーは大根とか蕪で作るんだけだね」

 「どうやって作るのか見当もつかないや」

 「うん。俺も」

 「マジで?」

 「いや、嘘。作り方は読んだことがある」

 陽平がじゃがいもの皮をむき、サラダの時の様に針のような細切りにしていく。それを、これまた同じように水にさらした。

 「ねぇ知ってる?」

 「何? またウンチク語り?」

 和樹の言葉に少しトゲがある。

 「そう。皮の薄い新じゃがは、皮をむかずに濡れ布巾でこすって皮を落とすといいんだって」

 「へぇー。そんなんでちゃんと皮むけんだね」

 やはり和樹の興味惹かれる話題ではなかったようだ。

 「らしいよ。俺も試したことないんだけどね」

 「で、この後どーすんの?」

 「水が濁ったら水替えて、それの繰り返し」

 「えーめんど」

 「だいたい二時間ぐらいって聞いたな」

 「に、二時間もそれやんの?」

 「さすがに時間かかるから、水替える時にザルの中で軽く洗っちゃおっか。それでまた水さらして…、ってやればたぶん時短になるはず」

 「ちなみにそれって…」

 「和樹君、」

 陽平が意味深に和樹に視線を投げた。和樹はすぐに何かを察した。

 「だろうと思ったよ!」

 「いやー、察しがよくて助かるよー」

 「やればいいんでしょ」

 「水さらしてる間は自由にしてていーからさ、」

 「分かったよ…」

 「じゃぁ、俺はその間に他の料理作ってるから」

 

 

 それから一時間半後───。

 「和樹、お疲れ。それ終わったらおしまいでいいよ」

 流しでじゃがいもの細切りを洗っていた和樹に、陽平が声をかける。

 「よっしゃ!」

 洗い上がったじゃがいもを、ザルごと陽平が受け取る。それを胡麻油をしいて温めていたフライパンに入れた。

 「酢の物なのに炒めるの?」

 「そう、みたい…」

 「『みたい』って、陽平さん、本当に作れんの?」

 「大丈夫大丈夫、想像する限りは美味くなりそうだから」

 陽平は記憶のレシピを頼りに、待っている間に細切りにしておいた人参も加えて炒めていく。そこに酢を加え、それに続けて砂糖や醤油も加える。

 「これってどこで見た料理なの?」

 「確か全国の郷土料理集めた感じの本だった気がする」

 「じゃぁ、これもどこかの郷土料理なの?」

 「うん。長野の飯山いいやまとか野沢の方の料理」

 「ふーん」

 「雪深い場所で、新鮮な野菜が手に入らない冬の料理として考えられたものなんだって」

 「へぇー」

 和樹の反応は薄い。

 「和樹、聞いてる?」

 「聞いてるよ。ただ、」

 「ただ?」

 「お腹空いた」

 「ハイハイ、出来上がったから味見していいよ」

 和樹の前にいもなますを少し盛った皿を置く。

 「やったー! どんな味か楽しみ」

 箸を手に取り、ゆっくりと口に運ぶ。そのまま少し難しい顔をしながら咀嚼している。一口噛みしめるごとに、その顔が明るくなっていく。

 「どう?」

 「不思議な感覚。炒めたのにしゃきしゃきしてるし、じゃがいもじゃないみたいな味」

 「でしょ? 水でじゃがいものデンプン抜いて、お酢使うとこんな感じになるんだって」

 「へぇー、面白いー!」

 「少し冷ましても味が馴染んで美味しいはずだよ」

 「いや、俺は今食べたい!」

 そう言って、和樹はパクパクといもなますを食べている。

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